メンバー同士、いいところをとにかく褒める。それがこのバンドの素晴らしいところです。
“スカ”という音楽ジャンルが今ほど一般的ではなかった、昭和の終わり。夜の渋谷のストリートには、独特のリズムに乗せ管楽器を奏でるスーツの集団がいたそう。それが今年デビュー30周年を迎えた東京スカパラダイスオーケストラ。今やお茶の間でも大人気、平均年齢53歳の日本が誇るダンディたちです。
――まずはデビュー30周年、本当におめでとうございます!
一同:ありがとうございます!!
川上:無我夢中に、明日、明日と進んできて、気がついたら30年経ってたって感じですよね。
谷中:30年間揃いのスーツを着てここまでやってこられたのは、支えてくれる皆さんのおかげです。
GAMO:ホント。いろんなことがあったけれど、メンバーの頑張りだけじゃなくファンの方々、周りのミュージシャンやスタッフに助けられて…。感謝しかないです。
沖:30年変わらないためには、逆にその都度変わっていくというエネルギーも必要なんですよね。それができる力強いメンバーと共にいられる機会に恵まれていることに、心から感謝しています。
NARGO:人々を振り向かせるためにいかに面白いことをやるか、そのストリートで培った精神で30年やってきたのですが、これからもその気持ちを忘れずに、続けていきたいと思います。
北原:いろんな人との出会いがあって、それが、今の活動を支えてくれているんだと思います。皆さま、これからもよろしくお願いいたします(笑)。
――出会いといえば、大森さん、加藤さん、茂木さんは、スカパラが走り出してからメンバーと出会い、加入したわけですが…。
茂木:ファーストアルバムのときから、リスナーとして「もうこれ最高だな」って思ってました。僕はサポートで合流したときほぼ初めてメンバーに会ったんですが、「うわ、本物のスカパラだ」って感じで。迫力があってカッコよくて、怖かったです(笑)。
加藤:僕が18歳のときにスカパラがデビューして、「東京の大人って、こういう人たちのことを言うんだな…」と思ってました。加入前に川上さんと別のバンドで一緒に演奏をしたとき、今みたいなサングラスをかけていて、その似合い方が尋常じゃなくて、僕にはこんなにカッコよくはできないな…と思った記憶があります(笑)。
大森:よく谷中がMCで、「スカパラの奇跡のメンバーを紹介します」って言うんですが、よくこれだけ個性の強い男たちが集まって、なおかつこれだけの年数をやっているな、と。そんなところに入れて、とても嬉しいです。
――デビューしたときに比べると、知名度も人気も、比べものにならないくらい高くなっていますよね。
川上:実は、結成当時のバンマスだったASA-CHANGが立てたバンドのコンセプトは、“お茶の間にスカを!”でした。その意味では、期せずしてそこにたどり着いたのかな、という気はしています。
NARGO:最近、「スカパラの音楽って、なんていうジャンルなんですか?」的なことを言う方がいらっしゃるんですよ。「スカパラの曲って、すぐチキチキいいますね」って。
川上:「スカパラさんの音楽に、必ずツチャツチャツチャツチャってリズムが入ってますけど、どういうことなんですか?」
NARGO:そういう感想を聞くと、“スカ”が垣根なく広がったんだなと、感慨深くなりますね。
――改めて伺いますが、なぜ日本でスカがここまで浸透したんだと思われますか?
加藤:子供から大人、お年寄りまで、スチャスチャのスカのリズムって誰でも踊れるんです。そこにホーンセクションが重なるとなんだか心が高揚して、踊るつもりじゃなかったんだけど、体が勝手に動きだす…みたいなところがスカにはある。さらに僕らはそこに、日本風のメロディだったりいろんなものをミックスしていく。それがスカパラの“トーキョースカ”。
川上:スカは‘60年代にジャマイカで発祥した音楽ですが、もともと雑食性が高い音楽なんですね。ジャマイカ人は、どんな音楽でもスカにできる。ちなみに美空ひばりさんの「リンゴ追分」も、スカにして演奏してたんですよ。
NARGO:同じように僕らも、いろんなものを吸収して、“僕らのスカ”を奏でているわけですが、まだまだ、発展途上だなと。30年やってきましたが、まだいろんな可能性を感じてますね。
――スカパラのターニングポイントとして、ゲストボーカルを迎えてのコラボシリーズがあります。谷中さんが書いた歌詞が加わることで、新たな魅力が輝きました。
GAMO:谷中が携帯電話を手に入れて、そこからみんなに短いポエムを送ってくるようになったんですよ。それが、案外良くて。
谷中:34歳のときに初めて、「めくれたオレンジ」という曲をオリジナル・ラブの田島貴男に歌ってもらうことになりまして。ズブの素人の自分が、素晴らしい歌詞を書く素晴らしいシンガーである田島君に歌詞を提供って、とんでもないことなんですよ。ものすごく緊張して、20パターンくらい歌詞を書いたのを覚えてますね。でもそれがきっかけでスカパラの新しい面が広がっていったのは、すごく光栄です。非常に嬉しい。
――コラボで音楽を創る面白さとは、なんですか?
加藤:どちらかに寄せるのではなく、お互いに魅力を出し合ってどうなるか…。老舗同士のタレの出し合い、みたいな感じです(笑)。
北原:味のブレンドね。加藤 自分の持ち味のいいところを出すと、相手も良いところが出てくる。それがスカパラのコラボの、面白さであり、魅力。
NARGO:相手の持つ世界観と、僕らの持つ世界観。でもせっかく一緒にやるならば、どちらも行ったことがない場所に到達するような音楽が創りたいですね。
――今回のベストアルバムでご一緒したaikoさんとのコラボはいかがでしたか?
加藤:素晴らしかった! aikoさんにとってもコラボで音楽を創るのは初めてだったそうで、お互いすごく興奮しました。出来上がった曲には、嬉しさや楽しさがたくさん詰まっていると思います。
NARGO:楽しすぎて、アー写の撮影のとき、僕がちょっとaikoさんに寄りすぎまして(笑)。
谷中:あ、それ、俺思ってた。
川上:逆に、GAMOさんとの間は空いてるよね。
NARGO:GAMOさん、寄ってよ!(笑)
川上:GAMOさんのせいにしない!(笑)
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デビュー30周年を記念したベストアルバム『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』(カッティング・エッジ)が好評発売中。ジャケットのイラストを手掛けたのは大友克洋! 1998年にエイベックスに移籍後の曲の中から、茂木欣一選曲の全47曲。Blu-ray、DVDにはライブ映像も収録。
写真左から、上段・大森はじめ(パーカッション)、北原雅彦(トロンボーン)、加藤隆志(ギター)。中段・川上つよし(ベース)、谷中敦(バリトンサックス)、沖祐市(キーボード)。下段・NARGO(トランペット)、GAMO(テナーサックス)、茂木欣一(ドラム)。1989年にアナログ盤『東京スカパラダイスオーケストラ』でデビュー。
※『anan』2020年3月25日号より。写真・森山将人(TRIVAL)
(by anan編集部)