3月までオンエアされていた『山田孝之のカンヌ映画祭』(現在、DVD発売中)ってドキュメンタリー…っていうかドラマ。見ていた人いるかしら。今回紹介する『映画 山田孝之3D』は、そのドラマをきっかけに、山田さんの脳内を3D映像と摩訶不思議な言葉でつづった珍品なんだけど、ドラマをちょっとでも知っておかないと「なんなの、これ…」ということになりかねない危険作でもあるの(なりかねないどころか、知ってても「はぁ?」って言う可能性が高いんだけど)。
“~カンヌ映画祭”は文字通り、山田さんが「カンヌ映画祭の最高賞パルム・ドールをとるための映画を作ろう! オー!」と、唐突に映画プロデューサー宣言し、四苦八苦しながら映画作りに奔走する姿をとらえた作品だったんだけど、これがもうホントに無茶苦茶。パルム・ドールがどういうもんかは分かってるけど、カンヌ映画祭への参加方法はもちろん、カンヌ映画祭にどうやって出品するかとか、そもそも映画製作の手順がどうとか、そういうことを分からずに暗中模索し始めるところから始まるのね。そんな勢いだけでスタートしている話なのに、巻きこまれる面々が豪華なことも話題になりました。レギュラーで出ていたのが、山田さんプロデュース映画でメガホンをとることになった山下敦弘監督(『苦役列車』など)、主演女優を務める芦田愛菜さん。ゲスト枠というか、本当に巻きこまれちゃった側の人たちも、カンヌ映画祭の常連・河瀬直美監督や、出演候補でやってきた村上淳さんや長澤まさみさんなどなど。しかも、オーディションや出資などのシーンでは、一般人まで巻きこんでしまっていて、見ている方としては「カンヌ以前に、そもそも大丈夫なの、この企画?」って思わざるを得ない展開の連続。じつは筆者もこれに巻きこまれておりまして(ドラマのエピソード2に出ちゃってます)。某イベントにいらした山田さんが「映画プロデューサーやってカンヌ映画祭行くんです」って言いつつ、その映画のパイロット映像の講評をしているあたし…。もーね、ポカーンな気分なわけですよ(しかもこのときの撮影がテレビドラマになることすら聞いていなかった)。動機がわからないわ、映像も意味不明だわ、なのに山田さんをはじめ関わる人が豪華すぎるわ。ある意味、うさんくささプンプンさせてたんだけど、ドラマを見てとりあえず納得。フェイク・ドキュメンタリーだったのね…、と。
そこに気づけば、とてつもなくおもしろかった“~カンヌ映画祭”。ドラマを見ていない人のために、結末まで言及することは避けますが、初志貫徹してカンヌ映画祭への「出品」は果たしたんですよ。それがこの“~3D”ってわけ。
なんでもともと撮ろうとしていた芦田さん主演の怖そうな映画『穢(けがれ)の森』(親を殺す少女の話らしい)じゃなくなったのか、なんで監督が2人もいるのかはドラマをチェックしていただくとして…。この映画を一言で言うなら「珍品」。おもしろい、おもしろくない、娯楽かアートか、っていう枠からすらはみ出しちゃってるの! 言うなれば近年の山田さんの演技同様に、観ている人を煙に巻くっていう感じ? この映像体験は劇場で体感するより他ないわ。
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