
2023年にIMP.のメンバーとしてデビューを果たした鈴木大河さん。昨年には『未恋〜かくれぼっちたち〜』や『三人夫婦』といったドラマに出演するなど、活躍の場を増やしている。そんな鈴木さんの初の単独主演舞台が決定。稽古場を訪ね、作品の魅力や芝居に対する想い、そしてIMP.として今年3年目に突入する今の心境を伺った。
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SFではあるけれど、もしかしたらどこかにこんな喫茶店があるんじゃないかと思わされるはず
舞台『曲がれ!スプーン』は、一風変わった設定とギミックを凝らした劇構成に、ミニマムだけどチャーミングなユーモアを混ぜ合わせ、ユルく笑えるコメディを生み出している京都発の劇団・ヨーロッパ企画の人気作。2000年に初演(当初のタイトルは『冬のユリゲラー』)以降、何度も再演され、2009年には長澤まさみさん主演で映画化もされている。
「出演が決まった時は嬉しかったです。でも同時に、僕が生まれてすぐの頃に作られて、そこから長く愛されてきた作品ですし、共演者の方々もすごい方々ばかりで、自分でいいのかなと不安な気持ちにもなりました」
オファーを受けた時の正直な気持ちを、そう語ってくれた鈴木さん。「舞台出演の経験が少なくて…」と言いつつ、それでも「出演させていただくたびに、楽しかったなという記憶ある」とも。
「共演者の方々と、作品の世界…空間を立ち上げて、その中でお芝居している時間が好きなんです。映像作品でも長回しのシーンが好きなんですが、どうしても短いシーンでカットがかかることのほうが多いじゃないですか。そこで、生まれた空気がいったん途切れてしまうのが残念で。舞台は、みんなで作り上げた空間を継続できるのが楽しいです」
とはいえ、演技を学ぶという経験がないまま舞台や映像作品の現場に足を踏み入れただけに、「最初はただただ見様見真似」の手探り状態で、「お芝居に苦手意識があった」という。しかし最近、その意識が変化してきている。
「最初の頃は、役を演じるのに、誰々っぽくやってみよう、みたいな感じでアプローチしていたんです。でも当たり前ですけれど、それぞれに声質も風貌も違うわけで、人の真似をしても同じようにはならないんですよね。自分の声でいいんだ、自分のやり方で作っていくしかないんだと思えるようになったのは、つい最近のこと。そこから、お芝居への向き合い方が変わりました。これまで出演させていただいたいろんな舞台で学んできた経験を役に生かしていくというのかな。たとえば、ドラマ『三人夫婦』に出演した際に、主演の3人(浅香航大さん、朝倉あきさん)で泊まり込みで撮影をした期間があって、そこから3人の自然な空気感を掴めた経験がありました。今回もあの時みたいに、稽古場での共演者の方々との空気感を役柄に生かしていけばいいのかな、と思っています」

本作は、町外れの喫茶店『カフェ・ド・念力』に集う本物のエスパーたちの群像劇。日々、能力を隠し暮らしている彼らが、思う存分人前で超能力を披露するシークレットパーティに、びっくり人間や超能力番組のADが紛れ込んだことで起こるドタバタが描かれる。
「テーマは超能力ですし、SFといえばSFかもしれないけれど、もしかしたらどこかにこんな喫茶店があるんじゃないかと思わされるんです。まったく日常から切り離されたお話ではなく、きっと観に来てくださる方が共感できる部分もあるはずで、そこがこの作品の魅力なのかなと思っています」
今回の出演が決まってから、ヨーロッパ企画で2009年に上演した際の舞台映像を観たそう。
「繰り広げられる会話劇が本当に面白かったです。創作されたコメディというより、まるで喫茶店での会話を盗み見ているような感覚がありました。仲のいい面々で、くだらないことをしゃべっている時のノリ…みたいな、僕らの楽屋ノリに近くて、本当にセリフなのかなと思ってしまうくらいリアル(笑)。ただ、そのぶん自然なお芝居が求められますし、これは難しいなとも思いました。
大きく振りかぶって面白いことをやるというのではないので、ここが笑いどころです、という感じのコメディではないんですよね。観る人それぞれにクスッとする箇所があって、ここで笑っている人もいれば、そうじゃない箇所で笑っている人もいる…みたいな。そういう作品だけに、みなさんと稽古する中で、面白い会話のテンポや間を作っていくことが大事になってくるのかなって」
鈴木さんが演じるのは、河岡というエスパー。他にも、喫茶店のマスター役の相島一之さんのほか、岡田義徳さんや忍成修吾さんら舞台経験豊富な俳優陣に、ひょうろくさんやオラキオさんのような芸人ら多彩な顔ぶれが揃う。
「忍成(修吾)さんが早口でしゃべる場面があって、ご本人はそれが難しいとおっしゃっているんですが、とても面白いシーンで、どうやられるんだろうってすごくワクワクしていたんです。そしたら思わずツボってしまって、本来は淡々とツッコまないといけないところを、笑いながらツッコむという…。でも、そういう自然に生まれた笑いも無理に我慢する必要もなくて、その場その瞬間に生まれた空気感でいいんじゃないかと言っていただき、とても助かりました。
あと、ひょうろくさんがやっぱり面白いんです。エスパーたちの集いに紛れ込んでしまった“びっくり人間”を演じているので、僕らはひょうろくさんを肯定しちゃいけない立場にあるんですけれど、つい目がいってしまうので、自分の中でバランスをとるのが難しいです(笑)」


面白いことは好きです。ただ、10人にひとりが気づいてくれるくらいでちょうどいい
鈴木さん演じる河岡が秘める能力とは、サイコキネシス。サイコキネシスとは、手を使わずに人や物を動かせる能力のこと。
「カフェの常連の中では若いほうで親しみやすい人ですが、言う時ははっきり言う人でもあって、そこは少し自分と重なる気がします。ただ、すぐに超能力を使いたがるような、ちょっと乱暴なところもあるキャラクターなんですよね」
ということは、当然、舞台上でサイコキネシスを使う場面も。
「まさにこの後、その場面のアクション稽古があるんです!」
そう言って、悪戯っぽい笑顔をのぞかせる。普段から穏やかで、賑やかなIMP.の中では口数は少ない鈴木さんだが、グループのYouTubeなどで、マイクが拾うか拾わないかくらいの小声でボソッとボケたり、メンバーの小ボケにさりげなくツッコミを入れたりと、“じつは密かに面白い人”として知られている。
しかし本人は、そんな面白さに「YouTubeを見ている人の30%くらい…いや、10%ぐらいが気づいてくれればいい」と言うのだから、なんとも控えめ。
「面白いことは好きです。ただ、よこ(メンバーの横原悠毅さん)に言われるし、自分でもそう思うんですけれど、僕、“観点がウザい”んですよね(笑)。だから、10人にひとりが気づいてくれるくらいがちょうどいいのかなと思っています。全員が笑うような大爆笑は自分には難しいし、個人的には、そういう種類の笑いが好きなのもありますし」

そんな鈴木さんの、笑いにおけるルーツを知りたい。
「中学生の時には、サンドウィッチマンさんにハマって、YouTubeを見あさっていた時期があるんです。あまりに見すぎて、セリフを覚えてしまうぐらい。当時仲良かった友だちと、帰り道に『あれ面白かったね』なんて言いながら、真似したりもして。その友だちがどちらかというとツッコミキャラで、僕がボケることが多かった、というのが今の原点にあるような気がします。博識なうえにボキャブラリーが豊富な子だったので、僕が何を言ってもツッコんでくれるから安心してボケられたというのもあったのかな、と」
もともとあまり自分を強くアピールするタイプではない。しかし、それゆえにグループも自分自身も俯瞰する、冷静な目を持っている。その鈴木さんは、自分自身を「性格上、周りから自分がどう見えているか、みたいなことを気にしてしまうところがあるんです」と分析する。
「でも、グループでいるとそこをあまり気にせず、自分を出せるんです。だから僕みたいなタイプは、そういう環境のほうが自然な自分でいられるんだと思います。今、自由にボケたりしているのも、メンバーといれば誰かしらがツッコんでくれるだろうという安心感があるから。それだけ、心を開いているってことなんですけれど」

誰ひとりとして熱量が違う人がいない。この7人であることの重要性を感じています
そう語るほど厚い信頼を置く6人のメンバーは、TOBEに合流する前からの仲間だ。長く行動を共にしてきているが、何がそこまで深く7人を結びつけているのだろう。
「やっぱり、僕ら7人とも下積みが長かったというのが大きいと思います。なかなかマイクを持って歌う機会もなく、苦い経験をたくさんしてきた7人で。でも、決して華々しい過去ではないけれどマイナスにも捉えていないんです。長い期間悔しい想いもしてきたからこそ、それをバネにして今活動できているし、グループがあることのありがたさを人一倍感じている。その気持ちを7人が共有できていて、誰ひとりとして熱量が違う人がいない、というのは僕らのすごい強みだなと思っていますし、この7人であることの重要性を感じています」
鈴木さんのこの舞台とほぼ同じタイミングで、同じIMP.メンバーの基俊介さんが主演する舞台『ぴーすおぶせーふ』が開幕。その後には、横原悠毅さんの主演舞台・CINEMATIC STAGE『GINZA MIGHTY GUY』や、椿泰我さん出演の映画『ウォーターガーディアンズ』の公開が控えるなど、それぞれがソロとして活躍の場を増やしている。グループであることを大事にしている鈴木さんにとって、ソロでの活動はどんな意味を持つのだろう。
「今回の舞台でも、出演者の僕の名前の後ろにカッコでグループ名を入れていただいていますけれど、やっぱり自分としてはグループとしての活動が基盤にあって、ソロのお仕事は、その延長という意識があります。ひとりですべてを背負っていくって、楽しさもありますけれど、とても大変なことでもあり、それを心細く感じることも多くて。グループという帰る場所があるからこそソロで頑張れているというか。自分の活動が、少しでもグループに還元できたらいいなという気持ちでやっています。お芝居は自分がもっと伸ばしていきたいと思っている分野なので、機会をいただけるのは嬉しいです」

2023年にデビューし、8月18日で丸3年を迎えるIMP.。昨年には、舞台『IMPACT』でグループで初の主演舞台、そして今年に入り、初の単独アリーナツアーを成功させ、4月からは冠番組もスタートするなど、着実にステップアップしてきている。デビュー前から目標としてきた主演舞台やアリーナツアーといった夢を叶えた今、目指すものとは?
「大きな目標として掲げているのは、単独でのドーム公演ですが、その前にクリアしていかなくてはいけないことがあるとは思っています。そういう意味で、今考えているのは、僕らの代名詞となるような楽曲を生み出すことです。やっぱりアーティストとして活動しているからには、音楽が知れ渡らなければと思っています。
今は、ヒット曲が短いスパンで次々と入れ替わっていくような時代です。バズることがすべてではないとは思いますが、やっぱり、誰もが『この曲、聴いたことがあるな』と思うような、IMP.として名刺代わりになるようなものができたらいいなと思っています」
Profile
鈴木大河
すずき・たいが 1998年6月29日生まれ、千葉県出身。2023年8月18日に『CRUISIN'』で世界同時配信デビュー。昨年『未恋〜かくれぼっちたち〜』『三人夫婦』と2本のドラマに出演。現在、北陸放送の情報番組『絶好調W』内のコーナー「鈴木大河の推しタイガー」にレギュラー出演中。グループとしては、現在、初の地上波冠番組『IMP.の「できません」は言いません』がTBS系にて放送中。4月にリリースした新曲「INVADER」も好評配信中。
information
舞台『曲がれ!スプーン』
町外れの、うらさびれた喫茶店『カフェ・ド・念力』に、男たちが集まってくる。超能力者でありながら普段はその能力を隠して暮らしている彼らだが、この店で互いの能力を披露し合おうというパーティが開かれるのだ。そんな中、店に痩せた男が入ってくる。エスパー仲間だと思って快く迎え入れた彼らだったが、じつは男はエスパーではなかった。必死に自分たちの能力を隠してきた彼らは…。
東京公演・2026年6月4日(木)~14日(日)IMM THEATER 京都公演・2026年6月17日(水)~19日(金)京都劇場 脚本・上田誠(ヨーロッパ企画) 演出・大歳倫弘(ヨーロッパ企画) 出演・鈴木大河(IMP.)、岡田義徳、忍成修吾、時任勇気、オラキオ、ひょうろく、松井愛莉/相島一之
全席指定 ¥12,000 問舞台「曲がれ!スプーン」公演事務局 TEL:03-6825-5377(平日12:00~15:00)






















