いろんな種類の絶望を知り、役の心情を深く考え演じました。
「常に悲しみに暮れながら絶望しているハナを演じていた期間は、役に感情が引っ張られて、すぐに涙が出たりしていました。普段は学校に行くことで自然と気持ちの切り替えができていたのですが、この作品は夏休み中に撮ったので、それができなくて。でもそれも、役に近づくための自分なりの手段だったのかもしれません」
絶望に始まり絶望に終わる作品だが、気づきが多かったという。
「監督が『え?』という返事ひとつにも、こだわりを持って演出をつけてくださって。『ここは絶望と悲しみに暮れる』『ここは絶望の中にも希望がある』など、細かいニュアンスを教えてくださったことで、絶望にもこんなに種類があるんだと学び、セリフ一つごとに役の心情を深く考えながら台本を読みました。それから、ベテランの方々との共演も貴重な経験でした。夏木(マリ)さんは、現場にいらっしゃるだけで自然と背筋が伸びるような方ですが、お菓子をくださったり、気さくに話しかけていただいて。北村(一輝)さんとは、ファンだというTWICEのダンスを撮影の合間に一緒に踊ったりもしました(笑)。お二人の、監督の演出通りにすぐに演じられる姿と、『こうしたほうがいいと思う』と、演出に対してしっかり意見する姿の両方がカッコよくて、すごく勉強になりました」
ファンタジックな世界観と壮大なCG映像もまた、作品の大きな魅力。
「仕上がりが想像できないまま演じていたので、完成作を観て腑に落ちたシーンはたくさんありました。同時に、撮影中のいろんな感情を思い出したし、泣くシーンが本当に多かったな、とか。今は、反響が楽しみでワクワクしています」
もしこの世界があと2週間で終わるなら、と聞くと頬を緩めて答えた。
「回らないお寿司屋に毎日行って、大好きなサーモンを食べたい。あと、毎日ディズニーランドに行って、1日1個だけアトラクションに乗るとか、贅沢に過ごしたいです(笑)」
『世界の終わりから』 高校生のハナは、事故で親を亡くし学校でも居場所がなく、生きる希望を見出せずにいた。ある日突然訪れた政府の特別機関と名乗る男から自分の見た夢を教えてほしいと頼まれる。やがて夢と現実が交錯するようになり…。原作・脚本・監督/紀里谷和明 出演/伊東蒼、夏木マリほか 全国公開中。©2023 KIRIYA PICTURE
いとう・あおい 2005年9月16日生まれ、大阪府出身。6歳で子役デビューし、『湯を沸かすほどの熱い愛』では第31回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞。NHK土曜ドラマ『やさしい猫』への出演が決まっている。
※『anan』2023年4月26日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・藤井牧子 ヘア&メイク・伏屋陽子(ESPER) インタビュー、文・若山あや
(by anan編集部)