What’s? “RRR”
本作を手掛けたのは『バーフバリ』シリーズで旋風を巻き起こしたインド映画の巨匠S・S・ラージャマウリ監督。タイトルになっている“RRR”とは、もとは監督と、W主演のNTR Jr.、ラーム・チャランの名前にある“R”を重ねた仮タイトル。それが好評で、Rを「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字として本タイトルに。劇中では、物語(STORY)のいきさつと、主人公2人のキャラクター(FIREとWATER)を紹介するためのフックとしてRが用いられている。映画『RRR』は全国劇場で公開中。
FIRE(ラーマ・ラージュ)
劇中で、「FIRE」の文字に続いて登場するのが、ラーマ(ラーム・チャラン)。英国政府の警察ではあるもののワケありの様相。火とともに戦うキャラクターで、一人で数千人に立ち向かうなど、絶対に敵に回したくない圧倒的強さ!
STORY
1920年、イギリス植民地下のインドの村で、一人の少女が英国軍にさらわれた。助け出そうとする村の勇者・ビーム。ある大義から英国政府の警察として働くラーマ。二人はお互いの素性を知らず、無二の親友となるが…。
WATER(コムラム・ビーム)
「WATER」の文字の次に登場するのがビーム(NTR Jr.)。森で育った心優しい青年。半面、強靭なフィジカルの持ち主で、さらわれた少女など大切な人を救うため、驚異的な身体能力を発揮。水を味方に戦う姿が見どころ。
アツい愛を語り尽くします! RRRラブ座談会。
好きな場面やキャラクター、受け取ったメッセージなど、『RRR』好きの3人が鼎談。より作品を楽しめるコラムもチェック。
なだぎ武さん 芸人。俳優として映画やドラマ、舞台などでも活躍。映画好きでアクション映画に精通。『RRR』は映画館で2回観賞。出演する舞台『風都探偵 The STAGE』が12/29~上演。
ライター・R子 ananなどで記事を執筆するエンタメ好きライター。『RRR』はIMAXで4回観賞。ハンサムで激しいラーマと、逞しく優しいビームのバディに胸を焦がし続けている。
バフィー吉川さん 映画評論家、映画ライター。インド映画に詳しくヒンディー音楽評論家としても活動。『RRR』は5回観賞。著書『発掘! 未公開映画研究所』(つむぎ書房)が発売中。
なだぎ武:初めて観た時、めちゃくちゃ面白すぎて。“あのシーンええな、このセリフええな”というのが詰め込まれていたはずやのに、全部忘れた状態で映画館を出たんです。俺、何を見たっけ? って(笑)。
ライター・R子:仕事の前に観に行ったけど、その後、仕事にならなかったですね。
なだぎ:冒頭の、ラーマvs群衆がすでにクライマックス。一段落したと思ったらビームvs虎でしょ? またクライマックスくるの!? って(笑)。開始30分なのに濃度が濃すぎて脂汗が止まらなかったです。この映画は1秒たりとも見逃せないんやと覚悟して観ました。3時間って2分やったっけ? くらいの体感。
バフィー吉川:あまりアクション映画に言うことではないけど、どこをとっても絵になるフォトジェニックな作品だなと。エンターテインメントとしては、最高峰のものを提示されたというイメージです。
なだぎ:アクションが肉弾戦というかアナログですよね。アクションの原点回帰みたいな面白さがあって、体一つで作り上げるアクションで興奮した子供時代を思い出しました。
バフィー:インドのアクション映画はブルース・リーやジャッキー・チェンなど香港映画の影響を受けていて、それを観て育った人が今、映画を作っているからかもしれません。
なだぎ:“世界最強の肩車”を見た時は、『阿修羅/ミラクル・カンフー』を思い出しました。ラージャマウリ監督の記事に、感情が残るアクションを目指したとあって。ブルース・リーもそうですよね。
R子:人間ができることの限界を超えたアクションという感じがしましたね。あと、冒頭のラーマvs群衆で、ラーマの足を引っ張っている人がいて。“勝ちたいと思ったらそういう泥くさいことやるよね”と、細かいところもよくできていて、それゆえに引き込まれました。
なだぎ:殺陣じゃないんですよね。一方でキメ顔とか、“いちいちうるさい!”みたいな、昔の大映ドラマのようなクサさがあるのもいい。そして、群衆の中で棒一本で戦ったり、飛んできたバイクを掴んで戦ったりと荒唐無稽に思えるようなシーンであっても、“こいつならいけるんちゃう?”と思わせる説得力がある。
R子:ちなみにおふたりが好きなキャラクターは誰ですか?
なだぎ:ラーマですね。この時、絶対ここで死ぬなと思っていたのに違ったし、途中、ヴィラン側かと思いきやそうでもないし、遂に神になって…。観終わった時に、僕はラーマ目線の映画やったんかなと思ったんですよね。
バフィー:僕もラーマですね。個人的に、神になったラーマの弓さばきは、『ホークアイ』を意識しているところがあるのかなと思いました。インドは今、MCUブームなので。
R子:私はビーム目線ですね。神になったラーマを見た時の、“ハッ…!”という顔が好き。同じ顔をしていたと思います(笑)。自分とは違う広い視野を持ったラーマへの敬意を表しているようにも感じました。
なだぎ:あのシーン、あくまで動物は動物として動くところがいい。
R子:ちゃんとビームも襲われるんですよね。ご都合主義じゃなくて。
なだぎ:虎に許しを請うたり、監督が動物を愛していることがわかる。
バフィー:インド映画は全体的に動物を大切にしていて、たとえCGであっても、冒頭に「この作品は動物を虐待していません」というメッセージが表示される場合があります。
なだぎ:あと、やっぱり、ナートゥダンスのシーンは圧巻!
バフィー:主役の二人はダンスが上手いことで有名。監督はダンスシーンを入れなくてもいいと思っているらしいですが、この二人が出るのに踊らないとクレームがくるということで1曲入れたそうです。作家性にもよりますが、インド映画全体として物語を無視するような突拍子もないダンスシーンを入れる作品は少なくなっている傾向がありますね。
なだぎ:ビームに絡む嫌なイギリス紳士も、ごちゃごちゃ言いながらも土俵に乗っかってきてくれるところがいい。しかもあいつ、あのシーンだけの登場なんですよ(笑)。健気。
R子:スピンオフを作ってほしいです(笑)。いいキャラといえば、スコット&キャサリン夫妻も。相性が良すぎる最高のカップリングだなと。
なだぎ:見るからに悪そう。釘のついた鞭、誰に作ってもらったん(笑)。
R子:人物描写でいうとラーマとビームの描き分けがすごい。火と水、馬とバイク、懸垂とスクワット…など、わかりやすい属性設定があることで、作品に入り込みやすかった。
バフィー:インド映画において男2人のW主演ものって少ないんです。今作は2人の有名人を使っていることもあって、さまざまな設定が見事に生かされていたのでは。
なだぎ:しかも、全てに意味があるんです。二人を象徴する火と水は国を助けるものでもあり、重要なシーンで出てくる機関車も、火と水で動いているとか。
R子:観るほどに発見があるし、泣くところも毎回変わる。2回目は、初めて二人の目が合った瞬間に泣いてしまいました…。運命の出会い。
なだぎ:あのシーンを見ると、大事な時に言葉はいらないんだなって。余分なものを排除し、人間の根底にあるものだけで向かっていこうという潔さと覚悟が詰まっている作品。
R子:モノローグや自分の言葉で多くを語らせないのに、表情や視点でこんなにもいろいろなことがわかるんだ、と感心もします。
なだぎ:僕は今作を観て、目的を全うすることも大事なのはもちろん、達成までのプロセスがいかに大事かということをあらためて感じました。成長することがたくさんあるんやと。
R子:それを思うと、無駄の一切ない、全て必要な3時間ですよね。
なだぎ:揚げ物、肉、海鮮! と冒頭からてんこ盛りだけど、その全てが必要。しかも、長尺なのに誰が観てもわかるストーリーで、感情移入できる場所があって、誰も置き去りにしない。本当にすごい作品ですよ。
R子:アカデミー賞にノミネートされないですかね?
なだぎ:入らないとおかしい!
バフィー:主要部門で攻められると思います。アメリカでも話題ですし、作品のクオリティが高いので。
なだぎ:1970年の大阪万博みたいな作品ですからね。“人類の進歩と調和”みたいなメッセージがある映画が作品賞をとってくれたら、映画界は安泰やなと思います。
バフィー:インドの映画界もさらに盛り上がると思いますしね。
R子:応援上映にも行きたいです。
なだぎ:ナートゥダンス踊りたい!
バフィー:選手権やるとよさそう。
なだぎ:誰が最後まで残るか勝負。その暁には、肩車で乗り込みます!
【1】主演二人の身体能力がすごすぎる!
飛んだり、吊られたり、肩車で走ったり。斬新で目を惹くアクションシーンは、スタントではなく本人たちが演じることで、よりリアリティのあるものに。「二人はアクション俳優としても有名です。監督もアクションに対してのこだわりが強いことで有名です」(バフィーさん)。事前に監督が試していたというエピソードもあり、2度驚きです。
【2】「ナートゥ」ダンスとは?
名シーンの一つ、激しく華やかでカッコいいナートゥダンスは、映画オリジナルのもの。「ナートゥは“昔ながらのインドらしさ”みたいな意味の言葉。『バーフバリ』と同じ振付師の方が作っています」(バフィーさん)。なだぎさんもYouTubeで挑戦! 「我慢できずに踊ってしまいました(笑)。15秒踊るだけでも本当に大変です!」
【3】劇中の音楽が中毒性大!
ビームの歌など、物語の表現を担う音楽が多く登場。「インドの大作映画では制作に音楽レーベルが入るケースが多く、『RRR』はT‐Seriesが担当しています。作った音楽はプロモーションにも使うのですが、今作は作品の質やストーリーを重視し、曲自体が意味のあるものになっています」(バフィーさん)。Spotifyではプレイリストを配信中。
【4】監督と俳優陣の魅力に夢中!
作品はもちろん、ラージャマウリ監督と主演のラーム・チャラン、NTR Jr.のチャーミングな人となりに心惹かれる人も続出。仲睦まじい3人の姿やファンとの交流が、来日時も大きな話題を呼んだ。「anan web」でも3人のインタビューを敢行! 楽しいやり取りや作品の裏話をぜひチェックしてみて。https://ananweb.jp/anan/446684/
【5】観るとどハマり必至。SNSでも大盛り上がり。
とんでもない映像と物語を目の当たりにした体験や、作品への熱い思いをつぶやいたり、ファンアートをアップしたりと、SNSでも盛り上がりを見せる『RRR』。おかわりを意味する「#追いRRR」や、「#細かすぎて伝わらないRRRの好きなシーン」など、オリジナルのハッシュタグもたくさん誕生している。口コミにより、人気はさらに拡大中!
【6】映画の舞台になった時代背景とは?
『RRR』は1920年、イギリス植民地時代のインドが舞台。作中にも理不尽な暴力や支配が描かれている。「イギリス人の描き方がひどいという声も聞きます。現代設定だとNGですが、大英帝国による植民地への加害は歴史的事実であり、イギリスの方も“そういうものだ”と割り切って観ているので安心してください」(バフィーさん)
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写真:Everett Collection/アフロ REX/アフロ
※『anan』2022年12月14日号より。取材、文・保手濱奈美 重信 綾
(by anan編集部)