繊細な黒ラインに穂紫蘇の紫が儚くて、和モダンなアートみたいな眺めだ。「持ち帰れるアシェットデセール(皿盛りデザート)をイメージしました」と『Patisserie Kyohei Mikami』三上恭平シェフ。デザートも名高いパティスリー、『トシ ヨロイヅカ』でスーシェフも務めた彼、自店ではついに、デザートの美しさや楽しさごとテイクアウトできるようにしてくれた。
漆黒のモンブランを口に運べばふわりとほどけ、想像の上いくほくほくした栗の香り! 主役は熊本産の栗。竹炭の黒をまとったマロンクリームは、特注の極細口金で絞ることで空気を含ませ、口溶けよく仕上げた。ゴロンと現れる大きな栗は定番の渋皮煮ではなく、さっと甘煮にしてさらに焼くことで、しっとりさせつつ栗の旨味をふくらませて。それを栗ペーストで包んで和菓子みたいにして忍ばせるなんて、もう反則。栗そのものの朴訥とした香りがわっと溢れ出し、幸せ以外の何でもない。縁の下で全てを支えるメレンゲは、なんと黒ビールと日本酒入り。アミノ酸や炭酸のチカラで旨味と口溶けをアップさせつつ、わずかな苦味は栗の香ばしさを輝かせ、甘さをシメる。おかげでこれでもかと栗を感じさせながら軽やか。さらには穂紫蘇がシャキッと和の清さも添えて。私たちが知らなかった、モンブランの喜びを持ち帰ろう。
シックなモンブラン「黒雛」¥1,400(直径約9cm)。こうしたデザート感覚の特別感があるシリーズと、シンプルな美味しさを追ったカジュアルなケーキ(¥500前後)の2つのラインが揃う。シチュエーションや気分に合わせて選んで。
Patisserie Kyohei Mikami 東京都世田谷区上野毛4‐22‐2 KAYAH KAMINOGE 1F TEL:03・5491・5181 13:00~18:00 月~木曜休※現在プレオープン中。3月下旬グランドオープン予定、デザートカウンターも準備中。
チコ スイーツライター。大人気のガイド本『東京の本当においしいスイーツ探し』(ギャップ・ジャパン)シリーズ監修。
※『anan』2023年3月8日号より。写真・清水奈緒 スタイリスト・野崎未菜美 取材、文・chico
(by anan編集部)