知らないと恥ずかしい!【ビジネスマナー】元社長秘書が教える「エレベーターに乗るときの常識・非常識」

文・能美黎子 — 2023.10.29 — Page 1/2
エレベーターは、知らない人同士が共有する狭い空間であり、配慮が必要な場です。上司や取引先相手と乗るときは、どのようなマナーが必要なのでしょうか。そもそもエレベーター内には「上座」や「下座」があるのでしょうか。今さら聞けない身近なマナーを、秘書歴15年でマナーに詳しい、能美黎子さんが説明します。

「エレベーターに上司取引先と乗るときの立ち位置って?」

ビジネスマナー マナー エレベーター内のマナー 上座 下座

【元社長秘書のマナー講座】vol. 8


オフィスや訪問先などで利用することが多いエレベーターですが、上司や取引先と一緒に乗るとき、立ち位置やマナーについて考えたことがありますか? 実際に、上司と一緒に乗った際の対応に戸惑ったかたもいらっしゃるのではないでしょうか。そもそも、エレベーターに乗るときのマナーがあるの? と疑問に思っているかたも多いと思います。実は、エレベーターにも上座・下座や乗り降りする際の基本マナーが存在します。今回は、上司や取引先に失礼な印象を与えないよう、エレベーターでのビジネスマナーについてご紹介をします。ぜひ、チェックしてみてくださいね。

1. 乗降時の基本マナー

エレベーターを乗降する際の基本マナーは、迎える側が「先乗り・後降り」となります。そして、操作盤の操作は基本的に下座の人が行います。ただし、エレベーターを使用する上で最も大切なのは、目的階まで安全に相手を送り届けることです。基本マナーはありますが、誰と乗るのか、どのような状況なのかによって異なりますので臨機応変に行動することが大事となります。

乗るときの順番

「先乗り・後降り」が基本ですが、乗降時の状況により順番が変わるためシーン別にご紹介をします。

上司・取引先相手が1人の場合
到着したエレベーターが無人の場合には、エレベーターの扉を押さえて上司や取引先相手を先に乗せます。乗り終えたら、操作パネルの前に立ち操作をしましょう。

上司や取引先相手が複数人いる場合
到着したエレベーターが無人の場合には、「お先に失礼致します」と声をかけた上で先に乗り込み、操作パネルの前に立ち「開」ボタンで扉が閉まらないように操作しましょう。乗っていただく際にドアに挟まれてしまわないように、もう片方の手でドアを押さえておくといいでしょう。

操作パネルの前にすでに乗っている人がいる場合

既に操作盤の前に誰かがいる場合は、エレベーターホール側のボタンを押し、上司や取引先相手を「お先にどうぞ」と声をかけ誘導し先に乗っていただきます。自分は後から乗りましょう。

降りるときの順番

上司・取引先相手が1人の場合

目的階に到着したら、上司や取引先相手から先に降りてもらいます。自分は操作盤の前に立って、扉が閉まらないように「開き」ボタンを押しておきましょう。ただし、これはあくまでも、基本マナーにすぎません。エレベーター内が混雑している場合には、臨機応変に対応する必要があります。混雑した状況で自分が扉の前に乗っているにもかかわらず、その後ろにいる上司やお客様から降りてもらうのは難しい状況ですので、その場に合わせて対応してくださいね。

まだエレベーター内に人が残っている場合

まだエレベーター内に人が残っている場合は、「お先に失礼します」と一声掛けて降りましょう。特に、操作盤の前で扉の開閉ボタンを押してくれている人がいた場合には「ありがとうございます」と感謝の言葉を伝えましょう。混雑していた場合やお礼が伝えづらい場合には、軽く会釈しながら降りるといいでしょう。

2. エレベーターの上座と下座

基本ルールとしては、乗る際にエレベーターに向かって左が上座、右が下座となるので覚えておきましょう。エレベーターの上座は「左奥」、下座は「操作盤の前」となります。
特に注意しておきたいのが、操作盤が1か所の場合と2か所の場合によって下座の位置が変動することです。

操作盤が1か所の場合

左側に操作盤がある場合は、向かって「左奥」が上座、操作盤の前の「左手前」が下座となります。5名で乗車した場合、1番目の上座が左奥、2番目が右奥、3番目が右手前、4番目がドアの前、5番目の下座が左手前の順番となります。

操作盤が2か所の場合

操作盤が2か所ある場合は、向かって「左奥」が上座、下座は「右手前の操作盤」となります。5名で乗車した場合、1番目の上座が左奥、2番目が右奥、3番目が左手前、4番目がドアの前、5番目の下座が右手前の順番となります。

3. エレベーターの中での会話に要注意!

エレベーターの中では、基本的に私語は慎みます。特に、第三者が同乗しているときには気をつけてください。同乗しているかたは、もしかしたらビジネス上どこかで縁があり、話の内容が何らかのトラブルの原因になる可能性があります。狭い空間では、会話の内容は意図せずとも同乗者の耳に入ってしまうため、取引先の相手に関することや仕事の話をすることは避けましょう。

おわりに

知らない人同士が共有する狭いスペースとなるため、お互いが気持ちよく過ごすためにも配慮し合うことが大切です。多くの方が乗り降りするので、上座と下座を必ず守らなければならないわけではありません。混み合っている場合は、乗り合わせた相手を思い遣る気持ちと譲り合う行動が大切です。基本的なマナーを踏まえたうえで、状況に合わせたマナーある行動を心がけましょう。

<筆者情報>
ライター:能美黎子
大学卒業後、新卒にて最大手保険会社にて約7年秘書の経験を経て、ITコンサル企業の社長秘書に転職。その後、数社の社長秘書を経験し秘書歴約15年となる。秘書検定準1級を取得。
今までの経験を活かし、接遇や礼儀作法、マナーなど“品格”を大事にした執筆作業を行なっている。


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