検定のありなしも国によってさまざまなんです。
日本の小中高等学校の教科書(教科用図書)は、文部科学大臣の検定に合格したものが無償給与されています。
教科書の発行には4年かかります。1年目に民間の会社で著作・編集されたものを文部科学省に申請。2年目に文科省の専門家による審議会にかけられ審査され、3年目に、審査に通ったもののなかから、教育委員会や国立・私立学校が使う教科書を選び、4年目に部数が決まり印刷。翌年度にようやく子どもたちの手に渡ります。
戦前の教科書は政府が作成し、軍国主義に導きましたが、戦後の教科書検定制度は「検閲」ではありませんから、歴史認識や領土問題、近隣諸国との関係についての記述はさまざまです。平成26年に発行された教科書の種類は958種類。発行点数は1286点にのぼります。それだけ表現の自由が守られているということですね。
世界的には教科書検定のない国が多く、欧米諸国はほとんどありません。アメリカは州単位で地区の委員会が使用する教科書を決めますが、検定はなし。フランスは国が学習指導要綱を作り、それに基づき民間の教科書会社が作成、直接的な規制はありません。一方、ロシアには民間以外に国で発行する教科書があり、タイやマレーシアの小学校の教科書はすべて国が作成。検定制度があるのは、日本のほかにドイツや韓国、インドネシアなどで、韓国の小学校では、国語、社会、道徳などは国が発行する教科書を使っています。
ドイツは、ナチスの問題があったため、歴史の教科書はポーランドと共同で作成しています。侵略した側とされた側で協議をして歴史を伝えるというのはとてもフェアな気がしますね。日本もそういうことができれば、近隣諸国との関係をもう少し改善できるのかもしれません。
昨年、私立灘中学の校長が、慰安婦問題を取り上げた歴史の教科書を採択したことに政治的圧力があったことを明らかにし、ニュースになりました。教育の自主性が委ねられているはずなのに、それに抗議をしたり圧力をかけたりというのはあってはならないこと。戦争の惨事を繰り返さないためにも、自由な教育は守らなければいけません。
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