BiSH「いい意味で6人は普通の女の子。みんな常識をしっかり持ったヤバいヤツ (笑) 」

2022.6.19
昨年末、突如として解散発表をしたBiSH。圧倒的なライブ・パフォーマンスで、ジャンルを超えて熱狂を生んできた彼女たちが、これまでとそしてこれから、伝えていきたいこととは。

セントチヒロ・チッチ「苦しんでる人の生きる糧になってくれたらいいな」

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「BiSHはパンクバンドなのか? アイドルなのか?」と、よく言われてきました。でもどっちでもいいし、どっちでもないと私は思っていて。どう受け取ってもらってもいいし、どこにも正解がないのがBiSHの面白さだと思っています。

結成当初から、何かに媚びるわけでもなく、自分たちも曲作りに参加して表現する中で、BiSHというジャンルを貫いてきました。求められることだけをやっても面白くないから、カウンターアクションを起こしたり、メッセージ性のある曲を出したり。だからこそBiSHが好きって言ってくれる人や、認めてくれる人がいてくれたら嬉しいし、そこに自信を持って活動できているんだと思います。

私自身、BiSHに加入する前の自分と今の自分では何もかもが違うと感じています。もともと私は、上手な人間関係を築くことができなくて。子供の頃にはいじめもあったし、互いに誰かのことを決めつけたり決めつけられたりして、優しい世界じゃないと感じていました。そんな中で音楽ばかり聴いて、音楽だけが友達で。でも、そんなんじゃ楽しくないから、自分から変えていかなきゃなって大人になってから思って、自分の人生を楽しくするためにいろんなアクションを起こしたんです。

優しい世界じゃないと感じていた、そんな反骨精神はBiSH加入時からありました。根性と悔しさがすごかったので、小さい時は「今はこの人たちに勝てないけど、この人たちよりいい人生を送って、幸せになってやろう」なんて思っていて。それが実になってきたのはBiSHに入って、ちゃんと自分が形成されてきたと感じた時。「あの時の自分があったからこそ今があるんだ」と思えたんです。

誰かのために何かしたいと思える強さはセントチヒロ・チッチになってから芽生えた心です。だから今こうして自分が生きている時間にも、優しくない世界で苦しんでいる人にとって、BiSHが生きる糧になってくれたらいいな。私だけじゃなくて、メンバーも上手に生きてこられた子たちじゃないから、活動を見てもらって「私も頑張れるかも」って思ってくれる人がいるんじゃないかな。それはBiSHの原動力であり、強さなんです。

Q、おすすめの曲は?
新曲「どんなに君が変わっても僕がどんなふうに変わっても明日が来る君に会うため」、タイトルが長いですよね(笑)。BiSHにしては珍しくバラードで、アイナがたくさん踊るのでダンスにも注目してください!

セントチヒロ・チッチ 5月8日生まれ、東京都八王子市出身。初期メンバー。無類のカレー好き。担当:見た目は真面目、中身は悪女 これでも彼氏は2人まで。

シャツ¥62,700(チャールズ・ジェフェリー・ラバーボーイ/ヌビアン渋谷 TEL:03・6455・1076) タンクトップ¥74,800(エリア/ヌビアン渋谷) パンツ¥35,750(テンダーパーソン/ヌビアン渋谷) ヒール¥33,000(ノントーキョー/エスティーム プレス TEL:03・5428・0928) 

アイナ・ジ・エンド「行き切った人はかっこいい」

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BiSHを定義するのは難しい…。ボーダレスというかグレーゾーンみたいな(笑)。私にとってアイドルはクラスで可愛い子がなる存在。自分はかけ離れてるから“アイドル”って言われても嬉しいし、もの作りをしているということもあり“アーティスト”って言われても嬉しい。昔からいろんなことに対して違和感は抱いていたので、枠に縛られないほうが楽に表現ができるんです。例えば綺麗な角度で歌われても響かない歌があるし、綺麗なポージングをしても洋服が活きない時もある。ジャニス・ジョプリンがヒッピースタイルをしたり、レディー・ガガが奇抜な服を着ると、最初は奇異な目で見られたけど、行き切った人はカッコいい。BiSHもそういう存在になりたいです。だから、BiSHとして活動させてもらえるうちは、固定観念にこだわらない挑戦をしていきたい。振り付けも無意識にボーダレスなものを目指していたと思います。アイドルやK‐POPの振り付け、色々なものを学んでいく中で、自然とどこにもないジャンルが作りたくなった。これからもそこは変わらないです。

BiSHの活動によって悲しさと嬉しさを学びました。それまでは根性論で生きていたので、悲しいことが起こっても「やるしかない」って思って見て見ぬふりをしていました。でもメンバー5人と接していく中で、「もっと弱くていいんだ」とか「もっと可愛くていいんだ」って気付いた。素直になれました。いい意味で6人は普通の女の子。みんな常識をしっかり持ったヤバいヤツです(笑)。私も含めて天才はいない気がする。だからこそお客さんが共鳴してくれやすいのかなって。いろんなことを乗り越えて、みんながいい女性になってきた感じがします。

解散に向かう期間を過ごす中で、“ここ”にいたことをちゃんと覚えておきたい。例えば一緒に焼き肉を食べた時のメンバーの顔とか、断片的でもいい。記憶に入れておくことができれば、会えなくなっちゃっても引っ張り出してこれると思う。終わりって悲しいものなので、それが決まっているんだったら、毎日ステーキを食べてるみたいな楽しい感じで、メンバーとも、清掃員(ファンの呼称)とも過ごしていきたいです。

Q、おすすめの曲は?
「スーパーヒーローミュージック」。アユニ作詞なのですが、コーヒー飲めないのに、歌詞にコーヒーが出てくるんです。「こぼして悲しい」って思ってるのに、絵を描いてハッピーになろうとしてる。その感じが可愛い(笑)。

アイナ・ジ・エンド 12月27日生まれ、大阪府出身。初期メンバー。ハスキーボイスが特徴で、BiSHのほぼ全ての楽曲の振り付けを行う。担当:おくりびと。

ジャケット¥379,500 スカート¥220,000 スニーカー¥60,500(以上ヴィヴィアン・ウエストウッド/ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーション)contact@viviennewestwood-tokyo.net

モモコグミカンパニー「受け入れられなくても“自分的には満点”が大切」

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BiSHはアイドルらしからぬ、という意味では、ジャンルで括りにくいグループなのかなと思います。衣装もフリフリとかではないし、恋愛ソングもあまりないし、平気で中指を立てたり…。でも私はそんな過激なBiSHが好きで入ったので、面白がってやっています。アイドルは昔から好きなんですけど、自分が男性に夢を与えるような歌詞を歌う、というのには違和感があったんです。男性にも女性にも響く曲が多いところが、BiSHの“ボーダレス”なところかも。「可愛い」も嬉しいけど、「カッコいい」って言ってもらうことが多いのも、BiSHのとても好きなところですね。

BiSHは固定センターがいないし、一人一人の声を活かすディレクションをしていただいていて、みんなで声を合わせて歌うようなパートがあまりないんです。レコーディングでは全員がすべてのパートを歌って、うまく歌えた人が採用される、っていう感じ。だからすごく平等。私自身、平等と平和を愛する人間なので、そこも合っているんだと思います。

作詞をさせてもらうことも多いんですが、言葉に関わりたいというのは、BiSHに入る前からの夢でした。多くの人に聴いてもらえる曲の作詞って、誰でもできるわけじゃないじゃないですか。そして聴いてくれた人から「救われました」とレスポンスをもらえることって、全然簡単なことじゃないと思っていて。それに私自身すごく救われるし、夢みたいだな、って思っています。

歌に関しては、BiSHはいつも生歌で、TVで歌うと「下手」とか言われたりするんですけど、私は上手い下手より全力で歌えてるかが大事だと思ってるんです。そのほうが、生きてるなって思える。ファンの方は、そこをわかってくれる人が多いのが、ありがたいなと思っています。

私たちは解散するけど、普通に生きていても明日何があるかなんてわからないですよね。なので、解散が決まってからは特に、先のことよりも“今”を大切にしようとか、一日一日を目一杯生きようっていう活動ができているんじゃないかと思います、BiSHの音楽は残り続けていくので、それを聴いて何かを感じ続けてくれる人がいたらいいなと思います。

Q、おすすめの曲は?
私たちはアイドルじゃない、とか言っておきつつ、「BiSH‐星が瞬く夜に‐」の歌詞にはがっつりと「アイドル」って入っているのが面白い。アイドルってめちゃくちゃカッコいいな、と思わせてくれます。

モモコグミカンパニー 9月4日生まれ、東京都出身。多くの作詞を担当。今年3月、『御伽の国のみくる』(河出書房新社)で小説家としてデビュー。担当:あまのじゃく。

ブルゾン¥41,800(アンダーソンベル/ヌビアン渋谷) ドレス¥326,000(エルマンノ シェルヴィーノ/ファーフェッチ カスタマーサービス TEL:050・3205・0864) ブーツ¥18,700(エーグル/エーグル カスタマーサービス TEL:0120・810・378)

リンリン「いっぱいお客さんを裏切ってきました」

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BiSHに加入する前からキラキラしたアイドルには永遠になれないと思っていたので“楽器を持たないパンクバンド”というコンセプトによって心が軽くなりました。それに、普通のアイドルの肩書ではいろんなジャンルのフェスにも出られなかったと思うので大事な肩書です。

BiSHは良い意味でいっぱいお客さんを裏切ってきました。例えば、事前の告知なしで「NON TiE-UP」という曲を出したんですが、めちゃくちゃ下ネタの歌詞で(笑)。そういう展開に対してワクワクしている清掃員が多くて、お互い楽しみにし合っている感じがずっと続いていると思っています。

BiSHの活動を通して一番学んだのは人間関係です。学生の時は、「今日は学校で3人までとしか喋らない」と決めたり、あまり人と関わらないで生きてきたんですが、BiSHのメンバーはこれまで交わったことのないジャンルの人ばかりだったので、喋ってみないと人の気持ちはわからないなと。話して相手を知ることで、お互いの良いところ悪いところだけじゃなく自分のこともわかった。メンバーに出会えてちゃんと人と喋れるようになりました。でも私は「これがやりたい」と思ったら曲げられないタイプ。そのままで、あまり大人にならず、でも子供でもないみたいな自分でいたいです。

歌にずっと苦手意識があったんですが、「STAR」で叫ぶような歌い方をしたことで、やっと自分なりの感情の込め方がわかった。最近は歌うのが楽しいです。ライブ中も前は歌が怖くて耳は聞こえてるのに塞いでしまっているような感覚だったのに、クリアに歌が聞こえるようになった。解散までの時間が限られているので、その場をちゃんと清掃員と共有したいという気持ちによって変わったところもあります。お互い「この日を忘れたくない」っていうふうに毎日過ごしたい。解散発表後のライブは会場の雰囲気がすごく温かい。私はBiSHのライブが一番好きなので、「いつ倒れてもいい」っていうぐらいの気持ちを最後までぶつけていきたいです。楽屋であまり喋らなかった日も、ステージに立った瞬間に1個の答えになる感じがすごくするんです。BiSHは6人で1個だと心から思っています。

Q、おすすめの曲は?
「VOMiT SONG」。ずっと自分の中にある景色が歌詞に描けて、いつでも寄り添ってくれる曲。あと、「beautifulさ」は諦めの曲として書いたのに励ましの曲として捉えられた。予想と違っても誰かの支えになったら嬉しい。

リンリン 3月9日生まれ、静岡県出身。2015年8月にBiSHに加入。刈り上げがトレードマークのファッショニスタ。担当:無口。

ジャケット¥41,800 ドレス¥48,400(共にロドリリオン/ネペンテス ウーマン トウキョウ TEL:03・5962・7721) タートルネックニット¥41,800(クレージュ/エドストローム オフィス TEL:03・6427・5901) ピアス¥36,300(ボーニー/エドストローム オフィス) 

ハシヤスメ・アツコ「無理だと思うことも乗り越えてきたのがBiSH」

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私はBiSHがデビューして3か月後くらいに加入したんですけど、当時、できたばかりのアルバムを聴いた時に、すごくパンクでロックな曲を、可愛い女の子たちががむしゃらに歌ってる姿がカッコいいなと思いました。メッセージや魂で訴えかけてくる感じが、声や曲から伝わってきて。自分たちで作詞をして、振り付けをアイナが考えて、そうやって自分たちで感じたことを表現できるのがBiSHの強み。みんなでメッセージを届け続けた8年間だったなと思います。

ちなみにハシヤスメというこの名前は、自分でつけたんです。夜、寝ている時に急に思いついて。私、本当にお肉とかよりも野菜やお漬物のほうが好きなんです。それは芸能やアイドルの世界でも言えることで、センターじゃなくても輝ける子ってたくさんいるし。いい名前かもしれないと思って、今でも気に入っています。

コントをやるようになったきっかけは、社長兼プロデューサーの渡辺淳之介さんに、あるツアーから「コントやってみない?」と言われて。まさか自分がBiSHでお笑いをやるとは思ってなかったんですけど(笑)。どうせやるなら恥を捨ててやってやろうと。やっていくうちにお笑いの奥深さや、芸人さんたちの場を盛り上げたりする凄さを思い知りました。

ワンマンライブの合間に10~15分くらい、私が台本を書いてメンバーに演じてもらうコントのコーナーがあるんです。今のツアーではBiSHの思い出を軸にしたクイズ大会みたいな感じの、ハシヤスメの自己中なコント(笑)。毎公演、内容を変えてやっています。BiSHのライブはエモーショナルだし、シリアスな曲も多かったりしますが、その時間は休憩がてら、それこそハシヤスメ的な感じで楽しんでいただければと思っています。

BiSHってアイドルなのか、バンドなのかという疑問は永遠につきまとうものだと思うんですけど。だからこそ、いろんなジャンルや枠組みを超えられてきた。急に大きなステージが決まったりということもしょっちゅうで、日比谷野外音楽堂や幕張メッセなど絶対にお客さんが埋まらないと思ったんですけど、「それは無理だよ」と思うことも常に乗り越えてきたのがBiSHなんです。

Q、おすすめの曲は?
「社会のルール」。当時、ニュースで世間を賑わせていた人にインスパイアされて書いた歌詞なんですけど。〈つまらない大人になりたくない〉というようなフレーズもあり、自分にも訴えかけているような内容になりました。

ハシヤスメ・アツコ 9月27日生まれ、福岡県出身。2015年8月より加入。メンバーからは“バラエティ担当(一応)”と任命される。担当:メガネ。

ドレス¥149,600 ブーツ¥96,800(共に3.1 フィリップ リム/3.1 フィリップ リム ジャパン TEL:03・5962・7061) バングル¥42,900(オール ブルース/エドストローム オフィス) 

アユニ・D「喜怒哀楽も前後左右もすべてBiSHで覚えました」

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私は最後にBiSHに入った、いちばん加入の遅いメンバーなんですけど、当時は子どもで、本当にクソガキだったんです。斜に構えてたし、笑わないのがカッコいいと思ってたし、いろんな人からの愛情や優しさをまったく受け入れないで生きていて、いま会えるなら殴りたいくらい。自分でも苦しい時期だったんですけど、BiSHはそんな私に音楽を通じていろんな言葉をかけてくれました。ライブでの泥くさくてカッコいい姿に惹かれて、オーディションを受けたんですが、入った当初はメンバーとも喋れず、言葉が出てこなくて「あ、あ、あ…」みたいなカオナシ状態(笑)。メンバーも別に私が最年少だからって「アユニちゃん!」っていう感じでもなく、女豹が5匹いるみたいな…(笑)。一人で溜め込むこともあったんですけど、BiSHは止まらないので、そんな中で喜怒哀楽も前後左右も徐々に覚えて成長できたんだと思います。ちなみに今は、私にとってメンバーはお母さんが5人いるみたいな感覚です。やっかいな時はやっかいなんですけど(笑)、救われる時は救われるんですよ。

BiSHは6人とも独特で、悪い言い方をすれば一般社会では生きていけないみたいなところがあると思うんです。不器用なりに生きているところ、完璧じゃないところなど、自分が感じてきた暗い部分も赤裸々に歌詞にするんですけど、それを人に伝えているつもりが、聴くと自分自身も肯定されている感覚もあるんです。そういう生き様を見せながら、必死に歌い続けていきたいと思っています。

最近、忘れたくないことが多すぎるんです。人が言ってくれたこととか、自分が経験したこととか…。記録しておかないと忘れちゃいそうで怖くて、歌詞にするようにしています。もともと思ったことを言えない性格なんですけど、音楽に乗せて言えるのがこの仕事の特権ですよね。そして曲を聴いた清掃員から「支えられた」って言っていただけたりすると、幸せでしかないなと思います。

解散してもBiSHとの想い出は清掃員の皆さんの中に全部残っていたらいいな。曲を聴いていたあの時間、ライブに行くまでの道のり…。私たちの音楽が何百年、何千年残ったら嬉しいなと思います。

Q、おすすめの曲は?
「MORE THAN LiKE」。ライブで歌っていて毎回泣きそうになる曲。歌の中での決めポーズを、ライブで清掃員たちが同じ振りをしてくれるんですが、感情まで同じになってくれてることを感じてグッときます。

アユニ・D 10月12日生まれ、北海道出身。ベースボーカルを務めるソロプロジェクト、PEDROとしても活躍。担当:僕の妹がこんなに可愛いわけがない。

ニット¥41,800 シャツ¥55,000 パンツ¥80,300 スニーカー¥28,600(以上ワイズ/ワイズ プレスルーム TEL:03・5463・1540)

BiSH 「楽器を持たないパンクバンド」として活動する6人組。2015年インディーズデビュー、2016年メジャーデビュー。魅力的な楽曲や一体感を生む圧巻のライブで広く音楽ファンに支持され、数々の音楽フェスにも参加。昨年末、2023年をもって解散することを発表。

※『anan』2022年6月22日号より。写真・SASU TEI(W) スタイリスト・服部昌孝 ヘア&メイク・進藤郁子(アイナさん、チッチさん) 北原 果(KiKi inc./リンリンさん、アユニさん) 向井大輔(モモコさん、ハシヤスメさん) 取材、文・上野三樹 小松香里 古屋美枝

(by anan編集部)