
水生大海『私のせいではありません』
美大時代の同級生の結婚式当日。祝福に満ちたはずの会場のあちこに、不穏な感情が漂っていて…。水生大海さんの『私のせいではありません』は、各話で視点人物をかえながら、意外な展開を見せていくスリリングな連作ミステリーだ。
美大時代の仲間の結婚式で次々と覆っていく真実とは
「最初に、〈どんでん返しのある話〉という依頼をいただきました。元美大生たちを主人公にしたのは、高校時代に美術部にいたのでその世界は興味がありましたし、美大出身の友達から〝アカハラ〞みたいなことの話を聞いたり、卒業展にギャラリーストーカーのような迷惑な客が来るというニュースを見たりして、気になっていたからです」
第一話では二次会の出席者である陽向(ひなた)が、パワハラ気味だった教授の部屋の扉が赤く塗られていたという美大生時代の未解決事件を仲間たちと振り返り、再検証する。第二話は花嫁の瑠璃が主人公。控室ではじめて会う新郎の伯父に挨拶しようとした彼女は愕然とする。目の前の男は、どう見ても、グループ展を開いた頃からパトロン気取りで自分につきまとってきた、いわゆるギャラリーストーカーの男だ。こいつが親戚になるなんて、最悪…!!
「いいのか悪いのか分かりませんが、私はわりと嫌な感じを書くのが上手いとよく言われます(苦笑)」
絶望した瑠璃は咄嗟に婚約破棄を決意する。一方、列席している未緒たちは、その男を見かけ、また違った理由で驚く。その事情とは?各話に意外な展開を盛り込みながら、若い女性たちの将来に関する悩みやライバルでもある友人との関係の微妙さ、さらにはパワハラ、アカハラ、セクハラ被害の悩みが盛り込まれていく。
「社会はどこかで繋がっているので、職業が違っても、起こる感情は近いんじゃないかと思っています」と言うように、美大生に限らず彼女たちの苦悩やしんどさに〈分かる分かる〉と共感する人は多いのでは。また、女性たちが抱くそうした苦悩が、男性になかなか通じないことを巧みな仕掛けで表していて心憎い。最終話では陽向がある決断を下す様子が痛快。まったくの綺麗ごとで終わらせないところもリアルだ。
「ちょっとこれ変じゃない? と思うところに目を向けたい。社会のどこかで生きている人の気持ちを掬い上げていきたいです」
Profile
水生大海
みずき・ひろみ 2008年にばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作を受賞、受賞作を翌年『少女たちの羅針盤』と改題し刊行してデビュー。著作に『最後のページをめくるまで』など。
information
『私のせいではありません』
美大の同級生で、グループ展を開くほど仲良しだった4人。仲間の結婚式当日に明かされる学生時代の謎の真相、そして新たな事件…。新潮社 1870円
anan 2491号(2026年4月8日発売)より

















