イラスト・前田ひさえ 取材、文・板倉ミキコ
お話を伺った方々
関口由紀さん
女性泌尿器科医。「女性医療クリニックLUNA」理事長。世界標準の女性医療を目指した総合クリニックを運営。セックス外来を設け、性の悩みにも対応。www.luna-clinic.jp
森田敦子さん
植物療法士。日本でのフィトテラピーの普及に尽力。フェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO」(womblabo.com/)のメインキュレーターを務めている。
腟まわりのケアを見直し、もっと仲良くなろう。
女性の心身の健康状態を、ストレートに教えてくれる腟まわり。でも、性を話題にするのは恥ずかしいと思う人が多い日本では、正しい知識とケアの大切さが、なかなか広がっていかないのが現状だ。
「デリケートゾーンという名前もよくないですね。隠すべき、触ってはいけない場所のよう。女性器はカラダの一部です。知識がないから不安になるし、見ていないから変化も分からない。プライベートな場所ですから、責任を持って自分でケアをしましょう」(女性泌尿器科医・関口由紀さん)
ケアの基本は、見て、触れて、理解すること。そして、洗ったり潤わせたり、腟まわりの機能を健やかに導くプラスαのケアも大切。
「腟まわりは、月経痛や不妊、その他の婦人科系トラブルなど、様々な問題を解消する糸口になります。カラダの内と外をつなぐ大切な場所なので、ちゃんとケアすれば、自分を肯定的に受け止められるようにもなりますよ」(植物療法士・森田敦子さん)
習慣にしたい、4つのセクシュアルケア。
セクシュアルケア1…【知る】
健康な腟まわり、性器はどのようなものなのか、その働きを含めてきちんと理解。その上で自分の性器の状態をチェック。理解する、知るのがセクシュアルケアの大前提。
セクシュアルケア2…【洗う】
洗い方の基本や正しいソープの選び方を身につける。毎日正しい洗い方で、腟まわりを清潔な状態にリセットしておけば、かゆみやニオイなどのトラブルも起こりにくくなる。
セクシュアルケア3…【潤す】
顔同様にケアしてほしいエリア。洗いっぱなしではなく、潤いをプラスするなど手をかけるほど愛着も女子力もUP。専用の美容液やクリームを使い続けると、プニプニ感が復活。
セクシュアルケア4…【+α】
性器の色や形、ニオイにまつわること、弾力性、腟内の粘度など、お悩みは千差万別。自分のお悩みにぴったりのセクシュアルケアをプラスし、健やかな性ライフを送ろう。
セクシュアルケア1…【知る】現状や機能を知るのがケアの一歩。
「人それぞれ形も色も、弾力も違って当然です。正しい性器なんてないので、まずは自分の現状を知ること。また痛みやかゆみがあるなど、トラブルが起きているのに、自分の目で見ずに放置すれば悪化することだってあるんです」(関口さん)
そこで改めて、下の図を参考に、自分の目で見える外性器と内部の内性器を確認しよう。さらに、腟まわりの硬さや伸縮性もチェックしたい。
「血流がスムーズで、粘液がしっかり出る健康な腟には、伸縮性が必要です。でも最近、ストレスや緊張などで骨盤まわりが硬くなり、腟口も硬く萎縮して、その結果性交痛に悩む人が増えています」(関口さん)
しなやかな状態を取り戻すべく、腟ストレッチと腟トレを習慣に取り入れたい。
「心身の状態とリンクする部分が多く、知るほどに愛おしく感じ、ケアすればちゃんと応えてくれますよ」(森田さん)
見える部分、見えない部分も知っておこう。
常に粘液を出して健康を保つ腟をカバーする、小陰唇と大陰唇。そして意外と知られていないのがクリトリスの大きさ。外に出ているのはクリトリスの一部(陰核亀頭)で、実際は腟口を左右から覆うように存在する。性的快感を得る以外に役割が見当たらない部位にこれだけの大きさがあるなんて、カラダの神秘を感じる。
COLUMNお風呂で実践! 腟ストレッチ&トレーニング。
長年腟トレを提唱してきた関口さんが、最近提案しているのがお風呂での実践法。
「骨盤底筋を締める感覚が分からない、という人が多かったのですが、実際指を入れて行えば、緩める、締まるの感覚が掴みやすいんです。清潔な指で行うので安心ですし、性交痛の軽減に役立ちます。また、セックスの感度を高めるのにも有効ですよ」
STRETCH
腟まわりを清潔にしてから、まずはストレッチ。腟内に入っても大丈夫なオイルなどを親指につけ、腟口に挿入。肛門側の腟壁を指の腹を使ってほぐすようにマッサージする。
TRAINING
足を腰幅に開いて膝を少し曲げて立つ。中指か人差し指を使い、腟口に第二関節まで挿入。息を吐きながら肛門を締め、中の指をキュッと持ち上げる。何度か繰り返す。
※『anan』2021年12月1日号より。