「経営困難になってしまった牧場経営のお話を頂き、昨年8月に栃木県に引っ越しました。殺処分されてしまう馬を引き取り、お客様が乗馬体験や自然に触れるための牧場作りをしています。広大な土地の管理や動物の飼育、そしてもともと働いていた方たちの雇用の確保など、容易ではないところに足を踏み入れたわけですが、ゆかりのない土地に飛び込んだとはいえ一日も寂しい思いや、不安を感じたことはなくて毎日が幸せ。私自身、支援の輪が広がっていくのを目の当たりにできたり、一人でやるよりも大勢が集まった時に発揮される力がどれだけ大きいか、同じ目標を達成できるんだということを知っていたから、新たな仲間が増えてうれしいんです」
ベースは栃木県大田原市での牧場経営で、芸能の仕事をする時は東京へ、留学している子供たちが長期休暇で帰国した時は地元・宮崎で食育を兼ねて農家などを訪問、そして有事の際は各被災地へ足を運び炊き出しなどをする。紗栄子さんの活動拠点は時どきに変わる。
「自分のデュアルライフ(いくつかの拠点を行き来する生活)の中にまた一つ牧場が加わり、そこに守るべき家族が増えたという感じかな。私って、もともと時間や場所に囚われて生きていないんですが、こういう自分に育ててくれたのは両親であり経営者の父。誰にでも平等に接し、地域のボランティア活動にも積極的に参加していた父から学んだのは、短期目標を一つずつクリアしながら長期目標を達成することでした。たとえば牧場内のレストランで食材が必要ならできるだけ自分たちの手で野菜を育てるところから始め、採れた野菜や果物でジャムやドレッシングを作り、これを訪れてくださったお客様に購入いただき、こうやって牧場で働くスタッフのみんなや馬たちが安心して、安全に働いていける環境を守っていく。そうすればお客様もこの商品を選択してくれたことが何に繋がっていくかとてもわかりやすいと思うんです。私自身も口に入れる野菜がどこでどうやって作られたものなのかをわかっていることが安心だし、自分が心地いいことをしているだけで誰かのためにもなっているのって最高。自分の幸せが人の幸せになり、そして人の幸せがまた自分の幸せになるんですよね。芸能活動を始めた10代の頃から決められたレールに乗れるタイプではなく、違うと思ったことには自分が納得しないと首を縦に振れない性格で。当時はその性格がもどかしかったけど、今はそうやって意思を持って生きてこられたことは誇りになっています」
HISTORY
14歳:テレビドラマで女優デビュー。
ドラマ『ドラゴン桜』や映画『NANA』などのヒット作に出演。さらに『学校へ行こう!』などバラエティ番組にも出演し、マルチに活躍。
20歳:結婚。21歳で第一子となる長男を出産。
さらに23歳で次男を出産。子育てに専念すべく芸能活動を控える。
23歳:宮崎県で起こった口蹄疫被害に初めて寄付をする。
家畜伝染病の口蹄疫被害を知り、初めて個人的に義援金を寄付する。その後、毎年の台風被害に遭った農家の販売支援や、養護施設などの支援をボランティアでスタート。
26歳:数々の女性ファッション誌で表紙を務め、アイコン的存在に。
以降、数々の人気女性誌のカバーガールや巻頭グラビアを飾り、ファッションやメイク、自身のライフスタイルなどを公開。多くの同世代女性たちや子育てをするママたちから共感を集める。
32歳:台風19号の被害に支援を呼びかけ話題に。
SNSで寄付金や支援物資を募ったところ、4tトラック15台分もの支援物資が集まりニュースに。
32歳:一般社団法人「Think The DAY」を設立。
有事に備え、被災地に迅速に駆けつけられるようにと、被災者と支援者をつなげるプラットフォームに。
33歳:「NASU FARM VILLAGE」の経営をスタート。
栃木県大田原市に移住し牧場経営主に。敷地では有機野菜を栽培したり、レストラン経営も手掛ける。
さえこ 1986年生まれ、宮崎県出身。2001年にテレビドラマで女優デビュー。タレントとしても活躍し、ファッション誌のモデルとして人気を得る。一般社団法人「Think The DAY」代表理事「NASU FARM VILLAGE」を経営。
ワンピースはスタイリスト私物、エプロンは本人私物(NASU FARM VILLAGE)
撮影で使った野菜やジャム、マグカップ、エプロン等は実際に紗栄子さんが経営する牧場で販売されているもの。立派な葉っぱと鮮やかなオレンジの人参はとってもフレッシュ! 撮影の途中、特製のソースにつけて紗栄子さんが実際に食すシーンも。試食したスタッフもその美味しさに感動でした。
※『anan』2021年1月13日号より。写真・倉本ゴリ(Pygmycompany) スタイリスト・伊東牧子 ヘア&メイク・美舟(SIGNO) 取材、文・若山あや
(by anan編集部)