
鳥トマト『東京最低最悪最高!』3
鳥トマトさんによるコミック、『東京最低最悪最高!』をご紹介します。
最低で最悪…だとしても。働き闘う大人たちの東京ライフ
東京のとある出版社を舞台にしたオムニバスなのだが、実は鳥トマトさんも出版社で働いていた経験が。
「就職して初めてカルチャーな人たちと関わるようになり、そのプライドや人格の複雑さに大変魅了されました。出版社勤務といっても、作家や編集者とは、ちょっと距離のある業務だったのも、突き放した作風につながったのかもしれません」
老若男女、夢や希望を持ちながら、人間関係に翻弄されたり、仕事と家庭の両立に悩んだり、恋愛で騙されたり…。ネガティブな感情も、包み隠さず描いていく凄みを感じる。
「重層的な内面を抱えた人が好きなので、ひとりの人間のなかに矛盾や葛藤が見えるとすごく好きだな、かわいいなという感情になります。本当は一人ひとりに『あなたは頑張ってるよ!』と言って回りたいくらいなのですが、そんなことをするわけにはいかないのでマンガを描いています。しかもオムニバスだと、市井の人たちの小規模な悲喜こもごもを描きやすいので、楽しかったです」
イタい話も多いのに悲壮感だけで終わらないのは、ポップな絵柄の功績も大きい。小説も書く鳥トマトさんは、マンガで表現したいことや作画のこだわりを、次のように語る。
「小説は独白のような思考の流れを描写することが得意な媒体で、マンガは言語化できない踊りのような身体的な快楽を描写するのが得意だと感じています。同じキャラをデフォルメしたり、8頭身に戻したりするのですが、そのバランスに気をつけつつ、読者さんがマンガを読む際にいらない情報は削ぎ落とすようにしています。逆に一見どうでもいい、雑誌のページ、絵本のキャラクターなどの小道具は、意外と記憶に残るので再現度を高めています」
特に気に入っているキャラクターは、3巻に登場する餅村さんとのこと。いわゆる“女の武器”を使いまくって自己実現するツワモノだ。
「フィクションの“ヤバい女”って、不幸そうだったり、異性に依存していたりと不安定な人が多いですよね。その点、餅村さんは対人関係や仕事の出力は安定していて、目的のため手段を選ばないだけ。男性キャラだと珍しくないタイプですが、こういう強めの女性キャラもどんどん増やしていきたいです。登場人物たちの生き様には賛否があるでしょうが、自分のマンガを通じて読者さん自身が人生や働き方について考えた時間があったと分かるだけでとても嬉しく、描いて良かったなと思います」
Profile
鳥トマト
とり・とまと マンガ家、小説家。『ヤングアニマルZERO』にて「二月に殺して桜に埋める」、『週刊SPA!』にて小説「まだおじさんじゃない」を連載中。
information
『東京最低最悪最高!』3
大手出版社・青界社を舞台に、東京という大都会で疲弊しながら、それでも「最高」の瞬間を信じて奮闘する人々を描いたオムニバス。働くすべての人たちに。小学館 770円 ©鳥トマト/小学館
anan 2479号(2026年1月14日発売)より






















