生きるために必要な知識を改めて身につけよう。
ブックコンシェルジュの三砂慶明さんによると、書店における“大人向けの学び直しブーム”は2015年頃始まったそう。学習参考書と、大人向けの学び直し本が、それぞれ別軸からヒット作を出し始め、流行になったとか。
「コロナ禍で在宅時間が増えたこと、また不安定な世の中への不安と向き合うために、より本質的なことを学びたいというニーズが高まっているような気がします」
進学ではなく、よりよい人生を生きるための勉強。それが大人の学び直しの目的だ、と三砂さん。
「メールを書いたり、上司と話をするのに国語は必要ですし、実は数学だって必要です。また知識を得ると世界への理解が深まる。社会で生きていくために、自分に必要な、武器になる知識を、学び直しを通じて身につけられるといいのではないかと思います」
国語
日頃使う言葉や文章を、より良くできる2冊。
話す、書く、読むなど、日常生活を送る上で最も大切なのは、国語力。あらゆる場面で根本的に問われるこの国語力を、普段使うような言葉を使って学んだり、磨いたりできる。
『三行で撃つ〈善く、生きる〉ための文章塾』 近藤康太郎
「著者は朝日新聞の編集委員。文章を書くにあたり、ステレオタイプの表現を使わずに、いかに自分の言葉で言語化するかを掘り下げた本」。1650円(CCCメディアハウス)
『増補版 大人のための国語ゼミ』 野矢茂樹
「演習を解いて、国語力を鍛えていくタイプの参考書。国語の教科書は名文を使ったものが多い中、私たちが普段使うような言葉を例題にしているのが素晴らしい」。1980円(筑摩書房)
数学
中学で脱落した人でも絶対学び直せます!
つまずいたり、投げ出しがちな教科No.1といえば数学…。でもその“わからない”を理解している人が書いた本であれば、かつての劣等生でもわかる教え方で、しかも励ましながら学ばせてくれる。
『語りかける中学数学』 髙橋一雄
「数学のつらさに何度も涙を流してきた著者が、塾で教えた経験をもとに、語りかけるような口調で書いた中学数学のバイブル。正解だけでなく、誤答例が白眉」。3190円(ベレ出版)
『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』 西成活裕
「著者は東大の渋滞学の教授。大人の学び直しは、中学数学レベルがわかればOKと説き、3年分の数学を約6時間に圧縮。中学時代に知りたかった」。1650円(かんき出版)
社会
理解させる力が強い教師の本に注目。
いま社会で起きていることを深く知るには、歴史、そして地理の知識を身につけることは必須。体系を知ることで、“なぜそうなったのか”が理解でき、よりこの世界に興味が湧いてくる。
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』 山﨑圭一
「年号を使わず、地域ごとに歴史をまとめた入門書。著者は公立高校教師で、まるで一つの物語のように古代史から現代史までがつながる」。1650円(SBクリエイティブ)
『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』 山﨑圭一
「世界史が人気で、第2弾として出たのがこちら。天皇や将軍、総理大臣など政権担当者を主人公に、1つの物語として日本史を把握できる」。1650円(SBクリエイティブ)
『激変する世界の変化を読み解く教養としての地理』 山岡信幸
「予備校で地理を教える著者が、地理は暗記科目ではないと説き、因果関係や背景から教えてくれる学び直し本。世界の今とこれからが見えます」。1793円(PHP研究社)
三砂慶明さん 梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ。大学卒業後、株式会社工作社などを経てCCC株式会社入社。梅田 蔦屋書店の立ち上げから参加。著書に『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)がある。編著『本屋という仕事』(世界思想社)を上梓予定(5月下旬)。
※『anan』2022年4月20日号より。写真・中島慶子
(by anan編集部)