口呼吸と自律神経の乱れがハァハァ呼吸を引き起こす!
長期間にわたるマスク生活の影響で、「口呼吸が習慣になっている人が増えている」と指摘するのは、呼吸器外科医の奥仲哲弥先生。
「本来、呼吸は鼻から吐いて吸うのが基本です。ところがマスクをしていると鼻で呼吸をするのが苦しいため、口呼吸になりがちに。口で浅く細かく息をする、いわば『ハァハァ呼吸』でラクをしようとするのです。このハァハァ呼吸を続けていると、呼吸機能が低下して疲れやすくなったり、上り階段ですぐに息切れしてしまったりと、体調に異変が現れます」
また、ハァハァ呼吸にはこんな原因もあるという。
「現代人は、ストレスや不規則な生活などにより、自律神経が乱れやすい。その緊張状態が持続すると、ハァハァ呼吸になってしまいます。逆に、ハァハァ呼吸から自律神経が乱れてしまうことも。いずれにしても自律神経は生命維持の要となる神経のため、整えておくことが大切です。そしてそんなハァハァ呼吸の改善には、呼吸の見直しが不可欠となります」
CHECK LIST
□階段を上るのがおっくうだ
□自分の呼吸音が聞こえる
□少し急いだだけで息が切れる
□口呼吸になっている
□シャンプーする動作が大変に感じる
□デスクワークで前かがみになっている
□よくため息が出る
□10秒間息を止めるとキツい
1つでも当てはまれば、ハァハァ呼吸の兆候あり。例えば、「シャンプーが大変」なのは、腕を上げる動作や、流す時に息を止めるだけで辛くなるのは要注意ということ。「10秒間息を止める」のも、呼吸機能が健全であればキツくないはず。
肺を鍛える
肺を鍛える…といっても肺には筋肉がないので、鍛えるのはその近くにある横隔膜。正しい姿勢と呼吸で横隔膜を動かせば、年相応の元気な肺の能力をキープできること間違いなし!
1、背筋を伸ばし、胸を開く。
“横隔膜呼吸”をするためには、横隔膜を動かしやすいように正しい姿勢でいることが大切。
「足を肩幅くらいに開いたら、腕は力を抜いて体の横に。横から見た時に、耳、肩、ひざの横、くるぶしを結ぶ線が、床と垂直になるように立ちましょう」
一方、座っている時には?
「片手を胸、もう片方の手をお腹に当て、両方の手の平が縦に平行に並んでいたら正しい姿勢。猫背や、椅子に寄りかかって浅く座るのはNG。長時間座っていると姿勢が崩れてくるので、時折確認してください」
2、待ち時間に、横隔膜呼吸を。
呼吸は言葉どおり、呼=吐いてから、吸うのが基本とのこと。
「まずは鼻から軽く息を吸って、口からゆっくり吐きます。最後はお腹の下あたりに力を入れて息を吐き切ると、次の息が鼻から自然と深く入ってくる。これを5~6回。例えば、赤信号やエレベーターなど、ちょっとした待ち時間にやるのがおすすめです。イライラせず、むしろこの横隔膜呼吸の時間が確保できたと思えるようになります。これを1週間ほど続けると、疲れやすさや冷え、不眠といった不調の改善が感じられるはず」
【1】正しい姿勢をキープしつつ、鼻から「スッ」と1秒ほど息を吸う。口は軽く閉じておこう。
【2】口を「イ」の形に開き、10秒ほどかけて息を吐く。少しずつお腹に力を入れて吐き出そう。
【3】お腹を背中に引き寄せるイメージで1~2秒ほど下腹に力を入れ、息を絞り出す。自然と鼻から次の息が入ってくる。
肺年齢を調べる
正確に計測するには病院の機械が必要だけれど、家でも簡易的に測れるので定期的にチェックを。
丸めたティッシュを息で飛ばして肺年齢を確認。
用意するのは、ティッシュペーパーと食品用のラップの芯と、メジャー。ティッシュは2枚分をギュッと丸めて直径2cmほどの球を作り、テープで留める。それを食品用ラップの芯の吹く側に入れたら、立った姿勢のまま思い切り吹く。
「その結果が4.2m以上なら20~30代の肺の能力があると捉えられる。1.4~4.2mは40~60代。1.4m以下の場合は、少し心配。もう一度測ってみて、同じ結果ならもしかして肺に問題があるかも。念のため、病院で検査をしたほうが安心です」
ラップの芯を構える時には、芯が床と平行になるように注意。ティッシュの吹き方は、「フーッ」と一息で飛ばすことを意識しよう。
奥仲哲弥先生 呼吸器外科医、医学博士、山王病院呼吸器センター長。著書は『不調の9割は「呼吸」と「姿勢」でよくなる!』(あさ出版)ほか。テレビなどでも活躍。
※『anan』2022年11月23日号より。イラスト・Knty 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)