QuizKnock「好きでやってることの多くが実は学び」 日頃の学習方法を伝授!

エンタメ
2024.05.19
常に“楽しいから始まる学び”と向き合いコンテンツを発信する、QuizKnock。“クイズ王”こと伊沢拓司さんを筆頭に、河村拓哉さん、須貝駿貴さん、山本祥彰さんの4人のメンバーに、日頃の学習方法やアンテナの張り方、新しい分野に飛び込むときの心構えを聞いてみました。

QuizKnockが語り合う学びの深め方と、クイズという競技の魅力。

QuizKnock タレント 勉強

左から、河村拓哉さん、山本祥彰さん、伊沢拓司さん、須貝駿貴さん

――「学び」を面白がる、好きになるにはどうすべきでしょう。

伊沢拓司(以下、伊沢):最初の一歩目って大事だよね。

須貝駿貴(以下、須貝):うん。「できないから学ぼう」って思いがちだけど、その前に「できること」があると思うんですよね。まずはそこから手をつけてみる。

山本祥彰(以下、山本):「ちょっとだけ難しいことをする」も大事かな。できないと思ってたことができるようになると嬉しくて、もっと学ぼうと思える。

伊沢:“成長”はキーワード。苦手な学びをいきなり好きにはなれないよね。学び自体が好きじゃなくても、そんなことを頑張れてる自分が好き、自分の成長が好き、で十分いいよね。

山本祥彰(以下、山本):実際、好きでやってることの多くが実は学びだからね。

須貝:そう。上手にコーヒー淹れられるようになりたいとかね。先日もセラミックのコーヒーフィルターを買ったんだけど、どう見ても石なんだが? 本当に水が通るのか? って気になって色々調べて。

伊沢:それが学びですよ。

河村:人と比べないことも大事かなと。競争して伸びることもあるけど、学び始めたばかりで誰かに挑んでも得しない。自分で満足できたらいいから、ひとりでコツコツやることを不安がらないほうがいいかな。

――クイズを使って学びを深める面白さはどんなところにありますか?

伊沢:クイズは新しい知識や側面を知るきっかけになる。知識ランダムガチャとしてめっちゃ優秀なんですよ。もちろん知ってることの確認もできる。知への営みの一歩目ですね。

河村:遊びながら「ああ知らんかったなあ」と思えるのがいいですよね。早押しで押し負けたとしても。

山本:僕はクイズによって、作り手の人生を共有できるところが好きで。自分では辿り着けないところに目線を向ける人がいるから、こんな世界もあるのかと知ることができる。

須貝:漫画とかアニメの得意な問題が答えられないと、めちゃくちゃ残る。そういうときは学び直しというか、もう一回全巻読んどくかって。記憶のチェックポイントにもなるね。

伊沢:共有の楽しさですよね。会話もクイズも知識の共有だし。「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」と「God knows...」の2曲は両方シンバルで始まるけど、少し違うとか(笑)。

――得意ジャンルとそうでないジャンルでは学び方は違いますか?

伊沢:僕はモチベーティングの基本は「興味」か「必要」だと思っていて。好きな分野は興味がドライブするからスムーズに学べるぶん、エコーチェンバー(似た価値観の人が交流することで特定の意見や思想が増幅する現象)に陥らないよう自制しないとダメですけど。苦手分野は好奇心を補うか、必要に駆られるかですね。詳しい人に聞いて興味の度合いを上げるか、来週のプレゼンまでに覚えようって切迫度を上げるか。

河村:苦手だとなんで勉強しなきゃいけないのかなと思ってしまう。そういうときはとりあえず触れます。野球なら、試合中継をつけてぼーっと眺める。あえて近寄らず、受け入れられるまで置いておく感じです。

伊沢:わかる。オリンピックもそうだよね。なんとなく見てると覚える。頑張らなくてもいい。

山本:僕も「スポーツナビ」ってアプリで通知だけ受け取ってる。何度も見る選手は頭に入るから、それがクイズに活きることも。

須貝:QuizKnockにいるからには、中学社会くらいは完全でありたい気持ちはある。ただ名称を覚えるのが苦手だし、“本当に必要?”って思うとできない。平安時代の売官の制度に「成功(じょうごう)」っていうのがあるんだけど、今もなかなか出てこない。最悪覚えなくてもいいかって。

山本:僕はなるべく得意なところから入るようにしてる。歴史の流れを掴むのは苦手だけど、クイズは答えたいから年号で覚えようと。1555年なら厳島の戦いか、アウクスブルクの和議とかかなって。

伊沢:ムズめの二択だな(笑)。

須貝:好きなものと関連づけるって大事だと思う。僕はルールが好きだから、この世紀に資源の取り合いをしたはずだ、という点で押さえたり。

伊沢:まさにそのやり方で世界史を勉強したなあ。因果を考えて出来事を結んでいったから、用語暗記だけじゃない学びができた。

河村:僕は徳川家光は名前に「みっつ」が入ってるから3代将軍って頭に叩き込んだので、もう因果でもなんでもない(笑)。

山本:あるよね。家定は「さ」が付いてるから13代とか。

伊沢:粗い覚え方(笑)。

須貝:逆パターンっていう危なっかしい覚え方もあって、イギリスのヨークシャー地方は「よくシャーッと雨が降るの逆」だから雨が降らない。

河村:それは危険! 逆パターン方式は本当に訳がわからなくなるから僕はやらないようにしてます!

――(笑)。そんな皆さんでも、スランプってあるんですか?

伊沢:何度か不調はありました。QuizKnockがノッてきた頃は多忙でクイズをする時間が減り、クイズ王という立場と実力が乖離したことも。でも理由は明確で「時間がない」だったので、解消したら戻りました。スランプと感じたら、まず原因を探ることが大事だと思います。

須貝:僕からするとやってないだけじゃない? とも思うな。やってないからできないだけで、やったら絶対できる。「あれだけやったのに」と言う人もいるけど、できている人と同じだけやったの? って思う。目に見えてすごい人は信じられない量やってることが多いです。

山本:僕も漢検1級に落ちたときはきつかったけど、どう乗り越えたかっていうと、めっちゃ勉強した。嫌になりそうなこともあったけど、やり続けて今はよかったと思ってる。

伊沢:よくその追い込みができるね。

河村:僕は勉強もクイズも趣味の範疇なのかも。だから落ち込まない。知らなくても今まで生きてきたんだしって思うんですよね。メンタルに影響が出るくらいなら、アウトプットの場から遠ざかってもいい。人生を否定されながらクイズをすることはないっていつも思ってます。

――学びに対して苦手意識がある人にコツや心得をいただけますか?

須貝:よく学ぶのが苦手っていう人がいますけど、本当にそう? っていっぺん自分に聞いてほしくて。料理を覚える過程も学びだし、何かがうまくなっていくのが好きなら、“学びが好き”でいいと思うんです。偉人の名前は無理でも、好きなアイドルの誕生日は覚えられるわけだし。

河村:レベル1の次はレベル2で、一気にレベル3には行けないんです。僕は先日ナムル丼の自炊キットを買ったんですけど、レンジで米をチンして、具と卵をのせればOK。これが僕にとってのレベル2でした。どこまでできて、できないのか、自分の能力を見極めるといいと思います。

――おすすめツールはありますか?

伊沢:僕はiPhoneのメモ帳を多用してますけど、思考の整理は手書きで図みたいに書いてる。アナログとデジタルを使い分けられるといいですよね。

河村:僕もメモ帳にとりあえず書く。語彙の「彙」って書けないなと思って書いてみたり、本のこぼれ話をメモったり、ぐっちゃぐちゃ。一文字一文字を写経みたいに書いていくと、その単語に意識を持っていけて、手がかりが掴める感覚があるんです。

山本:スマホのメモアプリを使ってますね。ノートは持ち歩かないけどスマホは大体持ってるし、データを溜めておけばいつでも取り出せる。

須貝:僕はYouTube。興味ある動画がサジェストされてくるから、精度も上がる。知識も深まります。

河村:あと、あえてツールとして話しますけど、「友達」。物理問題は須貝さんにパスできるし、山本の話が聞きたいから漢字を覚えることも。こっそり勉強して驚かせようと思ったり、同じテキストを読んでペースダウンしないようにもできたり。許し合える友達って大事だと思います。

クイズノック 東大クイズ王・伊沢拓司が中心となって運営する知識集団、および同名の情報メディア。“楽しいから始まる学び”をコンセプトに据え、YouTubeやWebコンテンツを日々発信中。今回登場の4人のほか、得意分野もさまざまなメンバーが所属している。

いざわ・たくし 1994年、茨城県生まれ。2016年、東京大学在学中にWebメディアQuizKnockを立ち上げる。『東大王』(TBS系)に出演中。著書に『クイズ思考の解体』など。

かわむら・たくや 1993年、栃木県生まれ。2016年に伊沢らとQuizKnockを立ち上げる。’23年には妻・篠原かをりと共に『雑学×雑談 勝負クイズ100』を出版。

すがい・しゅんき 1991年、京都府生まれ。東京大学大学院では物理学(超伝導)を専攻し、博士号取得。競技クイズ経験なしで、2017年からQuizKnockに参加。愛称ナイスガイ。

やまもと・よしあき 1996年、埼玉県生まれ。早稲田大学先進理工学部卒業。第34回『全国高等学校クイズ選手権』で4位入賞。2017年からQuizKnockに参加。漢検1級。

※『anan』2024年5月22日号より。写真・森山将人(TRIVAL) スタイリスト・大瀧彩乃 取材、文・飯田ネオ

(by anan編集部)

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