井之脇海「僕以外の人にやらせたくないと思った」 舞台『エレファント・ソング』に挑む

エンタメ
2022.05.04
精神科医のドクターの失踪を巡って、患者のマイケルと対話をすることになった病院院長のグリーンバーグ。しかしマイケルの話は一向に要領を得ない。一体マイケルの思惑とは。そして失踪の理由とは――。会話でのふたりの駆け引きがスリリングな舞台『エレファント・ソング』は、カナダで初演され、映画監督で俳優のグザヴィエ・ドラン主演で同名映画も製作された。今回、マイケルを演じるのは井之脇海さん。なんと上演が決まった際には、「今回、戯曲を読んで、直感的に『マイケルを演じるのは僕だ』と強く思いました」とコメント。その真意とは?

一挙手一投足まで見逃せない、濃密で深遠な会話劇。

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「これまでのお仕事で、この役をやりたいとか、この役をやるなら僕かなと思うことはありました。でも、脚本を読んで僕以外の人にやらせたくないと思ったのは今回が初めてかもしれなくて。マイケルは愛を渇望しているとても複雑な人物ですが、今の僕に演じる必要がある役だと思いましたし、僕なら自分なりの形で表現できるんじゃないかっていう根拠のない謎の自信もあって…」

とはいえ、作品の大半がふたりの会話で構成された舞台だ。

「膨大なセリフ量だとわかっていたので、稽古が始まる前に覚えようとしてたんですけれど、どうにもセリフが入ってこなかったんです。もともと脚本を読むのが好きで、役のことを考えている時間が長いからか、自然にセリフが入ってきて苦労したことがなかったんですけれど、今回はどうにもセリフが入ってこない。結論として今回は、マイケルという役を深いところで掴めるまで稽古を重ねて、彼の言葉を自分に染み込ませていくことが大事なのかなって」

なにせマイケルときたら、謎かけのようなセリフが多く、真実か嘘か、本心はどこにあるのかが掴みづらい。

「グリーンバーグを翻弄しようとして言っていることもあるけれど、ふとした瞬間に本音が漏れたりもして、それを隠すためにまたしょうもないことを言ったりする。それは僕ひとりで脚本を読んでいて想像できた部分もありますけれど、セリフを合わせてみたり、演出の宮田(慶子)さんと話す中で見つかるものも多いんです。終盤には、グリーンバーグを惑わすために発した言葉のようでいて、じつはすごく核心を突いているセリフもあるんです。今、マイケルとしてそれをどう印象的に突きつけられるかを考えているところです」

マイケルが対峙するグリーンバーグを演じるのは寺脇康文さん。

「僕の言動ひとつひとつ、丁寧にお芝居を受けてくださるんです。僕が芝居をちょっと変えると寺脇さんも変わって、そうすると僕もまた変わる。合わせるたびに、ちょっとずつ違う方向になっていくんですよね」

これまでは「舞台の2文字を大きな壁のように感じていた」そう。しかし「今は稽古が面白い」と笑顔に。

「稽古を積み重ねていくことで新しい発見があったり、日々の小さな変化を見逃さずに芝居に反映していくなかで作品が濃いものになっている気がするんです。この舞台は、一瞬たりとも目が離せない、ひと言たりとも聞き流せないぐらい一挙手一投足まで意味があって、そこで繰り広げられるヒリヒリするやり取りがドキドキする展開を生んでいきます。マイケルとして、瞬間瞬間を大事に新鮮な気持ちで演じたいと思っていますので、ぜひその濃密な時間を体験しに来てほしいですね」

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PARCO PRODUCE 2022『エレファント・ソング』 精神科の医師が失踪。病院院長のグリーンバーグ(寺脇)は、彼が最後に診た患者であるマイケル(井之脇)に話を聞こうとするが、マイケルはまるで関係のない「象」の話を始め…。5月4日(水)~22日(日) 渋谷・PARCO劇場 作/ニコラス・ビヨン 演出/宮田慶子 出演/井之脇海、寺脇康文、ほりすみこ 全席指定9000円ほか パルコステージ TEL:03・3477・5858 https://stage.parco.jp

いのわき・かい 1995年11月24日生まれ、神奈川県出身。子役を経て、数々のドラマや映画で活躍。近作に、映画『ミュジコフィリア』『猫は逃げた』『とんび』など。NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』に出演中。

※『anan』2022年5月4‐11日合併号より。写真・小笠原真紀 スタリイスト・檜垣健太郎(tsujimanagement) ヘア&メイク・AMANO インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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