海外旅行が復活しつつあるなか、旅心をくすぐる作品が登場した。イラストレーターの小林眞理子さんは当初、年1回ペースで“普通に”旅行をしていたが、デジタル環境が整うにつれiPadを手にノマドワークをしながら、タイ各地を転々とするように。本作『タイのひとびと』には、そんな旅で見聞きしたエピソードが詰まっている。

おおらかな日常に溶け込み、暮らすように旅するタイ。

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「本当は、タイで経験したことをネタに『すべらない話』がしたかったんです。だけどそれは話術の巧みな芸人さんだからできることで、自分が一番うまく人に伝えられる手段は何だろうと考え、イラストの仕事の合間にマンガを描き始めました」

もっと言うと、こうした土産話をすると、タイをよく知らない人はすぐに「お腹を壊しそう」とか「街がきれいじゃなさそう」などネガティブなイメージを持ちがちだと実感。街並みや出会った人々を得意な絵でしっかり表現することで、誤解が解けるのではという期待もあった。本作が一般的な旅行エッセイと異なるのは、暮らすように旅を楽しんでいること。有名な観光地が出てくるわけではなく、地元の人しかいないようなローカル食堂に行ったり、宿の近くの公園をジョギングしたりして遭遇する些細な出来事がほとんど。それでも好奇心の持ち方次第で、どんなことも冒険になる様が痛快だ。

「旅行会社のツアーに参加したこともありましたが、観光名所より移動中のバンの外に広がる普通の人の暮らしのほうが、楽しそうに見えたんです。長く滞在していると、一食も失敗したくないなど無駄を省こうとする気持ちがなくなるのもよくて。目についた店に入ってごはんを食べたり、地元の人が利用している渡し舟に乗ってみたり。そうやって遊べば遊ぶほど、発見があるんですよね」

日本で血液型占いが定着しているのと同じように、タイは生まれた曜日での占いがおなじみだったり、バイクタクシーのふくよかな女性ドライバーに、肩ではなくお腹の肉につかまるよう指示されたり……。異国の地ならではのカルチャーギャップも興味深いが、全体を通して印象に刻まれるのは、タイの自由な空気とマイペンライ(気にしない、大丈夫、などの意)なおおらかさ。

「顔や体型がどうであろうが、女装しようが、性別を変えようが、みんないい意味で他人に興味がないんです。この人にはこの人の事情があって、自分には関係ないと思える。そのストレスのなさが、いろんな場面でいいかたちに作用していて、自然と心が軽くなるんですよね」

タイ好きはもちろん、今までノーマークだったという人も、気負わない旅の臨場感を味わえるはずだ。

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『タイのひとびと』 タイの日常とそこで暮らす人、あるいは小林さんのようにタイに引き寄せられる人々を描き、SNSで話題となった作品。単行本のための描き下ろしも。ワニブックス 1210円 ©小林眞理子/ワニブックス

こばやし・まりこ マンガ家、イラストレーター。SNSでタイの楽しい日常マンガを発信中。本書が初の単行本となる。Twitterは@mariko_asia27

※『anan』2022年12月28日‐2023年1月4日合併号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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