少し潤んだような黒目がちの瞳。黙してそこに佇んでいると、深い思案に暮れているよう。しかし話しだすと一転、人懐っこく快活な笑顔をのぞかせ、ときおり自分の発した言葉に大爆笑することも。落ち着いているようなのに子供っぽくて、無邪気だけれど思慮深さも持っていて、とびきりチャーミング。それが森崎ウィンさんだ。

できることを全力でやっていくことで、いずれ恩返しになればな、と。

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――昨年、映画『蜜蜂と遠雷』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞され、いまやドラマに映画に引っ張りだこな印象です。そんな状況をどう捉えていますか。

昨年、コロナ禍で1か月半くらい何もない時期を過ごして、いま仕事をいただけるありがたさを、より感じるようになりました。しかも、いま故郷のミャンマーの情勢が不安定で、向こうにいる家族は明日はどうなるかわからないという状況にあります。それを考えると、いま日本で何不自由なく暮らしていること自体も、当たり前ではないんだなと感じていて…。

――ご自身のSNSでも、ミャンマーで起きたクーデターに関するニュースをシェアしていますね。

最初は悩みました。俳優やアーティストとして活動している僕が、いまこういうニュースを発信することで、そのイメージがついてしまわないか。そのせいで本当に自分が届けたいエンターテインメントのメッセージが届かなくなるのが嫌だったんです。ただずっと前から、故郷に対して自分ができることは何だろうとは考えていたんです。恩返しというか…僕を通じてミャンマーのことを知ってもらうことができたらという気持ちもあって、マネージャーさんに相談して書かせていただきました。

――ご両親ともにミャンマーのかたで、森崎さんも10歳までは向こうで暮らしていたわけで。森崎さんにとって日本で活動するというのは、どういうものですか?

僕がエンターテインメントに出合ったのは日本で、ここで学んで、ここで人前に立つ経験をしてきたので、自分のなかでは日本がホームっていう感じなんです。逆に、映画をきっかけに仕事ではじめてミャンマーに帰ったときは、どこか遠征に来たみたいな感覚でした。どっちも自分にとっては帰る場所なんですけど。

――中2のときにスカウトされて、現在30歳。この世界でやっていこうと腹を括ったタイミングってどのくらいのときですか?

それこそ映画『レディ・プレイヤー1』がきっかけですね。それまでも辞めたいとは思わなかったけれど。この世界って、頑張ったから評価されるっていうわけじゃないじゃないですか。どうしたら陽の当たるところに行けるんだろうって。実際、自分がこの仕事に向いてないんじゃないかと考えた時期もありました。でも映画がクランクアップしたとき、監督が「また現場で会おう」って言ってくれて、この仕事を続けていていいんだと思えたんです。それまで何を頑張ればいいかわからないと思っていたけれど、純粋に目の前のことを誠実にやればいいと思えたし、自信にもなりました。

――出演が決まったとき、プレッシャーとかはありました?

ハリウッドなんて右も左もわからない状態で、感じる何かもなかったです。逆にプレッシャーを感じたのは映画が公開されてからですね。“世界的巨匠が監督の映画のメインキャストのひとり”で、“世界を経験した俳優”。周りが、一体どんなお芝居する子なの? って見てるんじゃないかって勝手に思い込んで、自分で自分を追い込んで苦しめていたんですよね。

――いまは開き直れている?

あるとき気づいたんですけれど、新しい現場に入れば、続編をやらない限りはつねにゼロからの役作りなんですよね。自分についた肩書に見合う人になろうと背伸びするなんて意味がなくて、結局は、努力して一個一個を着実にやって、自分で自分を認めていくしかないのかなって。正直、あの作品に見合うだけの俳優になれているかはわからないけれど、できることを全力でやっていくことで、いずれ恩返しになればなと。

――“できない自分”を認められること自体、すごいことです。

自分がイメージするなりたい大人像を考えたとき、見栄を張る人にはなりたくないなと思ったんです。へんなプライドは持たずに、自分にできないことをやっている人のことを素直にすごいと認めて、学びの姿勢になれる人でいたい。いまこの先のミュージカルに向けて歌稽古中ですが、始めた頃は歌唱指導の先生があまりいろんなことを言わなかったんです。でも僕が「ジャジーなアレンジやフェイクを入れた歌い方が苦手なんで教えてください」と言ったら、そこから指導法がガラッと変わりました。先生は、歌手の僕に対して、どこまで言っていいか迷っていたみたいです。へんなプライドは捨てて、自分から「わからないから教えて」って言ったほうがいいんだなって学んだ出来事です。

森崎ウィンさんが髙橋颯さんとWキャストで主演するミュージカル『ジェイミー』は、8月8日(日)~29日(日)に東京建物Brillia HALLにて上演。主人公・ジェイミーは、ドラァグクイーンを夢見る高校生。本来の“自分らしい”姿でプロムに参加しようとするが周囲の猛反対に遭い…。大阪、愛知公演あり。ホリプロチケットセンター TEL:03・3490・4949

もりさき・うぃん 1990年8月20日生まれ、ミャンマー出身。2008~’20年までダンス&ボーカルユニットの一員として活躍。俳優としても数々の作品に出演し、’18年の映画『レディ・プレイヤー1』で注目を集める。昨年には、MORISAKI WIN名義でリリースした配信シングル「パレード‐PARADE」でメジャーデビュー。

シャツ¥39,600 パンツ¥69,300(共にビューティフルピープル/ビューティフルピープル 渋谷パルコ2F TEL:03・6452・5622) ブレスレット¥58,300(ハリム) リング¥14,300(ミラ) 共にスタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575

※『anan』2021年8月4日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・森田晃嘉 ヘア&メイク・KEIKO インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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