革命的な変化
一時代の区切りとなり、新時代が本格始動。
“2020年”について取材をすると、頻繁に“劇的な変化”を表す言葉が聞かれる。
「エンターテインメントの世界でいうと、大容量通信環境5Gのスタートは大きいでしょう。エンタメの在り方が革新的に変わり、自宅でライブ会場にいるような体験ができたり、さまざまな視点からスポーツ観戦を楽しめたりする時代へと舵を切ります」(セレブウォッチャー・さかいもゆるさん)
「音楽業界でも“みんな”でアガれる曲が人気の時代から、主語が“私”になり、個人の想いに心揺さぶられる曲へと回帰。ヒップホップブームもその象徴です。これからはさらに、ジャンルを超えて人々の情緒に訴えかける歌が重要になってきます」(音楽ライター・矢島大地さん)
各所の変化が時代を一新する。
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ジェンダーレス、ボーダーレス
壁はいよいよ消え、個々の心地よさを尊重する時代に。
LGBTQという言葉が日常的に使われるようになったように、ジェンダーの枠組みや定義はより自由なものになりつつある。
「映画やドラマ、本でもLGBTQを描くことが自然になってきています。ただ、繊細な問題でもあり、表現の仕方によっては誰かを傷つけてしまいかねない。そういった感覚の重要性はいよいよ高まります」(さかいさん)
また、国はもちろん、ライフスタイルや年齢の壁もどんどん薄く。
「カップル文化が根強く残る欧米で、最近ビッグスターからも“セルフパートナー”という在り方が支持されています。恋人がいてもいなくても、自分が幸せなら構わない、それをお互いに尊重しようという一歩進んだ個人主義の時代に入ってきているのではないでしょうか」(さかいさん)
コンテクスト
歴史や、文脈への敬意が作品の完成度に表れる。
ボーダーレス化がますます進む時代のヒット作は、さまざまな分野から生まれる。
「今はSNSで熱意や応援を可視化できる時代なので、さまざまな分野で盛り上がっている作品や人物を簡単に知ることができるし、楽しめます。だからこそ、ニッチな分野からでもメジャーヒットが生まれる傾向も」(アニプレックス・高橋祐馬さん)
だからこそ、作り手には、背後の歴史や文脈までのこだわりが求められる。
「より多くの人の心をつかむ作品が生まれるには、その音楽の文脈に対する理解が欠かせません。礎を作ったものや背後の歴史についての理解があるからこそ、解体と再構築が可能になって、今までに聴いたことのないものが生まれる」(矢島さん)
ジェネレーションZ
自分の意思を表現する人に脚光が。
2000年代生まれの“ジェネレーションZ”は、生まれた時からインターネットがある世代。
「まだ10代ですが、アイコンともいえる人物が何人も登場しています。彼らは、自分の意見をちゃんと主張できたり、中身を伴った発言ができる人が多い。物心ついた時にはSNSがあり、習わずとも使いこなしている世代だからでしょう。冷静に社会を見ていて、政治や環境問題への意識も高い。自分事として世の中を見ています」(さかいさん)
それは、これからの時代に求められる資質ともいえる。
「日本のみならず、世界的に社会不安は否めません。政治的な活動や発言、それをチェックする視点はいよいよ厳しくなりそうです」(さかいさん)
格式やお墨付き
“特別”の存在意義が増す。
一瞬で世界に自分を発信でき、一夜にしてスターが生まれることにも、もはや驚きはない昨今。
「だからこそ、逆に本当にひとにぎりの人しか入ることのできない、王室への注目が上昇中。伝統や格式…。秘されている部分が多いからこそどうしようもなく惹かれるのでしょう」(さかいさん)
「YouTubeで番組を持ったり、支持者を得ることだってできる今、“有名人”へのハードルはとても低くなっています。その反動で、マスメディアでのデビューは一層価値が上がっているように感じます。オーディション番組に注目が集まったり、ドラマや映画の出演で脚光を浴びるのはやはりマスによる“お墨付き”があるから。今後、その線引きは、より一層、濃くなっていくのではないでしょうか」(メディア研究者・田島悠来さん)
さかいもゆるさん セレブウォッチャー。海外セレブや恋愛にまつわる記事をメインに執筆。ウェブマガジン「mi‐mollet」で「セレブ胸キュン☆通信」を連載中。
矢島大地さん 『MUSICA』副編集長を経て、現在は編集、ライター、ラジオナビゲーター。これまでに『ヒプノシスRADIO』の番組ナビゲーターも務めた。
高橋祐馬さん アニプレックスの制作プロデューサーで元宣伝マン。劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』やTVアニメ『はたらく細胞』などを担当。
田島悠来さん メディア研究者。ポピュラーカルチャーなどを研究。帝京大学助教。著書に『「アイドル」のメディア史:『明星』とヤングの70年代』が。
※『anan』2020年1月1日‐8日合併号より。取材、文・重信 綾 尹 秀姫 ©Tara Moore
(by anan編集部)