実験的な展示が話題! 「わかりあえなさ」テーマの展覧会とは?

エンタメ
2020.11.13
「翻訳とはコミュニケーションのデザインである」。そんな考えがテーマの展覧会「トランスレーションズ展―『わかりあえなさ』をわかりあおう」が今、話題を集めている。

本展のディレクターで情報学研究者のドミニク・チェン氏は、日本、台湾、ベトナムの血を引くフランス人。幼少期は50か国以上から学生が集まるインターナショナルスクールに通い、日常的に翻訳とともに過ごした経験から、うまく言い表せないもどかしさを痛感してきたと語る。

「コミュニケーションの根本には“わかりあえなさ”が横たわっている。翻訳によってこぼれ落ちてしまう意味もたくさんあるが、その面白さや豊かさをもっと知ろう。本展の副題にはそんな意味が含まれています」

会場では、様々な分野から集まった21作品をキーワード別に、7ゾーンに分けて紹介。その内容は言葉の翻訳を超え、アートやデザイン、身体表現、動物や微生物との対話にいたるまで、多種多様な翻訳スタイルを紹介。例えば「ことばの海をおよぐ」ゾーンでは、自分が叫んだ言葉が一瞬にして世界中の言語に翻訳されるインスタレーションが登場。画面の大小はその言語を話す世界人口の数を示しており、日本のことわざなども絶妙に翻訳してくれる様子に圧倒される。一方「異種とむきあう」ゾーンでは、特殊な香水を使ってサメと人間が恋愛できるか実験した作品や、ぬか床の様子を様々なセンサーで読み取り、「そろそろかき混ぜたら?」「ちょうどいい具合に漬かっているよ」など微生物の言葉を翻訳し、対話できるロボットも。他に植物の気孔の動きを読み取って、植物の言葉を理解しようと試みた作品など、実験的かつユーモア溢れる展示が満載で、実に興味深い。

「作品には相手の気持ちを汲み取ろう、ケアしようという想いが共通している」とチェン氏。世界中で分断が進む今、コミュニケーションの本質について考える好機になりそうだ。

マイクに向かって話すと、23か国語に翻訳!

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Google Creative Lab+Studio TheGreenEyl+ドミニク・チェン《ファウンド・イン・トランスレーション》は、翻訳の結果だけではなく、機械が言葉を発見していくプロセスを可視化する。

異なる動物と愛しあえる? サメを誘惑する香水。

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長谷川愛の《Human X Shark》は、異種間の愛について考える作品。ダイビングスーツにサメが好む美味しい香りをつけて引き寄せ、「匂い」を用いてオスを性的に惹起する実験をレポート。

植物の葉にある唇から声なき声を読み取る。

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シュペラ・ピートリッチの作品《密やかな言語の研究所:読唇術》。まるで動物の唇のように開閉する植物の気孔を唇に見立て、読唇術や人工知能を使い、植物の言葉を解読する。

「トランスレーションズ展―『わかりあえなさ』をわかりあおう」 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2 東京都港区赤坂9‐7‐6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内 開催中~2021年3月7日(日)11時~18時30分(土・日・祝日10時~。入場は閉館の30分前まで) 火曜(2/23は開館)、12/26~1/3休 一般1200円ほか ※事前予約制 TEL:03・3475・2121

※『anan』2020年11月18日号より。写真・北尾 渉 文・山田貴美子

(by anan編集部)

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