木場勝己「74歳にしていよいよリア役に」 『リア王の悲劇』を“壮大なコントのようなもの”と語る理由

エンタメ
2024.09.10
菊池風磨さんが出演する「洗濯大名」のCMの家老役でお馴染みの木場勝己さん。じつは1970年代のアングラ演劇の影響を受けて舞台で活躍し、故・蜷川幸雄さんなど多くの演出家から信頼を得ている演劇人。シェイクスピア劇にも数多く出演してきた木場さんだが、『リア王の悲劇』で初めてリア王を演じる。

僕は何をやり出すかわからない結構危ない俳優ですから(笑)。

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「これまでシェイクスピア作品を随分やらせていただいていますけれど、僕自身はそことは違うジャンルの役者だと思っているんです。ただリア王に関しては、中学生のときの文化祭だったり、今の松本白鸚さんが主演された公演での道化役だったりと関わりが多く。今回74歳にしていよいよリア役に声をかけていただき、縁があるなと思いました」

シェイクスピア劇というと堅苦しい印象があるけれど、「僕はこの話が壮大なコントのようなものだと思っています」と木場さん。

「娘たちに財産分与するのに、綺麗事を並べた子に一番多く分け与えて、そっけなくされたら勘当しちゃうって、すごく極端ですよね。そこから親子の争いが始まって殺し合ったり目をえぐったり、普通ではなかなかない展開だけれど、今の不条理劇だったりコントに通じるのではと考えると腑に落ちるんですよね」

本作は、老王・リアが、聞こえのいい言葉にばかり耳を傾け、真実を見極められずに悲劇に陥る物語。

「演出の藤田(俊太郎)さんは、今、リアの出方を待っている感じです。僕は何をやり出すかわからない結構危ない俳優ですからね(笑)」

そう言って意味深に微笑む。

「蜷川さんって、ともすると俳優も圧倒されちゃうようなインパクトある“脅し”のセットを作ることが多かったんです。僕はなんとかそこに対抗しようと、蜷川さんの裏をかくというか演出の隙間を狙うようなことばっかりやっていました。自分のセリフを言い終わっても舞台上に居続けたり、脚本に説明されていないのを逆手にとって自分の解釈を足したり(笑)。お互い、それを面白がっていた気がします。以前、演出家のデヴィッド・ルヴォーさんに『テーマだけ伝えればいいってものではない』『舞台の上ではドラマが起こらなければいけない』と言われたんです。ドラマというのは、人が相手に働きかけることで生まれるもののこと。その言葉が耳に残っています」

ならばリア役の策は? と尋ねると、再び不敵な笑みでかわされた。

「演出家をなだめながら隙間を縫ってやっていこうかと思っています」

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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『リア王の悲劇』 3人の娘に、自分を最も愛する者に財産を多く与えると伝えた老王・リア(木場)。姉たちは大袈裟にお世辞を述べるが、正直な末娘のコーディーリアの言葉に激怒した王は…。9月16日(月)~10月3日(木) 横浜・KAAT神奈川芸術劇場 ホール内特設会場 作/W.シェイクスピア 翻訳/河合祥一郎〈『新訳 リア王の悲劇』(角川文庫)〉 演出/藤田俊太郎 出演/木場勝己、水夏希、森尾舞、土井ケイト、石母田史朗、章平、伊原剛志ほか 一般9500円 神奈川県民割引8500円 24歳以下4750円ほか チケットかながわ TEL:0570・015・415(10:00~18:00)https://www.kaat.jp/d/king_lear

きば・かつみ 1949年生まれ、東京都出身。舞台を中心に映像作品でも活躍。近作に連続テレビ小説『虎に翼』、映画『ゴールデンカムイ』。12月には舞台『天保十二年のシェイクスピア』への出演も控える。

※『anan』2024年9月11日号より。写真・土佐麻理子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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