知らないと恥ずかしい!【ビジネスマナー】元社長秘書が教える「名刺交換の基本とNG行動」

文・能美黎子 — 2023.10.9 — Page 1/2
ビジネスシーンで、初対面の人と交わす最初のあいさつとなるのが名刺交換です。今さら聞けない名刺交換の際のマナーを、秘書歴15年でマナーに詳しい、能美黎子さんが説明します。

名刺をお渡しするときのマナーと会話

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【元社長秘書のマナー講座】vol. 5


ビジネスの基本でもある名刺交換のマナー。コロナ禍も落ち着き、ビジネスシーンでもオンライン商談から対面で話すオフラインの機会が増えたのではないでしょうか? 名刺交換は、初対面の人と交わす最初のあいさつとなります。名刺の扱い方次第では、第一印象を左右させてしまうこともある大事な場です。些細な一つひとつの所作が相手に好印象を与えるきっかけにもなりますので、今回は正しい名刺交換の基本的なマナーやその際に相手に好印象を与える会話について解説します。品のある所作を身につけて、相手とのコミュニケーションを楽しんでみてくださいね。

名刺の基本的な手順

名刺の準備

相手をお待たせしてしまっては心象が良くないため、名刺交換がスムーズに行えるよう事前準備を行いましょう。

1. 名刺入れを取りやすい場所に準備する
2. 名刺入れからすぐに取り出せるようにする
3. 折れやシワのある汚れた名刺がないか事前確認をしておく

鞄や胸のポケットなど出し入れしやすい場所に準備をしておきます。相手とすぐに名刺交換ができるよう名刺入れを手元に用意しておき、相手の姿が見えたタイミングですぐに取り出せるようにしておくと良いでしょう。折れやシワのある汚れた名刺を使うのは絶対にNGのため、確認を事前にしておきましょう。

名刺の差し出し方

差し出す際の注意点は3つです。

1. 立って行う
2. 机の上では行わない
3. 差し出す向きと高さに注意

名刺交換をする際は、必ず立って行います。また机を挟んだ会議室の場合でも、机の横に移動してから相手の正面に立ち、交換をするのがマナーです。もし、会議室が狭く横に立てない場合には、「机の上から失礼いたします」と一言添えてから行いましょう。名刺を差し出すときは、両手で差し出すのがマナーです。高さは胸の位置で、相手に文字が読めるよう正面を向けて、自分の社名と氏名を名乗りながら差し出します。軽くお辞儀をすることも忘れないようにしましょう。相手が目上のかたの場合には、相手が差し出した名刺の高さよりも少し低い位置で差し出すことで、敬意を表現することができますので意識して行いましょう。複数人の場合には、役職が目上のかたから順番に交換をします。

名刺の受け取り方

受け取る際の注意点は3つです。

1. 両手で受け取るのが基本。同時交換の場合には、自分の名刺を右手で渡し、左手で受け取る。
2. ロゴや氏名に指がかからないようにする。
3. 役職や名前の呼び方を確認する。

名刺を受け取るときは、渡すときと同様に両手で受け取るのがマナーです。必ず「頂戴いたします」と一言添えましょう。受け取った後は、すぐに右手を添え胸の高さの位置でキープをします。その際に、先方の役職や、名前の読み方などを確認しましょう。

名刺交換後の扱い方

名刺交換後、名刺入れにすぐにしまうのはNGです。その後の扱い方についてマナーがありますので注意しましょう。

1. テーブルに置く場合は、自分の左上側に置く
2. 複数の名刺を重ねて置くのはNG
3. 名刺の並べ方に注意(以下詳細)

商談などの場合には、テーブルに置くのが基本的なマナーとなります。一人と名刺交換をした場合は、自分の席の左上側に名刺入れを座布団の役割として置き、その上に名刺を載せます。複数人と名刺交換をした場合は、最も役職の高い方の名刺を名刺入れの上に置き、役職の高い順にテーブルの上に一列に横に並べるのが一般的となります。役職の判断が付かない場合には、相手が座っている座席順に横に並べます。その場合、名刺入れは列の一番右下に置きましょう。注意点としては、名刺入れの上に重ねて置かないように気をつけましょう。人数が多い場合には、全ての名刺をテーブルの上に並べて置いても良いとされていますが、資料を机上に広げなければいけず名刺の上に重なりそうな時は、「汚してしまうといけないのでしまわせていただきます」と一言添えて、名刺入れにしまいましょう。名刺をしまうタイミングは、その場の雰囲気によって判断しますが基本的に商談後となります。

名刺交換の際の上手な会話力

名刺交換をした際に、上手くコミュニケーションをとることで相手に好印象を与え、覚えてもらうことができます。交換をするだけではなく、コミュニケーションの場として活用してみてくださいね。

プラスの一言を添える例文

会えて嬉しい一言や、相手を褒める言葉、名刺交換で気になったことを聞いてみたりと会話を広げてみましょう。相手のかたの事前リサーチをしてその場で質問をしてみるのもおすすめです。

「今までお電話でのやり取りでしたので、本日は直接お会いでき大変嬉しいです」
「本日お会いできるのを楽しみにしておりました」
「素敵なお名前ですね」
「笑顔が素敵ですね」
「会社のロゴが珍しいですね! どのような意味があるのですか?」

名刺を忘れてしまった場合の対処法

「名刺を切らしておりまして」と言おう!

名刺を忘れてしまった場合、正直に「忘れてしまいました」と伝えるのは相手を不快にさせてしまう可能性があります。正直に伝えることは悪いことではありませんが、この場合には「名刺を切らしておりまして」とお詫びの一言を添えて伝えましょう。後日、お詫びの手紙とともに名刺を郵送するか、資料などを送る際に一緒に送ると相手との信頼関係が向上しますので、アフターケアを心がけてみてくださいね。

まとめ

基本的なマナーはありますが、その状況に応じた臨機応変な対応も必要となります。相手を思いやる気持ちを忘れずに相手の立場に立った行動を心がけてみてください。名刺交換の場は、見方を変えるとコミュニケーションや顔を覚えてもらえるチャンスの場です。一つひとつの行動には意味があることを意識しながら、所作を大事にした品格のあるマナーを身につけましょう。

<筆者情報>
ライター:能美黎子
大学卒業後、新卒にて最大手保険会社にて約7年秘書の経験を経て、ITコンサル企業の社長秘書に転職。その後、数社の社長秘書を経験し秘書歴約15年となる。秘書検定準1級を取得。
今までの経験を活かし、接遇や礼儀作法、マナーなど“品格”を大事にした執筆作業を行なっている。


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