「最初にお話をいただいたときは、僕が演じるべきではないんじゃないかなと思ったんです。けれど、不二夫さんのことを調べていくうちに、彼が笑いを通して伝えたかったことがわかってきて。彼は本当に博愛主義者で、人と人との間にある垣根を取っ払って、みんなで手を取り合うことの大切さを訴えかけていたんですよね。そこにものすごく共感して、この役は絶対に自分が引き受けなければいけないと思ったんです」
これまでにも赤塚不二夫の半生を描いた作品はたくさんあった。しかし、やるからにはナンバー1のものにしたい。画面の中で縦横無尽に暴れ回る玉山さんからは、そんな熱い決意が伝わってくる。
「実在する人物を演じる上では、常に責任感がつきまとうんです。でも、そこにとらわれてしまうと、不二夫さんが本来伝えたかった『常識から外れること』ができなくなってしまうんじゃないかと。だから、あえてそこは気負わずに、自分のブレーキを外すようにして挑みました。普段は内気で恥ずかしがり屋なんですけど、有名な『シェー』のポーズも、セーラー服を着た女装姿も、現場に入ったらまったく気にすることなくできましたね(笑)」
実は照れ屋な玉山さん。しかし、今回の現場では自ら率先して共演者に歩み寄った。
「カメラが回っていないときも、不二夫さんでいることを心がけていて、ズケズケといろんな話をしてみたんです。すると、みんなプライベートなことも打ち明けてくれて、まるで本当に家族同士で相談しているかのような雰囲気になりました。その空気感は自然とお芝居にも表れているのかもしれません」
本作でいう家族とは、赤塚不二夫の娘である〈りえ子〉を中心とした、パパとママが“ふたりずつ”いるという、一風変わったもの。玉山さんはそんな異色の家族像も肯定する。
「家族の定義って人それぞれだと思うんですが、『よその家族はこうだから、自分たちも同じようにしないといけない』と他人の目線や価値観をものさしにしている人が多い気がするんです。でも、大切なのは、自分たちで話し合って決めること。仮に、りえ子のようにパパとママがふたりずついたとしても、みんなが幸せならそれでいいと思うんです」
窮屈な世の中が変わること。本作を通じ、玉山さんはそう願っている。
「不二夫さんが伝えようとしていた“人を許す美学”というものは、今の世の中にこそマッチしていると思うんです。すべてのことが白と黒で分けられるわけではなくて、いろんな色があって構わない。それを認めることは、人の可能性を伸ばすことにもつながりますしね。このドラマのメッセージを受け取って、みんながもっとおおらかになれたら、今の子どもたちが大人になる頃、きっと世の中はもっと生きやすくなっているんじゃないかなって思います」
たまやま・てつじ 1980年4月7日生まれ、京都府出身。7月20日よりNetflixオリジナルドラマ『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』が配信開始。大河ドラマ『西郷どん』にも出演予定。
国民的ギャグマンガ家・赤塚不二夫。家庭ではダメな父親だった彼は、どうして多くの人に愛されたのかを描く、笑えて泣けるヒューマンドラマ。6/30スタート。毎週土曜20:15~(初回は19:30~)、NHK総合にて放送。
※『anan』2018年7月4日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・袴田能生(juice) ヘア&メイク・TAKE(DADA CuBiC) インタビュー、文・五十嵐 大
(by anan編集部)
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