ビジネスチャットとメール、使い分けの正解は? 基本のデジタルマナー6選

2023.1.12
日常生活の様々なシーンで、デジタルでのコミュニケーションをとる機会が増えた。しかしまだまだ過渡期で、戸惑うことも多い。そこで、身近で起こりがちなお悩みを取り上げて、識者と共にスマートな解決策を探ります。

心地よい距離感と、スマートなやり取りが肝。

この数年でワークスタイルが大きく変化し、デジタル上の様々なツールを使ったデジタルコミュニケーションが普及。「便利さゆえに一気に浸透したものの、いまだ手探り状態」だと話すのは、SNSカウンセラーの浮世満理子さん。「特にビジネスにおいては、年代によってギャップがあったり、業界や職種によっても異なる部分が大きい。だからこそできるだけ誤解やトラブルを生まないように、自分だけではなく相手も心地よいと思えるような、適度な距離感を保つことを心がけるべきです」

その上で、“ストレート・フラット・共感”の3つが、デジタルコミュニケーションの新常識のキーワードになると、ディレクトリジャパン代表の西原勇介さん。

「従来のビジネスマナーは、リアルの場を想定しているものばかりでしたが、いったんこれまでの常識は置いておき、デジタルならではの新しい感覚を持つべき。そこで意識したいのが、短文で伝える“ストレート”、どんな立場であっても対等な関係性を築く“フラット”、感動やわくわくを伝える“共感”の3つ。これらがデジタルグローバル社会の基本となり、円滑なデジタルコミュニケーションに直結すると思います」

デジタルコミュニケーションマナー

仕事上のデジタルコミュニケーションで用いられることが多いビジネスチャットとオンライン会議。この2つのツールを上手く活用していくにあたり、知っておきたい新常識とは?

お悩み1
ビジネスチャットとメールは使い分けたほうがいいんですか?
→チャットは即時性、メールは記録用

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情報を正しく管理するには使い分けは必要不可欠。
タスクやスケジュールを一元化でき、気軽に情報共有ができることから、ビジネスチャットの利便性が高まっている。しかし、全てのやり取りをチャットで行うのは避けるべき。

「チャットは即時性の高さが魅力ですが、あとからメッセージの編集や削除ができるので、請求書や発注書、仕様書など重要な書類のやり取りには不向き。だからエビデンスとして残す必要がある重要事項の連絡は、送信時刻や宛名がしっかりと残り、電子記録として法的効力を持つメールが妥当です」(西原さん)

お悩み2
オンライン会議で画面OFFや音声のミュートってマナー違反…?
→社内のオンライン会議はOFFでもOK

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プロフィールアイコンを表示するのも手!
いまだに話題に上ることが多いオンライン会議の画面OFF・マイクミュート問題。

「社外の方なら基本的にどちらもONがマナー。ただ毎日連絡を取り合うような社内チームなら一度話し合いの場を設け、オンライン会議のルールを決めておくと、ストレスがなくなります。ただし毎回完全にOFFにしてしまうと、参加意欲がないように思われるので、画面に写真などプロフィールアイコンが表示されるように設定しておくと、存在感を出すことができます」(西原さん)

お悩み3
ビジネスチャットの利用に消極的なキャリア世代とのコミュニケーションのとり方は?
→誘い水をかけて意識の変革を

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気軽なチャンネルに誘導し、参加しやすい空気を作る。
「チャットを使いたがらない人は、単純に使ったことがなく、知らない・わからないという不安があるから。だからきっかけを作ってあげることが大切。おすすめは、送別会など、社内のイベントのチャンネルを立てて招待してみること。『気軽に意見を共有したいので、参加してください』と誘ってみれば、40~50代のキャリアパーソン世代も重い腰を上げるかもしれません」(西原さん)

あるいは、顧客や取引先が希望しているなど、第三者を使って誘導するのも有効。

お悩み4
ビジネスチャットって、メールと同じように文章を書いたほうがいいんですか?
→140字、5行までで簡潔に伝えよう

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移動中も返信しやすいよう文章は極限まで短くすべき。
リモートワークやモバイルワークが普及し、ビジネスにおける利用デバイスはPCだけでなく、スマホやタブレットがスタンダードに。

「特にチャットはスマホなどの小さな画面で見られることを念頭に置いて、情報をひと目でキャッチできるように、いかに短く、簡潔で、明瞭かということが重要に。スマホで瞬時に理解できるテキストは、ツイッターの文字数制限でもある全角140字以内。改行するなら5行までにとどめることを意識すると、相手に伝わりやすくなります」(西原さん)

お悩み5
プロジェクトを円滑に進めるために、最初にしたほうがいいことはありますか?
→既読スルー防止にはスタンプの提案を

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過渡期だからこそ積極的に意見を述べてルール決めを。
最初にある程度ルールを決めておくと、トラブルも減ってストレスフリーに。

「たとえば即時性が求められるチャットは、スタンプでとりあえず反応を示すと、既読スルーを避けることができます。スタンプもたくさんあるので、こういうケースはこれを使うなど、4~5個を厳選して、チーム全員で共通言語にしておくと便利です」(西原さん)

デジタルコミュニケーションマナーがしっかり決まっていない段階だからこそ、ルールを作っていくために様々な提案をしていこう。

お悩み6
プライベートのSNSアカウントに得意先や上司からリクエストが…
→相手にせず反応しないが一番の拒否

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無理に受け入れないことが、心地よい距離を保つ秘訣。
いまや仕事とプライベートでアカウントを分けるのは当然なので、承認する必要なし。

「仕事の関係者と、プライベートでまで繋がりたくないなら、リクエストが来ても、そのまま放置しておきましょう。もし後日、『どうして承認してくれないの?』と問われても、『いまだにSNSの使い方がよくわかっていなくて気づきませんでした…』と、デジタル音痴を装って切り抜けてみて。それ以上は相手も追及してこないと思うので、関係が悪化する心配もありません」(浮世さん)

浮世満理子さん SNSカウンセラー。全国SNSカウンセリング協議会常務理事、全国心理業連合会代表理事。『カウンセラーが悩み解決! SNSコミュニケーション』(日本能率協会マネジメントセンター)など、著書多数。

西原勇介さん ディレクトリジャパン代表。海外の開発チームとシステムを作り上げるオフショア開発会社を経営。著書に『それでは伝わらない! ビジネスコミュニケーション新常識 デジタルグローバルな作法は若者に学べ』(日経BP)。

※『anan』2023年1月18日号より。イラスト・福田玲子 取材、文・鈴木恵美

(by anan編集部)