スリーピースバンドとして初心に帰って作れたアルバムです。

「いま出したい曲、聴いてもらいたい曲をリリースしようというのがチーム全体であったんですね。それで、曲をどんどん配信で出していったので、そういう自由さがこのアルバムには出てると思います。ライブができない分、新しい音楽をたくさん出してお客さんと繋がれたらいいなと思ってやってました」
前作は、それまでのSHISHAMOのイメージを一度ゼロにするような、新鮮な作品だった。
「みんなが思ってるSHISHAMOのイメージと違うことができて、満足したところがあったんです。そこから、スリーピースのロックバンドとして初心に帰ってバンドをやるというすごいシンプルなやり方に戻った感じがしてます。自由に作れたアルバムですね」
プリミティブな欲求がダイレクトに伝わる曲が並ぶ。なかでも「人間」は自分自身の欲深さと向き合い、“みんなは違うの?”と呼びかける曲で、かなりインパクトがある。
「3人の音だけで一番難易度が高いことをやってみたいと思うとコーラスワークがどんどん難しくなってくるんです。スリーピースの限界を試してみたくて。『人間』はイントロのコーラスが曲のアイデアとして最初にあって、そこから歌詞を広げていきました。私はあまり嘘が得意じゃないっていうのもあって、嘘をつかないよう心がけて生きているんですね(笑)。でも人と接する中で、自分はおかしいのかなって思ったり。『いや、みんなが嘘ついてるだけで同じなはず』っていう思いがあって。いつも満たされないなって思いながら生きてるところがあるので、それらを書いた曲ですね」
初回限定盤には、収録曲「かわいい」を題材にした浅野いにおさんによる描き下ろし漫画が封入。
「CDをせっかく出すんだったら欲しくなるものを出さなきゃと思ったんです。それで大好きな浅野先生にお願いしました。できあがった漫画は、より『かわいい』の主人公の痛々しさがくっきりしていて。女の子は見た目で判断されることが多いと思うのに、持って生まれてる人もいれば、持ってない人もいるっていう不公平さと戦わなきゃいけない生き物っていうか。大なり小なり他人からどう見られてるかっていうことにぶつかったりする。この曲はそういうことをより生々しく表現できた曲だと思っています」
浅野さんとはどういうやりとりがあったのだろうか。
「先生から曲の主人公のなんとなくのイメージを簡単な絵で欲しいって言われたので、イラストを描いて送りました。ちょっと前までメイク動画は、コンプレックスを潰すための盛り盛りメイクが多かった印象があるんですけど、最近は、“まずかわいい顔を用意します”みたいなところから始まってちゃちゃって終わるような動画が多いなと思って。まずその顔ないと無理じゃんっていう。ナチュラル感が流行ってるように感じたので、そういう愚痴もあわせて送りました(笑)」
振り切れた表現が増したように思えるが、それについては。
「リアルであることも大切だと思うんですけど、曲の主人公の気持ちを多少デフォルメして書いた方が、聴いた人が“自分の曲だ”ってワクワクしてくれるかなと思ってやってるところはずっとありますね」

7thアルバム『SHISHAMO 7』。全13曲収録。【初回限定盤(上製本仕様/CD+ブックレット+浅野いにお描き下ろし漫画)】¥5,500 【通常盤(CD)】¥3,300(GOOD CREATORS RECORDS/ユニバーサルシグマ)
シシャモ 左から、松岡彩(Ba.)、宮崎朝子(Gt./Vo.)、吉川美冴貴(Dr.)。2013年春、本格的にバンド活動を開始。同年11月、アルバム『SHISHAMO』リリース。‘17年『第68回NHK紅白歌合戦』初出場。
※『anan』2021年7月7日号より。写真・小笠原真紀 取材、文・小松香里
(by anan編集部)