パラレルワークの魅力の一つは逃げ道を作れること。
芸人と会社員、会社経営者という3つの顔を持つ、サーヤさん。じつは学生時代から、このパラレルワークを理想としていたそう。
「相方のニシダと出会って、ラランドを結成したのは大学時代。4年生の時に学生芸人の大会で優勝し、芸能事務所からのスカウトもあったのですが、私は、卒業後は就職をしてフリーでお笑い芸人を続ける道を選びました。理由はいくつかあり、親から『新卒のカードが使えるうちに就職してもいいんじゃない?』と言われたことや、奨学金の返済があったから。ワンコールで、親からお金を振り込んでもらっていたボンボンのニシダが羨ましかったです(笑)。それに当時から、表に出ることにも、裏方で働くことにも興味があって。両方向からの視点を持っていたら、いろんな分野で活かせて強みになるはず、とも考えていました」
新卒で、大手広告代理店に入社。平日の仕事が終わった深夜や、週末に、ニシダさんとファミレスでネタ作りをする日々。
「転機になったのは、アマチュアで出場した『M‐1グランプリ』。敗者復活で準決勝に進出したのが、初めてのテレビ出演でした。翌年『おもしろ荘』へ出演すると、メディアからのオファーが増え始めたのですが、一部の人たちからは『芸人やりながら会社員もやるってどうなの?』と批判的な言葉も。悔しかったけど、どちらも中途半端にしているつもりはなかったから、バトルライブではその人たちよりも上のランキングを獲ってやる、って思っていました(笑)」
そんな時、世の中はコロナ禍に。ライブやバイトができなくなり収入が激減した芸人も多かったが、サーヤさんは会社員の固定給により助けられたそう。
「その辺りから、パラレルワークというスタイルへの、周りからの見方が変わってきました。さらに私自身も、広告代理店で身につけたスキルを活かしつつ、芸人としての活動にもう少し時間を割けるようにと、働き方を見直すことに。昨年、アプリの制作などを手掛けるIT関連会社に転職し、現在はプランナーとして働いています」
芸能活動の合間を縫って、興味のあるプロジェクトを丸ごと受けることで、もの作りの“ゼロいち”が見通せるようになったのもやりがいになっているそう。
「芸人と会社員、会社経営の各分野で得たものをネタやエッセンスとして、それぞれに還元できれば、唯一無二になれる。時どきの状況や環境で、働き方を変えていくことが理想だし、仕事ややりたいことを1本に絞らずに、逃げ道を作ることでストレス発散になるのもパラレルワークの利点です」
昨年末からは、ミュージシャンの川谷絵音さんらと、ヒップホップバンド「礼賛」を始動。
「中高の部活動で学んでいたアートや、ファッションにも興味があります。でも片手間で始めてしまうと、その道のプロに失礼だし、ミスをしたら『いろいろやるからだ』なんて言われる隙を与えてしまう。準備は入念にしながら、十二分に向き合う体力をつけて、始めるタイミングを見極めることが、パラレルワークのコツです」
サーヤ お笑い芸人、会社員、会社経営。1995年、東京都生まれ。上智大学在学中にお笑いコンビ「ラランド」を結成し、『M‐1グランプリ』では2年連続で準決勝へ進出。2021年2月に個人事務所「レモンジャム」を設立。CLR名義で作詞・作曲とボーカルを担当するバンド「礼賛」の活動にも注目が集まる。
ジャケット、シャツ、パンツ すべて参考商品(ハルキ シマムラ s.haru79@icloud.com) イヤリング¥18,600 イヤーカフ¥11,000(共にフェイフェイシュー feifeixujewelry@gmail.com) パンプスはスタイリスト私物
※『anan』2022年4月20日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・西村茜音 取材、文・若山あや
(by anan編集部)