
資源の消費量を抑えたり、SDGsの達成に効果的な対策として注目を集めている「アップサイクル」を深掘り。話題のプロダクトの紹介から私たちが今できることを指南!
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最近よく耳にするようになった「アップサイクル」
その本質的な意味から具体的な手法などをレクチャーしてくれるのは、高校教諭として2011年からエシカル教育をスタートし、授業の一環としてアップサイクル実習を行う、お茶の水女子大学附属高等学校教諭の葭内ありささん。
お話を伺った方
Profile
葭内ありさ
よしうち・ありさ お茶の水女子大学附属高等学校教諭、同大学非常勤講師。博士(社会科学)。家庭科でサステナブル、サイエンスを題材とした授業づくりや、国内外のエシカル消費の研究・啓発に取り組む。
「アップサイクルとは、古くなったものや捨てられるものに、新たなデザインや付加価値をつけて新しい製品に生まれ変わらせること。私がエシカル教育を始めた時は全く知られていない言葉でしたが、2015年にSDGsが制定されたこともあり認知度が上がりました」
今までのように大量生産・大量消費・大量廃棄を繰り返していたら、ゴミもどんどん増えて環境負荷が大きくなり、資源も不足していくため、非常に深刻な状況に。
「そこで、廃棄を前提とせず、資源価値を最大化する『サーキュラーエコノミー(循環経済)』への移行が進んでいます。これを導入する国内外の企業が増え始め、その流れで産業廃棄物や廃材などを活用したアップサイクルブランドも続々登場。循環する社会を目指していくために、アップサイクルという手段は、私たちが“エシカル消費”を身近に考えられるひとつのきっかけになると思います」
下記のヒントを参考に、アップサイクルを自分事化してみては。
アップサイクルを自分事化する6つのヒント

ヒント① アップサイクルを知る
環境や財布にも優しいサイクルを作り出す
まずは知ることが基本。よくアップサイクルと同じように使われるリサイクルとの違いから知ろう。
「リサイクルは不要になったものを回収し、一度資源に戻してから新しいものを作り出すこと。一方で、アップサイクルは、そのものの特徴を活かしながら新しい価値や魅力を加えて生まれ変わらせるため、ゴミが出にくく、製造や廃棄に必要なエネルギーを抑えられ、環境面でもメリットが大きいです。また身近なものを活用して、アップサイクル製品を生み出すことができるため個人レベルで取り組めて、環境にもお財布にも優しいサイクルを作り出せます」
たとえば、なかなか捨てられないけれど愛着のあるモノは、アップサイクルの材料に活用しやすい。
「私が行っている家庭科の授業では、生徒たちが小さい頃に着ていた衣類など、家から持ち寄った不要な布地を活用してバッグを制作しました。体験した生徒からは『ゴミだと思っていたものが、こんなに可愛くなるなんて!』と驚きの声が。アップサイクルを知ると、不要だと思っていたモノをゴミではなく、資源として見られるようになってきます」
ヒント② 本当に必要か立ち止まる
買う時も捨てる時も一時停止して、考える
当たり前にモノを買っていると、後先考えずにあれもこれも買ってしまいがち。しかし、ゴミや不要になるモノをできるだけ生み出さないために、“買わない”という選択肢を持つことも大事。
「モノを繰り返し大切に使うことで、社会や環境が良くなっていくだけでなく、モノを丁寧に扱えるようになるので、自分の心も豊かになります。だからモノを買う前に、それは本当に必要なのか、他で代用できないか、シェアリングサービスが使えないか、買う以外の手段がないか考えることを意識付けて」
衣類の場合、資源回収されて途上国に送られることもあるが、そのほとんどが適切に活用されずゴミの山を生み出し、環境破壊を引き起こしている。
「捨てる時も先のことを考えながら一度立ち止まること。本当に不要なのか、アップサイクルできないか、使い道を模索してみることが大事です」
ヒント③ どんなプロダクトがあるのか調べる
アップサイクルの新たな可能性を切り拓く
循環型社会に対する意識が高い欧米を中心に、アップサイクルブランドやプロダクトが続々とローンチされ、最近では国内でも多彩な製品が生まれている。
「産業廃棄物や廃材など、捨てられるはずだった素材を活かして、ウィットに富んだ多様なプロダクトが増えています」
さらに気鋭のクリエイティブディレクターやデザイナーが参画しているブランドやプロジェクトも多いため、どれもアート性やデザイン性の高さが魅力。
「社会や環境に配慮したプロダクトというと、オシャレなイメージがあまりなかった。だから善意で買ってみたはいいけれど、結局一回も使わずに捨ててしまったという経験をお持ちの方も多いはず。しかし最近のアップサイクルプロダクトは、“より魅力的で価値のあるモノ”に生まれ変わらせることを軸に据えて作られているため、作り手の熱量も感じられ、ずっと使いたくなるようなオシャレでクオリティの高いモノばかりです」
ヒント④ アップサイクルを楽しむ
自宅でも気軽にアップサイクル体験を!
アップサイクルの基本を知り、知識や情報を得たら、今度は自分でも楽しんでみよう。
「アップサイクル製品を購入するのはもちろんのこと、アップサイクル体験ができるワークショップに参加して楽しんでみるのもあり。また家にいながらできる手段のひとつが『リメイク』。自宅に眠っている古着や着物などを小物やマット、鍋敷きなどにしたりと新しい命を与えてあげることで、世界にひとつしかない新たな個性や美しさが生まれます。また時間や手間をかけた分、愛着も湧きます」
割れたりヒビが入った器を漆で接着し、金粉などで装飾して仕上げる日本伝統の「金継ぎ」も、アップサイクルのひとつ。最近はリメイクも金継ぎも、初心者向けのキットが販売されているので、利用するのもあり。
ヒント⑤ 生活に取り入れる
アップサイクルを様々な分野で活用!
資源を循環させていくという意味では、モノだけでなく、食品や花など、様々な分野でアップサイクルが注目され始めている。
「廃棄寸前の食材を活用して、別の食品や料理にアレンジしたり、生ゴミを土に還し、堆肥や腐葉土として生まれ変わらせるコンポストを活用すれば、食品ロス削減にも繋がります。また結婚式やイベントなどで用意された花を小分けにして参加者に配るなどすれば、生活空間に飾って再度楽しめます」
不要なものは、フリーマーケットサイトなどを活用して、循環させるのも手。
「自分にとっては不要なものでも、それが誰かの大きな手助けになることも。手間がかかっても、双方にとってwin-winの結果が得られる可能性が!」
ヒント⑥ 未来について考える
未来に思いを馳せて、循環の輪を広げる
未来にも思いを馳せることで、資源を循環させていく意味を見出しやすくなる。
「ネイティブ・アメリカンの教えの中に『7世代先を考えよ』というものがあります。7世代先、数百年後の子孫たちに美しい自然環境を残していくという気持ちを持つことで、人間も自然の一部であること、そして命が織りなす循環リズムの大切さを感じられるようになり、行動を起こしやすくなります」
また、今年3月20日~29日に開催される「ゴールドウイン 地球にやさしい未来の服、ひらめき展」で、ヒントを得るのもあり!
「子どもたちや若者のひらめきやアイデア作品が展示されます。地球の未来とこれからの服の在り方について考えるきっかけが得られると思うので、ぜひ足を運んでみては」
葭内さん注目のアップサイクル製品!
トヨタ「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」
Product file 01

車のシートの本革廃材が、バッグに!
LEXUSのシートに使用されている高品質な牛革の廃材を用いた、トヨタ自動車のアップサイクルブランド。「若手クリエイティブディレクターの一法師拓門さんがデザインを手がけているので、カッコよくてかつ丈夫」。職人技術によって廃材を繋ぎ合わせパッチワークのように再構築したバッグは、ユニセックスで使える全6型。https://global.toyota/newbiz/toyotaupcycle/tsugicraft/
乃村工藝社 未来創造研究所/&SPACE PROJECT「ロケットタンクスピーカー」
Product file 02

Photo by akihito endo
宇宙への夢を乗せた廃材で音楽体験
宇宙産業が盛んな北海道・大樹町の協力のもと、開発の過程で試験使用されていたロケット燃料タンクを調達。そのタンクを、スピーカー「DEBRIS」のキャビネットに再構築。「『宇宙は重力がなく上下左右という概念が存在しない』ことから着想を得て、360度に音が広がる無指向性構造を採用し、音が物凄くいい」。頂点に浮かぶ球形のオブジェも印象的。https://debris.and-space-project.jp/
PIET HEIN EEK「廃材家具」
Product file 03
木くずなどがデザイナーの手で家具に
オランダ人デザイナーのピート・ヘイン・イークさんのプロダクト。自然の中で見つけたスクラップ材木や工場廃棄物などの素材を使用し、最新のテクノロジーで工程を省き、アーティスティックな家具や雑貨を創出。「素材から面白さを見出して、いろんな廃材を組み合わせて作られているので、目を引く家具や雑貨ばかり」。どれも一点モノなので、唯一無二の存在感でまさに一生モノ! https://pietheineek.nl/en
MAKOO「リサイクルレザーバッグ」
Product file 04

ドイツ産の再生革を活かして制作
清澄白河を拠点とするブランド。ドイツで約100年前から生産されているリサイクルレザーを用い、デザインから制作までを一貫して行い、手触りや使い心地を大切にしたプロダクトを生み出す。全てを国内で作り上げ、アートを通した表現をプロダクトに込めている。「バッグや文具、日用品など幅広いプロダクトがあり、天然皮革の質感や風合いが素敵」。https://makoo1.thebase.in/
Soundbounce「テニスボールチェア」
Product file 05
大量廃棄されるテニスボールが椅子に
年間4億個も生産され、その全てが埋め立て地で分解されるまでに400年以上かかるというテニスボール。その問題を解決するために、ベルギーのデザイナーが椅子などのカスタム家具にテニスボールを再利用。「テニスボールを円形のモジュール素材に再生して活用。接着剤を一切使わずに作られるこのプロダクトは、海外でも高く評価されています」。https://www.gp-award.com/en/products/soundbounce
Carton「段ボール財布」
Product file 06
世界中のカラフルな段ボールに息吹を
30以上の国から段ボールを拾い集めている美大出身のアーティスト・島津冬樹さんが、それら段ボールひとつひとつの個性を活かして、身近なアイテムに加工。「メインのプロジェクトは財布やコインケース、カードケース。素材が段ボールとは思えないほどデザイン性が高く、耐久性があり長く使えます」。実際にアップサイクル体験ができるワークショップも開催。https://store.carton-f.com/
(有)山田養蜂場「みつろうブロック」
Product file 07

みつばちの巣100%でできたみつろう
みつばち自身が分泌する天然の蝋「みつろう」には、保湿や抗菌作用があり、みつろうラップにすることも。「長野県諏訪市の養蜂場で作られているみつろうを取り寄せて、みつろうラップを作っています。溶かしたみつろうなどを布に染み込ませるだけなので簡単!」。密着し、繰り返し使えるため、プラスチック原料のラップの代わりに。https://www.kogen8383.com/
REMARE「廃棄プラスチック什器」
Product file 08
複合プラスチックを什器として蘇らせる!
「日本で廃棄されているプラスチックは年間約800万t。廃棄物の多くが複数素材でできた複合プラスチックで分離が難しいため、そのままアップサイクルする独自技術を開発し、廃棄プラスチックの再資源化から活用促進を行っています」。多くの企業とパートナーシップを結び、最近は、食品メーカー「カンロ」の廃棄包材を素材として買い取り、テーブルやベンチなどの什器をリリース。https://remare.jp/
anan 2486号(2026年3月4日発売)より
















