ベトナム戦争を題材に、現地の少女・キムとアメリカ兵・クリスとの悲恋を描いたミュージカル『ミス・サイゴン』。’92年の日本初演以来、高い人気を博す大作に、今回からエンジニア役で参加する伊礼彼方さん。
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「長く市村(正親)さんが演じられている役だけに、当初は30代の自分にはまだ早い気がしていました」

本人はそう言うけれど、昨年のミュージカル『レ・ミゼラブル』ジャベール役の重厚感ある演技を観れば、そんな心配はまったくの杞憂。むしろ、戦時下に小ずるく立ち回りながら、作品の狂言回し的役割も担うキャラクターは、エネルギッシュないまの伊礼さんに適役なのでは?

「自分の武器になるとしたら、アイデンティティが近いというところ。エンジニアはベトナム人とフランス人との混血です。僕自身、生まれたアルゼンチンでも差別を受けて、日本に来てからは外人と言われてきました。混血児の悲哀とか必死に居場所を求める場面に説得力を持たせられるのかなと思っています」

戦争の混乱でクリスと離れ離れになり、ひとりで息子のタムを産み育てるキム。それを知ったエンジニアは、タムを利用してアメリカ行きの切符を手に入れようと奔走する。

「それまで迫害に遭い、混血の自分を否定して生きてきた彼が、アメリカ兵との混血であるタムに希望を見出す。利用してやろうと必死になる姿に、僕はすごく哀しさを感じます。そこって、フランスそしてアメリカに植民地にされたベトナムの歴史が凝縮されている場面だと思うんです。実際の出来事としてのリアルをどうしたら伝えられるかを考えています」

歌も大事だけれど、それ以上に「人間味のあふれる役作りにこだわっている」という伊礼さん。

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「なぜこの人はこう言うのか、台本には書かれていない感情を作っていくのが好きなんです。演出家と話し合って、ポイントになる場面から逆算することも。でも、どんなに考えても本番に気づかされることってあるんです。結局、最後のピースはやっぱりお客さんなんですよね」

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『ミス・サイゴン』 サイゴンにあるエンジニアが営む米兵相手の売春宿に仲間に連れて来られたクリスは、この日初めて店に出たというキムと恋に落ちる。結婚を約束したふたりだが、サイゴンが陥落し…。※5月より上演が予定されていたミュージカル『ミス・サイゴン』ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全公演中止となりました。

いれい・かなた 1982年2月3日生まれ。ミュージカル『テニスの王子様』などで注目を集め、その歌の実力から、『エリザベート』『レ・ミゼラブル』など数々のミュージカル作品で活躍。11月にはミュージカル『Beautiful』への出演が決まっている。

※『anan』2020年4月29日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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