江戸の街で人や猫のさまざまな悩みを解決する貫禄たっぷりの猫を描く「差配さん」で話題を呼んだ漫画家・塩川桐子さん。この短編集は’06年~’13年に発表された6作品を収録している。

「『コミック乱』に載せてもらうまでは少女マンガ誌で描かせてもらっていました。『乱』は時代モノばかりのマンガ雑誌なので、ずっと一羽でショボショボ飛んでいた鳥が仲間の群れに入れてもらったようで、ホッとしたのを覚えています」

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表題作の「ワカダンナ」は、猫が好きすぎて捨て猫を放っておけない若旦那と、彼に振り回されるしっかり者(?)の小僧が登場する「差配さん」の番外編ともいえる作品だ。

「私もときどき捨て猫を拾って、もらってくれる人を探します。捨て猫やノラ猫をなくそうと奮闘しているすべての人へ『みんな頑張れー!!』と思って描きました」

江戸でしくじって山陰にやって来たケンカっ早い魚屋のちょっとホラーな一夜を描いた「萩の宿」は、著者が子ども時代に祖母から聞いた実話を昔話風に脚色したそう。

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「『侠(きゃん)』はすれ違ってばかりでどうしても会えない男女を、絵巻物風にコマ割りなしで描けないかな? と思ってスタートしたんですが……描いているうちに今の形になりました。過去の作品を改めて読み返してみると、ヘタなりにいろいろ試行錯誤しているなあ、いろんなテーマに挑戦しようとしているなあ……、と。それなりに頑張ってきたあしあとがちょっと見えて安心しました(笑)」

ほかにも、子どもに交じって手習いをするワケあり女子を描いた「ふきちゃん」や、同じ反物屋に奉公していた男女の恋物語「蛙(かはづ)」など、楽しい話も切ない話もあるのだが、どれも「差配さん」に通じるようなユーモアや優しさが。浮世絵を彷彿とさせる一見すました絵柄から、こうした人間味のある感情が生き生きと発せられるギャップが面白い。

「絵柄は作品に合わせて自然に変わってきたという感じなのですが、せっかく日本髪や着物といった文化を描けるので、丁寧に美しく描けたらいいなと思います。江戸を舞台にした物語で大事にしているのは、季節感かなあ。春の夕暮れのなんか水っぽい感じとか、夕立のにおいとか、時雨の降る音とか……五感にちょっと触れるくらいの季節の気配を描けたら、と思うのですが難しいですね。でも四季を描くのは時代モノの魅力のひとつだと思っています」

人間のみならず、すべての生き物や自然の営みを豊かにとらえた物語は心を柔らかくしてくれる。

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『ワカダンナ』 江戸の市井に生きた人々も、現代人と同じように些細なことで悩んでは、笑ったり泣いたりしていたようで……。悲喜こもごものドラマが詰まった短編集。リイド社 830円

©塩川桐子/リイド社

しおかわ・とうこ 1994年頃から浮世絵風の絵柄のマンガを描き始める。可憐な作風で、江戸を舞台としたハートフル短編を多く手がけている。主な作品に『ふしあな』『差配さん』など。

※『anan』2018年11月7日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)



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