撮影当日、はにかみながら、静かにスタジオに入ってきた宮沢氷魚さん。とはいえ、184cmの身長に長い手足、透き通ったブラウンの瞳とくれば、自ずから目立ってしまう。現在、ファッション誌『メンズノンノ』の専属モデルとして活躍しています。歴代のメンノン専属モデルといえば、阿部寛さん、谷原章介さん、坂口健太郎さんなど、人気俳優として活躍する人が多いことで知られていますが、モデルデビューから3年目でドラマ『コウノドリ』で俳優デビューし、続けて1月スタートのドラマ『トドメの接吻』に出演する宮沢さんも、まさに期待の星! 実は元THE BOOMのボーカル・宮沢和史さんのジュニアなんです!
――まずは、この道に進むまでの背景から聞かせてください。
宮沢:実は僕、子供のころ芸能界が嫌いでした。父はツアーに出てしまうと家に戻らないし、運動会にも来てくれなくて、それは全部芸能界のせいだと思ってて。でも高1の時、父のライブで父の歌を聴いた何千人もの人が感動しているのを見て、父を誇らしく思いました。僕も人に影響を与える仕事がしたい、と思ったのを覚えています。
――その後、アメリカの大学に留学されたんですよね。
宮沢:はい。高校時代に、父の知り合いから「モデルやってみない?」と誘われてはいたんですが、いまひとつ芸能界を目指すことに踏み切れなかったので、高校卒業後にアメリカへ。母がアメリカと日本のハーフで、僕は生まれがアメリカだったので、自分が生まれた国を知りたいと思ったんです。そこで初めて親元を離れ、一人で考える時間ができたので、この先自分は何がしたいんだろうと真剣に考えて、やっぱり芸能界に入りたいと思いました。
――音楽の道を考えたことは?
宮沢:僕、あまり歌が上手くなくて…(笑)。お父さんが歌手だから上手いでしょ、ってよく言われるんですけどね。音域が狭すぎるのか、サビの高い声が全く出ないんです。
――では、名曲「島唄」は…。
宮沢:Aメロまでしか声が出ません!(笑) それで、いろいろネットで調べていたら、当時新人モデルを募集していた今の事務所を見つけて、履歴書をフェデックスの速達で送りました。A4サイズで70ドルもしてびっくりしましたけど。でも、国内郵便が多い中、海外からの郵便物はすごく目立ってたみたいで、すぐに目に留めてもらえてラッキーでした。その後、大学2年の終わりに日本の大学に編入したので、そのタイミングで数回面接をして、事務所に入りました。
――最初からモデル志望だったんですか?
宮沢:俳優に一番興味があったんですが、当時は若かったので、モデルもタレントも何でもやりたかったんです。事務所に入ったら仕事がもらえると勝手に思っていたんですが、甘かったですね。毎週3~4回、オーディションを受けては落ちての繰り返しで、一回も受かったことがなくて。そんな時、メンノンのオーディションがあると知って即エントリーしました。というのも、留学時代に日本が恋しくて日本の雑誌をよく読んでいたんですが、メンノンもそのひとつで。でもまさか、僕が専属モデルになれるとは思わなかったし、初めて受かったオーディションがメンノンだなんてうれしくて、事務所から電話で合格を知らされた時、電話を切ってからめっちゃ跳びはねました。
――その長身でめっちゃ跳びはねたら、天井に頭ぶつけそうですね。
宮沢:あははは。でもとにかくうれしくて、実家の2階から1階までダッシュで下りて両親に報告したら、すごく喜んでくれました。当時、同じくメンノンモデルの坂口(健太郎)くんが映画やテレビに出ることが多くなっていて、僕もいつかは俳優になるという夢が叶うかも、という希望も見えて。
――その夢が、わりと早く叶うなんて、すごいですね! でも、ご両親が有名人、というのはやはりプレッシャーもありますか?
宮沢:ジュニアならではの苦悩もあるんですよ。最初から期待の目で見られているから、できなかった時の相手の落胆ぶりを見ると悔しいし、期待に応えないと、という想いは子供のころからいつもありました。でも、モデルを始めて2年間で、最初は怖かったカメラの前に堂々と立てるようになったし、自信もついた。そして、モデルで培った技術はすべて、俳優業に役立つこともわかって。
――俳優デビュー作が人気ドラマ『コウノドリ』でしたね。
宮沢:はい。ただ、主演の綾野剛さんはじめ吉田羊さん、先輩の坂口くん、星野源さん、大森南朋さんと、大先輩から今をときめく方々までが集結していたし、しかも前作があるから、すでにキャストやスタッフのチームワークが出来上がっていました。そこに芝居経験ゼロで入っていくのは怖かったですね。それで、父も昔ドラマに出演したことがあったので相談してみたら、「今失うものはなにもないんだから、全力で堂々とやれば周りが必ず助けてくれる」って言われて、励みになりました。それに、現場ではみなさんがすごくあったかく迎えてくれて、感動しました。
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