品質保証と安定供給。平成を体現する有吉弘行。
サンキュータツオ:平成の30年で芸人の仕事が爆発的に増えました。
プチ鹿島:芸人の数も増えたしね。
タツオ:情報番組のキャスターから、俳優に芥川賞作家まで、いまやどこにでも芸人がいますよ。
鹿島:ひとつのきっかけは『アメトーーク!』じゃないですか。スニーカーとか家電とか、好きなものを熱く語る○○芸人というパッケージで芸人の魅力をプレゼンする番組。
タツオ:キャスティングする側としてはかなり参考になりますよね。
マキタスポーツ:たけしさんが映画監督になったり作家として本を出すっていうマルチ化とはまったく意味合いが違うよね。たけしさんの場合はオフェンスの要として点をとってほしいから依頼が来るわけだけど、ほかの芸人に声がかかるのは、ディフェンスとしての機能を求められてる。
鹿島:新番組が始まるときに、決してメインではないけど、とりあえずレギュラーとして呼ばれる感じね。
タツオ:たけしさんは完全にメインディッシュで、いま器用になんでもこなせる芸人は、塩こしょうというか、化学調味料ですよね。
マキタ:とりあえずぶっかけとけば食える味になるっていう。もしくは出汁。それぐらい芸人の能力が平成の30年で信用されるようになった。と同時に、芸人はタレント化しないと食えない時代になったともいえる。
タツオ:芸一本のネタだけで稼ぐことはだいぶ難しくなりましたよ。
鹿島:ヤンチャな不良というか、ならず者の雰囲気はもう芸人に求められてないよね。いま一番ちゃんとしてないといけないのが芸人だもん。
タツオ:そもそも出自が違いますからね。野良からはい上がってきたような人たちではなく、きちんと学校で訓練されて、かつ優秀な成績をおさめた人たちが芸人として売れていく。いまの芸人は品質保証の安定供給です。
マキタ:町にマズいラーメン屋がなくなったように、いまつまらない芸人っていない。そういう仕事は『あらびき団』が最後だったんじゃない。
鹿島:平成を通じて洗練されたという意味では、その象徴が猿岩石の有吉(弘行)さんじゃないですか。
マキタ:『電波少年』で出てきたときは野良犬みたいな男だったのに、いまじゃスーツ着て安心感の塊。日本一のマスターオブセレモニーだよ。
タツオ:しかも途中、表舞台から消えてるし。そこから再浮上して天下獲ったのはすごいですよ。
鹿島:まさに平成を体現してる。
マキタ:路地裏のマズいラーメンから仕込み期間を経て、日本中に愛される味になったね。
鹿島:最近とくに痛感するのは、ものまねって普遍的だなぁと。
マキタ:本当にそう。テレビを中心としたど真ん中の芸能界とは違う世界にいるけど、ものまね芸人ほど時代に左右されない芸人はいないね。
タツオ:コロッケさんのディナーショーとか、ショーパブでも、いまはお客さんいっぱい来てますしね。
鹿島:その流れでいくと、綾小路きみまろさんが‘00年代初頭にブームになったのは、来るべき高齢化社会を如実に表してたんじゃないですか。
タツオ:僕の考えでは、綾小路きみまろさんはわかりやすく高齢者向きです、って宣言してるけど、そこはあえて言わずに、高齢者に向けたネタでも現役バリバリを装うような芸人が出てきたら最強だと思うんです。
マキタ:そこは鉱脈あると俺も思う。自分を年寄りとは認めたくない初老の人たちはいまものすごいボリュームゾーンだから、当てたらでかいよ。
鹿島:次の時代にお笑いで天下獲るなら、若い人たちにキャーキャー言われるよりも、高齢者から支持されたほうが手堅いってことか。
タツオ:言うなればハズキルーペ芸ですよ。ハズキルーペって10代や20代には知られてないけど、高齢層にはものすごく響いてるわけですよね。
マキタ:正直な話、俺はすでにそっちを狙ったネタ作りはじめてます。
タツオ:マジですか!?
鹿島:ここにいた! ハズキ芸人!
マキタ:だってもう俺の年になったら、若い人に合わせるより高齢層に向けたほうがよっぽど自然だもん。
鹿島:でもそんなこと言ったら僕らの番組『東京ポッド許可局』もまったく若者に向けてしゃべってないよ。
タツオ:ほんとだ! おじさんとおばさんにしかわからない話ばっかり。俺らすでにハズキ芸人だったんだ。
鹿島:そういう芸風のほうがこれからの時代、スポンサーもつきやすい。
マキタ:なにより頑丈だしね。お尻で踏んでも壊れない。
タツオ:出た、おやじギャグ!
東京ポッド許可局 “屁理屈をエンターテインメントに!”をモットーにマキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの文系お笑い芸人3人の局員がひっそり語らう深夜の人気番組。TBSラジオで毎週月曜24時~放送中。
※『anan』2019年1月16日号より。写真・田村昌裕(FREAKS) 文・おぐらりゅうじ
(by anan編集部)
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