ゆっきゅん、詩人・小野絵里華のエピソードに「トヨエツへのラブレター、詩の原体験では!?」

エンタメ
2024.07.10
ゆっきゅんの連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。詩人の小野絵里華さんをお相手に迎えた最終回。今回のテーマは「たった一人の読者には届くはずと信じて詩を書く」です。

たった一人の読者には届くはずと信じて詩を書く。

ゆっきゅん DIVA

ゆっきゅん(以下、ゆ):詩人の方は、歌詞をどう見ていますか?

小野絵里華(以下、エ):私、日本語の曲は普段聴かないんです。どうしても、歌詞が気になってしまうから。詩を書いているときに耳元で愛を叫ばれたらちょっと引っ張られちゃうじゃないですか。だから普段は意識を飛ばせば歌詞が聞こえてこない、アイスランドとかフランスの歌なんかを聴いています。あとで歌詞を読み返して、こういう意味だったんだと感動することも結構ありますね。

ゆ:私も日本の流行曲に疲れたら、フィンランドやノルウェーなど北欧のヒットチャートを聴くようにしているんです。日本で頑張らなくてもいいって思うとなんだか気が楽になるんですよね。

エ:アイスランドだとソーレイ、パスカル・ピノン、シガー・ロスとかよく聴きますね。あと、流し聴きをしていると、すごく気に入った曲が世界でフォロワー数十人のアーティストだったりしてびっくりすることもあります。

ゆ:ライブとかは行きます?

エ:行かないです。具合が悪くなることがあって。

ゆ:感受性が豊かだから、受け取るものが多そうですもんね。

エ:イギリスのアーティストだと、キートン・ヘンソンもすごく好きです。不安障害を抱えながら活動していて、レコーディングも自宅の寝室で行ったりしていて。存在がポエジーですよね。

ゆ:初めて買ったCDは?

エ:小学生のときに買ったドリカムの『LOVE LOVE LOVE』。ドラマの主題歌だったんですけど、当時、主演の豊川悦司さんに恋していて(笑)。しかもトヨエツ、隣町に住んでいるって噂で! バレンタインチョコとラブレターを渡しに自転車走らせました(笑)。

ゆ:トヨエツへのラブレター、詩の原体験では!? 詩を書くとき、読み手を意識します?

エ:書いているときは誰のことも考えていないですね。ただ、たった一人の読者に届けたいと思って詩を書いています。詩って、澄んだ湖に向かって、一人で石を投げ続けるみたいな感じなんです。水面に波紋は広がるけどまたシーンとなる孤独な作業。誰にいつ届くかわからないけど、たった一人の読者には届くはずと信じて石を投げ続ける。自分の死後も、図書館の一番下の棚にある私の本をたまたま読んで、“死にたいと思ってたけどまだ生きてみよう”と感じてくれる読者が将来、いるんじゃないかな、と信じて。

ゆ:いますよ! 私と仙台のブックオフがその証明です!

小野絵里華 詩人

おの・えりか 詩人。東京都出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2010年に『ユリイカ』(青土社)の新人賞を受賞。’22年に第一詩集『エリカについて』(左右社)を刊行。’23年に同詩集で第73回H氏賞を受賞。

ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun

※『anan』2024年7月3日号より。写真・幸喜ひかり 文・綿貫大介

(by anan編集部)

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