子どもの頃に見ていた夢は楽しいものが多かった気がするけれど、大人になった今、たまに見るのは大抵、嫌な夢ばかり。また、思ってもいない場所や人が出てきたり、まさか正夢? と思った経験も。
とても個人的であり、ぼんやりした占い的な意味合いで捉えられがちな夢。その夢に大脳生理学や心理学の視点で焦点を当てている松田英子先生によれば、
「私自身、カウンセラーとして夢の話を聞く機会が多いのですが、人は訳もなく夢を見ているというより、夢の中で現実世界の問題を整理したり対処法を見つけ出そうとしていると感じます。たとえネガティブな夢でも、それはよりよく生きていこうと物事に向き合っている証拠かもしれないのです」
夢には必ず、現実世界のその人の考え方や性格、物事への取り組み方が反映されているという。よりよい夢の捉え方を知り、よりよい睡眠に繋げるために、夢に関するその疑問を解き明かしていきましょう。
Q. どうして夢を見るの?
A. 起きているときの情報が脳で処理されているからです。
「夢は自分の頭の中だけで上映されている映画のようなもの。また脳は、私たちが生まれてからこれまでの記憶を膨大な蔵書に収めた図書館のようなものです。その情報はすべて自分の脳の中にあります」
起きているときに入ってくるさまざまな情報を整理すると同時に、脳にストックされている記憶や情動(感情)などが引っ張り出され、組み合わされる。大脳生理学的にはそれが夢、と考えられている。夢はただぼんやり上映されているのではなく、頭の中に詰まったものを処理するため、というのが“夢の情報処理仮説”と呼ばれるもの。
「人は今日より明日、明日より明後日をよりよく生きるために学習していきます。その学習に必要な記憶を一生懸命分類している作業を夢と考えることもできます」
頻繁に使う情報は手近な記憶の棚の上に出しておくから、分類作業中もアクセスしやすい。だから、現実世界でいま気になっている懸案事項が、夢に繋がりやすいともいわれる。
Q. 夢の内容はどうやって決まる?
A. 恋愛、仕事、気にしてること…。寝る前に触れた情報がトリガーに。
「起きているときと寝ているときの脳は連続しているので、夢にはその人の世界観が出てきます。20~30代なら自分に関することがほとんどで、恋愛や仕事の評価に関わることが多いと思います」
40歳以上になると自分のことよりまわりの人間、子ども、親、部下などに関する夢が多くなっていくという。もっと高齢になると自分の子どもではなく、地域の子ども、世界の子どもというように、どんどん世界観が広くなっていくことも。
「夢の内容は寝る直前に見聞きしたことが大きなトリガーになると思います。スマホで話した人、寝る前に見たニュースや映像…。また、明日の仕事を考えながら寝ると遅刻する夢を見たりすることも。ただし、気になる案件が寝る前に解決すれば、その日の夢には出てきません」
ちなみに、遅刻の夢を見る人は、遅れてはいけないというリスク管理の意識が高い人。もしかしたら遅刻魔の人はそういう夢を見ない可能性が。
Q. どうして嫌な夢のほうがよく見る?
A. 幸せな夢より不安な夢が記憶されやすいからです。
嫌な夢は“不安夢”と“悪夢”の2つに大別される。前者は嫌な気持ちがしても起床時間まで寝ていられる夢、後者はあまりの怖さに寝ている途中で起きてしまう夢。起きているときにネガティブな心の状態になると、現実と同様に夢の中での問題整理や処理能力も落ち、限界を超えたときに見るとされる。
「典型的な夢に出てくるテーマと不安夢のそれは大体決まっています。追いかけられる、落ちる、間に合わないなどです。そうしたネガティブな気分のほうが記憶に残りやすく、逆に幸せな夢は記憶に残りにくいのです」
実は、恐怖、怒り、焦りといった夢で抱く感情は、現実のリスクに備えたシミュレーションという考え方もあるという。
「昔であれば追いかけられる夢は動物に襲われたときに備えてのシミュレーション。現代では仕事でミスをしたり上司や部下と対立する夢は、仕事や人間関係をうまく運ぶためのシミュレーションと考えることができます」
Q. せっかくいいところだったのに…。夢の続きは見られる?
A. まどろんで浅い眠りにつけば続きを見られる可能性があります。
とてもいい夢を見ていたのに、一番盛り上がりそうな場面で目が覚めてしまった。そんな経験は誰でもあるはず。続きを見たいと思ったときには、もう一度寝るのがおすすめ。
「パッチリ目を開けて覚醒してしまったら夢の続きを見ることは難しいと思います。でも、まどろんだ状態で浅いノンレム睡眠や再びレム睡眠に陥れば、続きを見られる可能性はあります。ただし、深い眠りについてしまったら次のレム睡眠でまた違う夢を見るので、続きを見たいと思った夢は忘れてしまいます」
二度寝の深入りは禁物。それよりは目を閉じて、いい結末を妄想し、イメージリハーサルをするほうがベターかも。
まつだ・えいこ 東洋大学社会学部社会心理学科教授。心理学の研究者と臨床心理士の両方向から夢に関わる睡眠障害の研究に携わる。著書に『夢と睡眠の心理学』(風間書房)などがある。
※『anan』2019年9月11日号より。イラスト・SANDER STUDIO 取材、文・石飛カノ
(by anan編集部)
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