社会のじかん

6月から本格始動! 今後の動きに注目したい「デジタル化横展開推進協議会」とは

ライフスタイル
2024.05.18
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。 今回のテーマは「デジタル化横展開推進協議会」です。

横の連携を強めてデジタルを使った社会課題解決を。

堀潤 社会のじかん

ITベンダーなどの民間企業や大学、自治体などとデジタル庁が協力をして、3月に「デジタル化横展開推進協議会」を設立しました。マイナンバー制度を筆頭に、日本のデジタルの仕組みはなかなか思うように進んでいません。これは企業や自治体ごとにシステムが異なっていたり、業界内の棲み分けが下請けまで連なり、情報を共有できずITインフラが広がらなかったんですね。それに危機感を抱いたデジタル庁は、民間主導・官庁支援型の「デジタル化横展開推進協議会」を立ち上げることになりました。「新しい標準」という標語を掲げ、社会課題ごとにプロジェクトを立ち上げて、各企業が横でつながり、解決のために技術協力し合う仕組みを作ろうという試みです。

少子高齢化や過疎化、災害対策など、解決しなければいけない社会課題はたくさんあります。課題ごとならば目的は明快ですし、協力もしやすい。官公庁もプロジェクトに合わせて、規制緩和やバックアップがしやすくなります。

協議会の設立記念イベントでは、取組に賛同した民間企業・団体、大学、自治体などから、オンラインを含め350人が参加しました。

設立の背景には、能登半島地震の時に、「防災DX官民共創協議会」が大きく機能したという成功体験がありました。防災分野において、データの連携などで技術を出し合おうと、デジタル庁と民間事業者が連携したんですね。被災地ではマイナンバーシステムが使えなかったので、東日本旅客鉄道株式会社の協力のもと、交通系ICカード「Suica」を被災者に配り、物資の受け取りや健康診断の受診などをスムーズに行えるようにしました。

日本のデジタル政策は遅れており、コロナ禍でも給付金の支給に時間がかかるなど、欧米諸国に水をあけられていました。情報漏洩や銀行のシステムが止まるなど問題も頻出。「デジタル敗戦」といわれ、本腰を入れて状況を変えなければという機運に満ちています。デジタル庁ができて2年半、その存在意義が浮かび上がってきたのかなと思います。デジタル化横展開推進協議会は6月から本格始動します。今後の動きに注目しましょう。

タレント 社会のじかん 堀潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年5月22日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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