自意識が渦巻く教室で、主人公になりたかった私たちへ。谷口菜津子さんによるコミック『教室の片隅で青春がはじまる』をご紹介します。
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「ラジオが好きで“学校あるある”を投稿するコーナーを聴いていたんですけど、痛々しい記憶が多いんですよね。恥ずかしい思い出でしかないんだけど、みんなと共有することで微笑ましくなったり、楽しい記憶になるのがいいなと思って。私も読む人が、過去の失敗や恥ずかしい記憶を優しく思い出せるマンガを描きたくなって、自意識が暴走していた高校時代の教室を舞台にしました」

谷口菜津子さんの『教室の片隅で青春がはじまる』は、同じ教室で机を並べる女子高生のオムニバス。彼女たちはみな自分を特別視し、小説にしたらベストセラーになるような人生を送りたいと願い、信じてもいるけれど、それが難しいことも心のどこかでわかっている。たとえば有名になりたい吉田まりもは、ユーチューバーデビューをしても空回り。おまけに周りと合わせることができず、いつも浮いている。

「私も浮いていた時期があったんですよね。いま思うと、あれはクスクス笑いじゃんみたいな(笑)。ほかにも周りで浮いていた人の気持ちを想像して、笑われがちだけどだんだん目が離せなくなってしまうようなキャラクターにしてみました」

まりもの人生初の友達となるネルは、宇宙からの留学生。自分の星ではまったくモテず、地球だったら特別になれると信じてやって来たが、結局マスコット扱いされてしまう。

「飼い猫が巨大化して、人間の恋人が欲しいと思ったらどうなるんだろう、と想像してできたキャラです」

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ほかに登場するのは、オタクであることを隠している美少女のニカ、SNSの裏アカで完璧な女子高生を演じるめぐみ、宇宙人と地球人のハーフでどちらにも属し切れないサイリ、存在価値を男で見出し、自分を空っぽだと感じるマイ。彼女たちは理想と現実の乖離に悩みながら、やがて自分らしさを見つけていく。

「他人にはっきり教えてもらって変わるのではなく、他人と接することで変わるきっかけが見えたり、気づけるようにしたかったんです。実際今の自分がいるのは、いろんな出会いの積み重ねによるものだから、その一部を描きたいと思いました」

恥ずかしい以外の何物でもなかったはずの過去の記憶が、大人になった自分を形作る、かけがえのない思い出へと変わることもあるのだ。

「最後はとにかくみんな幸せになってくれ、と思いながら描きました。当時の私に対しても、やっぱり幸せになってほしかったんですよね」

今よりずっと不器用で、窮屈だったあの頃の友や自分を、優しく抱きしめたくなるような作品だ。

『教室の片隅で青春がはじまる』 女子高生の自意識と友情をそれぞれの視点で描くオムニバス。「自分が思い込んでいたマンガの描き方を捨てて、自由帳的に描いた」という絵も必見! KADOKAWA 924円 ©谷口菜津子/KADOKAWA

たにぐち・なつこ マンガ家。著書に『レトルト以上・ごちそう未満! スキマ飯』『彼女と彼氏の明るい未来』など。イラストも数多く手がける。

※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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