リーダー、ムードメーカー、ブレーンなど、チームにはさまざまなポジションが存在します。そのポジションを7つに分類し、それぞれのアプローチ法を伝授。各ポジションならではの注意ポイントも要チェックです。教えてくれたのは、組織開発に関する専門家の長尾彰さんと、ITを通じて究極の適材適所を考えるサービスを提供している会社の代表である仲暁子さんです。

Index

    ① 迷わず目標を示してチームをリードする「リーダー」タイプ

    チームとしての目標や目指すべき数字を掲げることができ、明確なゴールを指し示すことができる人は、チームをリードしていく役にぴったり。

    「目指すものや場所を言語化するのが上手く、なぜそこを目指すのかの理由や基準も一緒に説明できる人だと、困難な状況に陥ったときでも信頼が崩れず、チーム一丸となって前に進むことができるもの。そんなマインドを持っている人は、リーダーに向いていると思います」(長尾さん)

    「立候補する人がいる一方で、みんなの話に耳を傾け、話をまとめて道筋を立てることが得意な人は、“あの人がリーダーをやるといいよね”という、他薦の形でそのポジションに就くというパターンも」(仲さん)

    こう目指そう!

    長尾さんも仲さんも、「まずは仕切ってみることからスタート」とのこと。「会議の冒頭に議論の方向性の軸を打ち出してみるなどすると、それが信頼に繋がります」(長尾さん)。「話し合いがスタートしたら、メンバーの声に耳を傾けて整理し、目標を見つけたり数字を提案したりすると、みんなから“頼もしいな”と思ってもらえると思います」(仲さん)

    こんなことで苦労するかも…

    人数にかかわらず、基本的にリーダーの席は1つだけ。「同じ立場でモノを見る人がいない分、つらさを共有する人がいないため、孤独を強く感じるかもしれません」(仲さん)。「決断を抱え込まず、仲間にも責任を委ねることで、その孤独はだいぶ和らぐと思います」(長尾さん)

    ② 全体を見渡せる広い視野を持つ「サブリーダー」タイプ

    チームを引っ張るリーダーを、そばで支えるのがサブリーダーの役割。

    「基本的に人前に出るのがリーダーだとしたら、サブリーダーは組織全体が上手く回ることに喜びを感じる人向きのポジション。全体を見回し、タスクの抜けや漏れをそっと拾ったり、新しくチームに加わった人がスムーズに馴染めるようにサポートしたりなど、目立たないけれど欠かせない人材。人から感謝されるとやる気が出る人は、意外と楽しく仕事ができると思います」(長尾さん)

    「誰も拾わないけれど、絶対にやらなきゃいけない仕事というのはあるわけで、そういうところにしっかり目配せができる人は、サブリーダーになるととても力を発揮できるはず」(仲さん)

    こう目指そう!

    小さな気遣いがサブリーダーへの道を開く、と言うのは長尾さん。「リーダーを支える役割に向いていることを示すためには、リーダーの発言を補足したり、会議の後に“論点を整理しておきますね”など、さりげなくサポートするのがおすすめ。小さな支えを積み重ねることで、“いなくては困る存在”になれると思います」

    こんなことで苦労するかも…

    こまやかな気遣いは、単純に回数が多ければ負担も増える。「物理的に疲れますし、やることに追われすぎて結果的に燃え尽き症候群になるパターンも。“自分の仕事は些細なことだから”と思わず、成し遂げたことや成果は仲間にきちんと伝え、感謝や評価を得ることも大事です」(長尾さん)

    ③ 手を動かしての作業や研究が大好きな「クラフトマン」タイプ

    実際に手を動かして作業をし、成果物を作るのがクラフトマンの役割。

    「上からの指示を受けて動く立場ではありますが、基本的には独立的で、好奇心ベースで作業を突き詰められるポジション。自由にやりたい、我が道を行きたい人にぴったりで、協調性がなかったり、集団の中で浮いているような人も、逆に楽しく仕事ができるかも。クラフトマンがいかに自由に楽しく動けるかが、チームの成果物のクオリティを左右するともいえます」(仲さん)

    「クラフトマンにとっては、ある意味成果物がすべて。作業が苦でないことはもちろん、細部までこだわって仕上げられる“最後まで諦めない心”を持っていることも大事です」(長尾さん)

    こう目指そう!

    いわゆる実務を担う立場なので、“それを作れる力があること”を示すことが一番の近道。「まずは試作品やたたき台を見せること。“こういう形にできます”とモノで示すことが信頼に結びつきます」(長尾さん)。とはいえ、成果物を作れないレベルの人も挑戦できないわけではない。「経験がない場合は、アシスタント的な立場で、学びながら経験を積むのがよいと思います」(仲さん)

    こんなことで苦労するかも…

    突き詰めすぎて時間も予算も度外視にならないよう、注意。「完璧を求めすぎ、気がつけば時間が溶けている、なんてことも」(長尾さん)。「方向性自体がズレていて、成果物がまったく評価されない、ということも無きにしもあらず」(仲さん)

    ④ 必要な情報を探し出せるセンサーの持ち主「キュレーター」タイプ

    情報が多い今、効率的に成果を上げるためには、必要な情報を見分け、それを適時に取り入れることが大事。その情報の選別と選択、提出という作業を通し、チームの視野を広げる、それがキュレーターの仕事。

    「外の世界から役に立つ知見を集め、整理し、“今これが必要”というタイミングで各メンバーに届けてくれる。チームのアンテナのような存在です。このポジションも好奇心旺盛な人に向いているのですが、クラフトマンのような突き詰めるタイプというよりは、知りたがりだったり、流行に敏感な人に向いています。また、会議の記録や資料など、データを使いやすい形にまとめられる力がある人も、このポジションで実力を発揮できると思います」(長尾さん)

    こう目指そう!

    チームメイトがどんな情報を必要としているのか、それを見極めることから始めてみて。「見つけた情報を、“こんな情報を聞いたんですが、今の私たちのチームにこんなふうに役立つと思います”など、具体的なナラティブに結びつけて情報を提示してみる。魅力的な外の風を運んできてくれる人として、信頼を得られると思います」(長尾さん)

    こんなことで苦労するかも…

    「あれもいい、これもいいと情報を出しすぎると、逆にチーム内のノイズになり、嫌がられる可能性も。大事なのは、今、どんな情報が求められているのかを読み取る力です」(長尾さん)。中に外にアンテナを張り巡らせ、それを常に磨き続けなければならない立場。意外と負担が大きそう。

    ⑤ チームの雰囲気を前向きにする着火剤「ムードメーカー」タイプ

    チームは常にいい雰囲気で転がっていけるとは限らない。膠着したり停滞したり、場合によっては一触即発な状況に陥ることも。そんなときにいてくれると嬉しいのが、ムードメーカーだ。

    「ちょっとした行動で、場の雰囲気を変えるのがムードメーカーの役割。緊張しているときに軽いユーモアを差し込んだり、メンバーの小さな成功を拾って称賛したり。停滞した場を再起動させる着火剤です。悪い意味ではなく“場の空気を読む力”があり、それをポジティブに打ち破れる明るさを持っている人や、メンバーの活動を幅広く観察し、ちょっとやる気が落ちている人を発見&声掛けができる、優しさがある人が向いているのではないでしょうか」(長尾さん)

    こう目指そう!

    流れるムードを楽しく、ポジティブにするのが一番の仕事。「なのでまずは自分が楽しんでいる姿を見せることが大事です。とはいえ無理に笑わせるのではなく、このチームに所属していて一緒に目標を目指していることが楽しい、という姿を、自然体で表現する。それによりおのずと場が明るくなり、“あの人がいるからこのチームは楽しいし、仕事も回るね”という印象を持ってもらえるはず」(長尾さん)

    こんなことで苦労するかも…

    チームで作業をしている間中ずっと、“この場を盛り上げなきゃ…!!”と気負っていると疲れてしまうし、チームのムードにも悪影響が。「その場の雰囲気に合わせ、盛り上げ方を変える視点があると楽になると思います」(長尾さん)

    ⑥ 人間関係から作業の遅れまで支える縁の下の力持ち「サポーター」タイプ

    同じチームのメンバーといっても、常に気持ちが一つなわけではない。それぞれの気持ちに寄り添ったり、ぶつかりそうになったら緩衝材になったり。はたまた実務をする人たちを縁の下から、あるいは後ろからバックアップする。メンバーをサポートする人がいてくれると、チームはいい感じで回り続けることができるもの。

    「人の気持ちに敏感になれ、不安や不満を言語化でき、なおかつ中立の立場を忘れない人なら、このポジション向き」(長尾さん)

    「リーダーのように何かを達成したいとか、クラフトマンのように好奇心を満たしたいといったことよりも、人を助けたい、誰かから感謝されることが喜びという人に向いています」(仲さん)

    こう目指そう!

    困っている人、ネガティブな気持ちになっている人のサポートをすることで、信頼を勝ち取るべし。「率先して細かい仕事を拾ってみるといいと思います」(仲さん)。「言いにくいことがありそうな人の気持ちを言語化してあげ、受け止めてあげる努力をしましょう。場の温度を推し量り安心感を広げるのが大切」(長尾さん)

    こんなことで苦労するかも…

    「あまりに問題が大きくて一人じゃサポートできない、また調整が上手くいかず板挟みに。そうならないために、自分が担える範囲を明確にしておくことが大事です」(長尾さん)。「お願いをされると頑張ってしまうタイプがこの席に座りがちなので、抱え込みすぎないよう注意を」(仲さん)

    ⑦ 落ち着いて先を読む、チームの頭脳「ブレーン」タイプ

    リーダーが目指す行き先への道のりを、情報を整理しながら俯瞰して考えることができる。それこそがブレーンに求められる能力。「必要なのは冷静さと、常に合理的に考えられる思考力です。それを持ちリーダーを支えられる人が、ブレーンにふさわしいと思います」(仲さん)

    「冷静さと似ているかもしれませんが、現実的に先が読める力を持っている人も、向いている気がします。考えられる選択肢のメリットとリスクをわかりやすい形で可視化したり、事実と解釈を分けて議論ができるような能力もあるといいでしょう。そういった作業ができるブレーンがいることで、チームが遠回りのルートを取る確率をグッと減らすことができます」(長尾さん)

    こう目指そう!

    情報整理能力が高いことをまずはアピール。「あらかじめ情報を吟味、整理して、“こんなシナリオが考えられます”とチームに提示してみる。先回りできる準備力こそがチームの地図になります。プランAだけでなく、プランBも用意できたら評価も高まるでしょう。それを積み重ねていけば、自然とブレーンとして認められるはず」(長尾さん)

    こんなことで苦労するかも…

    仕事はスピード勝負なので、当然ブレーンにもスピードが求められる。「なので、分析が深まりすぎて意思決定が遅れるのはご法度。完璧を求めて時間をかけるよりも、7割程度の納得度合いで仮説を試してみる、くらいの軽やかさがあるほうが、結果的に良い働きに繋がることも」(長尾さん)

    お話を伺った方々

    Profile

    長尾 彰

    ながお・あきら 組織開発ファシリテーター。バンダイなどの勤務を経て独立。著書に『宇宙兄弟「完璧なリーダー」は、もういらない。』(学研プラス)、『チームビルティングと組織開発の話』(ナガオ考務店)など。

    仲 暁子

    なか・あきこ 1984年生まれ、千葉県出身。ビジネスSNS「ウォンテッドリー」創業者、代表取締役CEO。ゴールドマン・サックス証券、Facebook Japanを経て現職。

    イラスト・megumi yamazaki 取材、文・河野友紀

    anan 2470号(2025年11月5日発売)より
    Check!

    No.2470掲載

    The TEAM 2025

    2025年11月05日発売

    ひとつの目標を目指して集まり、個々の才能や長所が混じり合うことでより高いパワーを発揮することができるチーム。そんなチームの現代における理想的な形や形成するための条件など多角的に考察する特集です。エンターテインメント界における注目チームにもフォーカス。4人の光る個性と大人の魅力に磨きがかかるA.B.C-Zは、メンバー4人によるグラビア&座談会が必見必読。まもなく結成15年を迎える超特急からはリョウガさん、ユーキさん、シューヤさん、マサヒロさんが登場。そして今年20周年を迎えたHANDSOME LIVEからは小関裕太さん、渡邊圭祐さん、東島京さん、本島純政さんに思いを語っていただきました。

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