「読者から『こんなコーディネートをしてみたい』と思ってもらえるようなものを目指して、物語や春夏秋冬、出かける場所のことも意識して選んでいます。自分でも好きで着ていたとはいえ、実際に着物のマンガを描かないかと編集さんから提案されたときは、うれしさ半分、緊張もしていました。袖部分の形状やシワの寄り方、着たときの柄の合わせなど、いわゆる玄人の人が読んでも違和感がないようにと、いまでも調べたり勉強したりしながらです。ただ、もともと日本画からマンガの世界に入ったので、着物の柄の花鳥風月などを描くのはとても楽しいです」
ももがお出かけする先にも、わくわくさせられる。京都の老舗喫茶店や大阪の歴史ある図書館など関西エリアから、7巻より舞台は東京へ。
「物語の出発点は、男性が普段のぞけない女の子のお支度を描く、でした。なので、どこへ行くかなどを考えるようになったのは連載が決まってからです。関西編では、他府県の方が見てもすぐわかるような有名な観光名所ではなく、関西の人が見ても『あそこいいよね』『よくわかってるね』と盛り上がってくれそうな絶妙なセンを狙いました。東京編でも踏襲していきます」
本書はまた、恋にも仕事にも一生懸命なももの成長マンガでもある。
「会社の受付嬢から転職し、現在は着物屋『猫の目』のスタッフとして、さらに着物の魅力にのめりこんでいるところです。着物業界は格式張っている印象もありますが、『私もこんなところで働いてみたい』と憧れてもらえるような、ときめき要素を大切にしていきたいです。店長で先輩のリンコちゃんとも、お互いがお互いを知って高め合えるような関係性として描いていきたいですね」
恋愛は、ももの想い人である椎名さんとの関係が、紆余曲折がありつつ進行中。7巻からは「ももが大阪、椎名さんが東京」と遠距離状態に。
「ロマンスに関しては私自身がドライでちょっとズレている部分もあるので(笑)、周囲に取材しまくってエピソードに活かしています」
7巻のラストでは、控えめだった椎名さんも意外な一面を発揮。恋の行方はますます楽しみだ。
やまざき・ぜろ マンガ家、日本画家。京都精華大学芸術学部日本画コース卒。同人活動を経て2013年商業誌デビュー。本作を「くらげバンチ」で連載中。
『恋せよキモノ乙女』7 各話の最後に、着物スタイリスト・コバヤシクミさんによる柄やコーディネート、歴史などの解説がついていて、着物初心者でも楽しめる。8巻は今秋刊行予定。新潮社 704円 ©山崎零/新潮社
※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)