日本では京都が…世界で発生する「オーバーツーリズム」とは?

2019.12.6
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「オーバーツーリズム」です。

観光客にも住民にも心地よい土地にするために。

society

「オーバーツーリズム」とは、観光地が受け入れられないほど多くの観光客がその土地を訪れ、地域住民の生活に影響を及ぼしたり、自然環境や景観を損ねたり、観光客の満足度を低下させてしまう状況をさします。具体的には、渋滞や混雑。大量のゴミやポイ捨て、落書きや器物破損、騒音などのマナー違反。さらには治安の悪化につながることもあります。ホテル代や家賃の高騰、環境悪化により地域住民が住めなくなるケースも起きており、世界中の人気観光地で問題になっています。

これらの対策に、ベネチアやバルセロナでは観光名所で入場規制や高額な入場料を設定し、モルディブでは船や飛行機の便数を減らしてアクセス手段そのものを制限。パラオでは、観光保護制度の誓約書への署名を観光客に義務付けることにしました。

日本でも、すでに京都などはオーバーツーリズムが深刻な問題になっています。2018年に国内外から京都市を訪れた観光客数は約5000万人でした。ホテルは不足しており、中心地では人が歩道からあふれ、混雑により地元住民がバスに乗れない事態も起きています。京都市観光協会は、人を分散させるために、春や秋以外の季節をアピールしたり、ハイシーズンにはAIを使い、エリアごとに時間帯別観光快適度の予測を知らせるサービスを開始。また、「飲食禁止」や「立ち入り禁止」をピクトグラムで示したステッカーを作成し、外国人にもわかりやすいマナー啓発を促しています。

国は、有名な観光都市から少し足を延ばした地方へ観光客を誘い、集中を分散させようとしています。

来年は東京オリンピックが開催され、観光客はさらに増えるでしょう。東京都では空きオフィスや空き家を民泊施設にする取り組みをしたり、開催時期の時差通勤、会社を休みにすることを提唱したりするなど、トラブル回避の準備を進めています。

オーバーツーリズムの最たる害は、「観光客は来るな」という排斥につながることです。異文化対応に慣れておらず、シャイな日本人。「おもてなしの国のはずなのに冷たかった」と思われないよう、注意したいですね。

hori

堀 潤 ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げる。9月、3つ目の新会社「わたしをことばにする研究所」を設立。

※『anan』2019年12月11日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)



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