月城かなと「いけるところまで自分を変えていきたい」 宝塚退団後、変化する日々の中で思うこと

スター🐼
2024.11.17

今年7月に宝塚歌劇団を退団した元月組トップスターの月城かなとさん。舞台姿の美しさと華、繊細で深い演技と歌で、厚みのある舞台を創ってきた。退団後の活躍が期待される今、変化する日々の中で思うこととは。

ふわりと柔らかな空気を纏って現れた月城かなとさんに、思わず目を奪われた。もとより美しい人ではあるけれど、どこかそこに伸びやかさも感じさせ、今の穏やかな日々が垣間見える。

「宝塚歌劇団の在団中は、ずっと同じ組のメンバーと作品を作っていくので、できるだけ視野を広く持つように意識していたし、自分の中の変化にも敏感でいた気がします。それが退団してからはこれまでと違うところにも自然に目が向くようになり、日々些細な発見の連続です。最近では、学生時代によく利用していた東急東横線が横浜中華街まで繋がったばかりか副都心線にも乗り入れしていることを知って、遠いと思っていたけれど時間はかかるかもしれないけれど簡単に行けるんだということに気づいたのは大きかったです」

公演と稽古に追われる日々だったのが、時間の使い方も大きく変化した。

「自分で選んでなんでもできるからこそ、その時間を何に使うか行動力が試されている気がします。今の自分に必要なことややりたいことをきちんと考えて選べるうえ、興味のあることに使える時間もあるのはありがたいです。宝塚にいるときは、いかに家での時間を充実させるかを考えていましたけれど、東京はちょっと歩けばなんでもあるので、じゃあちょっと歩いて行ってみようかと思える。この間は上野に行って、美術館とか博物館とか、一日中いろんなものを見て歩きました」

そんな日々の中、事務所に所属し芸能活動を続けることを発表した。

「そもそも宝塚に入ったのも、もちろん憧れもありましたが、人とは違う…自分とは別の人間になったり、自分では想像もつかないことを役として経験してみたいという気持ちがあったんですね。実際入団して、舞台を通じてさまざまな人と関わったり、役としていろんなことを経験する中で、自分の視野が広がったり、自分の引き出しが増えていくこの仕事がいいなと思うようになりました。だから今、こういうジャンルの仕事がやりたいとか、こういう役がやりたいという具体的な目標があるわけではないんです。ただこの先生きていく中で、なるべくたくさんの人に会いたいし、いけるところまで自分を変えていきたいと思っています」

今後は、ここまで追求してきた男役のスキルとは違うものを求められるはずだ。「だから時間がかかると思っているんですよね」と、卑下するでもなく淡々としたトーンで続ける。

「世界が広がればやり方もいろいろ違うでしょうから、それをイチから勉強するのに時間がかかるのは承知の上。今に至るまでに宝塚に入ってから16年ぐらいかかっているので、新しい世界でこう動くのが一番いいと判断できるようになるまでに同じくらいの時間がかかるだろうと考えています」

これまでトップスターという立場で組、そして宝塚という看板を背負ってきた。それらを下ろした今、仕事への向かい方に変化はあるのだろうか。

「以前は、仕事の悩みがそのまま人生の悩みみたいな感じだったんですよね。でも自分を取り巻く世界が広がって、仕事とオフを切り替えていいんだって思うようになりました。一方で、そこが一緒だったからこそ、すべての力を注げていたというのもあるんです。稽古場に行けば毎日同じ人たちと顔を合わせるわけで、だからこそ人の変化に敏感に気づけたりもしましたから。でも今、切り替えができるようになったからこそ、仕事という限られた時間に会う方のことをより知りたいと思うし、瞬間瞬間に全力で向き合っていかなくてはとも思う。そういう意味でこれまで以上に仕事に貪欲になれている気がしてありがたいです」

新人公演(若手の育成のために入団7年目までのメンバーでおこなう特別公演)を卒業してすぐの頃の月城さんにインタビューしたことがある。新人公演で複数回主演するなど、当時すでに注目されていたが、周囲から向けられる期待に恐縮し戸惑っているようにも見えた。その後、見事に理想的なトップスター像を築き上げたのは誰もが知るところだが、その立場を経験して見えたものとは何だったのだろう。

「一番上の立場になったことで、周りが俯瞰できるようになったことはよかったかなと思います。下級生のときは自分のことに必死で、他の人が何を考えているのか想像しきれていませんでした。でも、この学年だとこんなことを感じているのかなとか、そのときの状況を見て誰がどんなことを思うかが何となくわかるようになって、最短で全員が心地よくいられるにはどうしたらいいかを考えられるようになりました。それは今お仕事をするうえでも役に立っています」

退団後初の舞台は、自身のソロコンサート「de ja Vu」。

「男役を卒業し、私という人間がどんどん変わっていくその過程を楽しんでいただく場になればと思って、できるだけ早い段階で開催したかったんです。根本的な中身は変わらないですが、時間ができて些細な日常に目が向くようになって、もしかしたら歌うときに感じることも変わってくるかもしれない。宝塚時代の曲も少し違った気持ちで歌うのかもしれない。私自身も楽しみですし、それを一緒に感じていただけたらと思っています」

PROFILE プロフィール

月城かなと

つきしろ・かなと 1990年12月31日生まれ、神奈川県出身。2009年に宝塚歌劇団に入団し雪組に配属。美しい舞台姿と丁寧な芝居、安定感のある歌の実力で早くから注目を集める。’17年に月組に組替えし、’21年にトップスターに就任。今年7月7日に退団。

INFORMATION インフォメーション

月城かなと 1st Concert「de ja Vu」

11月21日(木)~24日(日)大阪・梅田芸術劇場メインホール、11月29日(金)~12月1日(日)神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホール 構成・演出・振付/港ゆりか 出演/月城かなとほか スペシャルゲスト/横田明紀男(ジャズギタリスト・大阪公演のみ)、川井郁子(ヴァイオリニスト、作曲家・神奈川公演のみ) 11月30日(土)16:30公演、12月1日(日)12:30公演はライブ配信あり(30日はアフタートークショー付き、1日は大千穐楽) 視聴券各4500円、公演プログラム郵送サービス付き各7000円(送料別途) 11月30日(土)16:30公演は全国映画館でライブビューイングあり 全席指定5200円 

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画像1枚目・ジャケット¥198,000 シャツ¥121,000 パンツ¥89,100(以上コート/メゾン・ディセット TEL:03・3470・2100 イヤカフ¥94,600 ネックレス¥350,900 リング、右手¥363,000 左手人差し指¥154,000 左手中指¥451,000(以上ジョージ ジェンセン/ジョージ ジェンセン ジャパン TEL:0120・637・146)

画像2枚目・コート¥633,600 ジャンプスーツ 参考価格¥575,300 タートルネック¥124,300 イヤカフ¥220,000 バングル¥75,900 右手のダブルリング¥56,100 左手のリング、人差し指¥38,500 中指¥44,000(以上ジョージ ジェンセン/ジョージ ジェンセンジャパン)

写真・樽木優美子 スタイリスト・青木千加子 ヘア&メイク・山本浩未(Steam.) 構成、文・望月リサ

anan 2422号(2024年11月13日発売)より

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