セットのこだわりがすごい! ドラマ『彼女はキレイだった』を支える“美術”の仕事

エンタメ
2021.08.14
エンタメの世界において、表舞台を支える“美術”のお仕事をご紹介! ここでは、ドラマ『彼女はキレイだった』の美術スタッフに密着。

空間、衣装、メイク、雨も! 目に映るすべてをデザイン。

ドラマの舞台となる部屋やオフィスのセットを作ったり、家具や小物を揃えるだけでなく、実は美術スタッフの仕事は多岐にわたる。

「役者以外のビジュアルイメージのすべてを担当しています。セットを製作するデザイナー、大道具、小道具はもちろん、衣装やメイクもです。監督が考える作品テーマやイメージに合ったプロフェッショナルを選び、統括するのが美術プロデューサーです」(「フジアール」メディア事業部 アート・プロデューサー・小林大輔さん) 

美術プロデューサーは、ビジュアルの方向性を決める重要なポジション。その世界観を実際に作り上げていくのが美術デザイナーだ。

「セットのデザインを考えるだけでなく、ロケ地に装飾を加えることも。そうやってドラマ全体の世界観を守っています」(「フジアール」デザイン部 スペースデザイン課デザイナー・大石萌瑛さん)

そんなお二人は、現在放送中の『彼女はキレイだった』を担当。「おしゃれ!」とSNSで話題になっている『ザ・モスト』編集部のセットを作り上げた。まずはどのシーンをセットで撮影するか、監督たちと決めることから始まる。

「世界観をしっかりと作り込めるのがセットの醍醐味。天候や時間に左右されず、いろんなアングルから役者を撮ることができるので、物語の要となる場所をセットで作ることが多いです」(小林さん)

監督や美術チームで何度も“美打ち”と呼ばれる打ち合わせを重ねて精度を高め、平面図、立面図、模型で具体化。それを基に大道具がセットを組み、小道具が調度品や家具などを調達するのだとか。

「模型はクランクイン前にイメージを膨らませるためにも必要不可欠。模型にスマホのカメラを向けて、撮影のシミュレーションをするスタッフも多いです。『彼女は~』に関しては、監督からとにかく明るい雰囲気の編集部にしてほしいとリクエストがありました。韓国ドラマのリメイクですが、オリジナリティを出したいとのことだったので、原作に引っ張られず、独自の世界観を作ることに注力しました。空間はもちろん、登場人物の個性的なキャラクターを際立たせるために、デスクまわりなどにその人らしさを感じられるように意識しましたね」(大石さん)

お二人に、美術の仕事にやりがいを感じる瞬間を尋ねると、

「細部まで作り込んでも、カメラに写るのは半分くらい(笑)。でも見えない部分にリアルがある。例えば引き出しに小道具を仕込んでおいたら、それを見つけた演者さんの表情や動きが変わって印象的なシーンが生まれることも。良い方向に進むきっかけを与えられた時が楽しいですね」(小林さん)

「作品ごとに様々な世界を作れるので毎回飽きない。こだわっただけ完成度は上がり、それを多くの人に見てもらえるので、常にやりがいを感じています」(大石さん)

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ナチュラルテイストでまとめられた編集部全景。

大石さんが手作りしたセットの模型。

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シックながらデザイン性を高めた副編集長室。

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編集部の明るい雰囲気とは異なり、落ち着いた空間。「メリハリをつけたかったので、シックな大人空間を演出しました。ただしファッション誌らしさも追求したかったので、『ザ・モスト』の雑誌を飾る、デスクの後ろの棚を斜めにして、表紙がよく見えるように遊び心を加えました」(大石さん)

ミーティングルームは、編集部らしい雑多な雰囲気。

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仕切ったりせずにワンコーナーにすることで開放的に。棚に並ぶ書類ケースやファイルなどがリアル! 引き出しの中に文房具などの小道具を仕込むことも。

ファッション誌の顔、表紙のデザインもハイクオリティ。
本棚や副編集長室など随所に飾られた『ザ・モスト』の表紙も、大石さんがデザインし作成。世界の最新ファッションを掲載する、一流モード誌らしいデザインに。

撮影用のアイテムを保管する衣装スペース。

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「カラフルな衣装を隠すのはもったいないので、グリーンの仕切りで見せる収納風に」(大石さん)。某出版社に足を運び、イメージを膨らませたのだとか。

雑誌を飾る窓際の棚は、編集部イチの映えスポット。

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『ザ・モスト』のバックナンバーを並べることで、編集部感を強調。「棚の後ろが窓になっていて、そこから照明を当てることで、朝昼晩の時刻によって変化していく編集部の様子がわかるようにしました」(大石さん)。窓、棚とレイヤー構造にすることで奥行きが生まれ、空間を広く見せる工夫も。

レトロな要素を取り入れたカフェスペース。

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編集部員がひと息つけるスペースは、冷蔵庫などの家電類や白い棚もレトロなデザインのアイテムで統一されている。「いま若者を中心にレトロブームが巻き起こっているので、トレンドに敏感な編集部として押さえておくべきポイントだと思い、小道具さんにお願いして揃えてもらいました」(大石さん)

デスクまわりでその人の個性を引き出す!

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ビューティ班の編集部員のデスクは最旬コスメや美容機器が多数。乱雑に置くことでその人の性格が見えてきて、視聴者が親しみを持ちやすくなるのだとか。

小林大輔さん 「フジアール」メディア事業部 アート・プロデューサー。知人のヘア&メイクの付き添いで行った番組見学を機に、映像美術に興味を持ち入社。美術進行を経て、現職6年目。

大石萌瑛さん 「フジアール」デザイン部 スペースデザイン課デザイナー。美大でグラフィックデザインを専攻。空間デザインの講義で、立体アートの表現に刺激を受け入社。現在8年目。

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『彼女はキレイだった』 “最恐毒舌”イケメンエリートで、ファッション誌『ザ・モスト』の副編集長を務める長谷部宗介(中島健人)と、そこで働く冴えない残念アラサー女子・佐藤愛(小芝風花)による、初恋すれ違いラブストーリー。毎週火曜21時~、カンテレ・フジテレビ系にて放送中。

※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。取材、文・鈴木恵美

(by anan編集部)

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