『進撃の巨人 ‐the Musical‐』ショービジネスの本場・NYで上演。
いまや“MANGA”という言葉が浸透しているほど、世界的に人気の日本の漫画。となれば、その舞台化にも注目が集まるのも必然。それでも、日本生まれの舞台『進撃の巨人 ‐the Musical‐』が世界のショービジネスの中心であるNYで上演されるというニュースは驚きをもって迎え入れられた。
「最初に聞いたときは嬉しかったですが、日本を代表する漫画である『進撃の巨人』のミュージカルが、それだけ注目されているわけで。本場NYで上演される公演で自分が主演を務めるって、結構なプレッシャーだなと思いました」
そんな想いを素直に語ってくれた岡宮来夢さん。本作は昨年1月に初演されており、岡宮さんはそこで主人公のエレン・イェーガーを演じて、大きな反響を得ている。
「以前から友達に『来夢に絶対読んでほしい』と強くすすめられていて、出演が決まってから一気に漫画を読んだのですが、クライマックスのテンションがずっと続いているような作品で、あまりの面白さに、それまで読んでいなかったことを後悔したくらいでした。そのうえで原作者の諫山(創)先生のインタビューを読んだら、高い戦闘能力を持ったミカサや、知力の高いアルミンに比べて、エレンはあまり特出した部分を作らなかったと書いてありました。でも、だからこそ読者はエレンに感情移入するのかもしれないと思ったんです。原作を最後まで全部読み終わったときにエレンから誰かのために行動するという、ものすごく大きな愛を感じたので、そこを大事に演じたいなと思っていました」
原作を読んで強く印象づけられたのがエレンの目だったという。役作りをするうえでも、そこは強く意識したそう。
「言葉を発しなくても、目で憎しみだったり悲しみだったり、憤りだったりが伝わるんです。訓練兵になったときの、ここから始まるんだという喜びから巨人が現れて一気に憎しみの感情へと変わるところとか、エレンの目から、すごくたくさんの情報を受け取ったような気がしたんですよね。描かれている世界は自分が生きている世界とはまったく違うのに、僕はその目を知っていると思ったし、その気持ちに共感できたんです」
ある日、人を食らう超大型巨人が突如現れ、平穏な暮らしも大切な人もいとも簡単に奪われてゆく。そんな世界で、母の命を巨人に奪われた主人公エレンは、自ら巨人を駆逐することを誓う。本作では最新技術とアナログの演劇的表現を組み合わせることで、原作の世界を舞台の上に見事に表出させている。
「演出のアイデアが本当に素晴らしくて、漫画を読んで想像していた以上の広がりが舞台の上に表現されていて驚きました。巨人だけでも3種類の表現方法を駆使しているんですよね。世界レベルのダンサーの皆さんがハイレベルな体の動きで巨人を体現したかと思えば、パペットや風船も使っていますし。立体機動装置やプロジェクションマッピング、ワイヤーアクションを組み合わせて戦闘シーンを表現していたり。クオリティがすごく高くて、多くの方から新しいものを見たという声をいただきました」
演出を手がけているのは、自身もダンサーであり、近年は音楽と身体表現を駆使した迫力あるステージングで演出家として高い評価を受けている植木豪さん。
「豪さんの演出って、とてもエンターテインメントなんですよね。スピード感とかテンポ感がすごくよくて、高いテンションのまま魅せてくれるというのかな。それが『進撃の巨人』の世界観に見事にマッチしていて大好きでしたし、クライマックスまでずっと手に汗握る状態のまま。しかも豪さんの稽古場はとても風通しがよく、居心地がいいんです。客観的に、こういうライティングをしたいからこう動いてほしいと的確に指示してくださる一方、お芝居に関しては役者に委ねてくださる部分が多いんです。キャスト同士で見え方を研究したり、役柄について話し合ったりするのも楽しいです」
近年、オフブロードウェイ発の『ファンタスティックス』や、フランス生まれの『ロミオ&ジュリエット』などの翻訳ミュージカルでも活躍する岡宮さん。
「僕自身、海外ミュージカルが好きですし、今後も携われたらと思っています。でも同時に、ミュージカル『刀剣乱舞』など海外から観に来てくださるファンの方を目の当たりにするたび、もっと日本の作品も海外に発信していけたらなとも思うんです。昨年、舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』で、アレクサンドラ・ラターさんというイギリス出身の方の演出を受けたんですが、『日本にはこんなに素敵な作品がいっぱいあるんだから、海外でも上演したほうがいいのに』と言われたんです。今回で終わらず、今後も海外で上演される機会が増えたら嬉しいです」
『進撃の巨人 ‐the Musical‐』 NY公演『ATTACK on TITAN:the Musical』は、10月11日(金)~13日(日)までニューヨークシティセンターにて上演。その後、日本凱旋公演がおこなわれることも発表されている。12月13日(金)~22日(日)TOKYO DOME CITY HALL、2025年1月11日(土)~13日(月)オリックス劇場にて上演。https://www.shingeki-musical.com/
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おかみや・くるむ 1998年4月23日生まれ、長野県出身。2019年から出演するミュージカル『刀剣乱舞』の鶴丸国永役で注目される。近作に、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット。現在、出演ドラマ『青春ミュージカルコメディ oddboys』(テレ東系)放送中。
ジャケット¥44,000 パンツ¥38,500(共にA-YARN/福井商店 TEL:03・6804・0315) シャツ¥46,200(HOLO MARKET/STUDIO FABWORK TEL:03・6438・9575) ネックレス¥57,200(MARIHA TEL:03・6459・2572) ブレスレット¥17,600(Scat scat.official.info@gmail.com) リング¥12,000(HARIM/STUDIO FABWORK)
※『anan』2024年8月7日号より。写真・花村克彦 スタイリスト・能城 匠 ヘア&メイク・泉脇 崇(ロマリア) 取材、文・望月リサ
(by anan編集部)