ホームレスにも!? 『カメ止め』監督・上田慎一郎の人生が波瀾万丈すぎる!

エンタメ
2018.12.05
『カメラを止めるな!』が社会現象になった、話題の映画監督・上田慎一郎さんに、人生の転機を振り返っていただきました。
上田慎一郎

人気スターも出演せず、製作予算は300万円にもかかわらずロングランを続ける『カメラを止めるな!』。アジア圏や欧米の映画ファンもその才能に注目する上田慎一郎監督だが、借金苦に陥ったり、ホームレスになったりと波瀾万丈の人生だった。

――『カメラを止めるな!』は、上田監督にとって、人生の転換期のひとつ?

そうです。高校卒業までを第1章とするなら、24歳までのモラトリアム時期が第2章。映画一筋と決意してからは短編などを作って映画祭を回り、その集大成として作った作品です。今は人生の第3章が終わりを告げ、新たな章に突入する時期です。

――高校時代は演劇部で活躍し、自主映画も撮っていたのに、なぜモラトリアムに?

18歳までは成功体験が積み重なって、「俺は天才や」と過信していました。でも実際はマルチ商法に引っかかったり、自己啓発本にハマってカフェ経営しようと友人たちに金を借りまくって結局頓挫したり。失敗続きで、大きなターニングポイントといえるのが「ベストセラーを出すぞ」と勢い込んで自費出版したSF小説が全く売れなかったこと。社会にボコボコにされてようやく、映画に集中しようと決意しました。

――数々の失敗をブログで愉快に綴っていたのはすごいと思います。

中2の時から日記をつけていて、当時から読者を意識したエンターテインメント精神がありました。日記なんだから、他人に読ませるわけもないのに(笑)。ブログでは日々の出来事や想いなどを毎日のようにアウトプットしていました。迷走していた時代も自分を客観視し、面白おかしく書いていた。辛いことがあってもそれをネタにしたから、僕には辛いことや悲しいことの記憶があまりないんじゃないかな。

――とてもポジティブですよね?

今はバランスがとれましたが、24歳くらいまでは超絶ポジティブ野郎で、痛い人間でした。玄関に“若さと情熱。情熱を超えて行け!”みたいな言葉を貼ってましたから(笑)。自己啓発本を読みまくって、時間を効率的に使う方法を実践したりもしました。そんな僕のポジティブすぎる部分を妻がいい方向に導いてくれたことは大きいですね。やりたいことに反対はしないけれど、別の可能性にも気づかせてくれる。守るべき存在ができたことで、過剰な楽天性とポジティブさのバランスがとれたんです。それに、家に帰れば絶対的な味方がいることが外で戦える力になるんですよ。

上田慎一郎さんの運命が動いた瞬間年表

幼少期:映画漬けの日々。次第に父親のハンディカムで映画を撮るようになる。
小学生時代は「Jリーガーになり、ワールドカップで背番号10をつける」のが夢だった。

17歳:友人と手作りいかだで琵琶湖横断に挑戦するが、遭難して新聞沙汰に。
「なんとかなるさ」で行動した結果、漂流。やりたいことがあるのに死ねるか、と思った。

19歳:映画監督を目指し上京。下北沢で暮らすように。
吉本NSCか映画学校か迷った末に、お笑いは映画のなかでもできると映画の道へGO!

22歳:マルチ商法に足を突っ込んで失敗してしまい、150万円の借金を背負う。
映画一筋で頑張っても結果が出ないのが怖くて、借金まみれの生活に!?

24歳:SF小説『ドーナツの穴の向こう側』を出版。結果的に借金が膨れあがり、映画一本で食べていくことを決意。
「小説家として売れてから映画を作ろう」なんて、近道を探して寄り道ばかりしていた。

26歳:映像製作団体PANPOKOPINAを立ち上げる。以降、10本以上の映画を製作し、国内外で様々な賞を受賞する。
仲間と横一列に並んでもの作りするのが僕のスタイル。今後もこうありたいと思っている。

30歳:3年ほどの交際を経て、映画監督のふくだみゆきさんと結婚。←ターニングポイント
琵琶湖で死にかけた僕を好いてくれた女性。彼女との出会いで痛い人から卒業できた。

34歳:初の劇場長編作『カメラを止めるな!』が大ヒットし、社会現象に。
抱いていたいくつもの小さな夢が、映画のおかげで一気に全部叶ったと感じている。

うえだ・しんいちろう 1984年生まれ、滋賀県出身。『4/猫 ねこぶんのよん』(’15)で監督デビュー。ロングラン上映中の『カメラを止めるな!』(’17)で世界的な評価も獲得。

※『anan』2018年12月12日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) インタビュー、文・山縣みどり

(by anan編集部)


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