暗澹たる世界で、⾚く燃えて希望を放つ、炎のようなバンド! GEZANの新アルバムにマヒトゥ・ザ・ピーポーがこめた“予感”とは──

メンバー4⼈でつないだ100時間ぶっ通しでライブ配信を続けた「100時間リレー」のひとコマ

2⽉上旬、7枚⽬のアルバム『I KNOW HOW NOW』発売を記念してメンバー4⼈が⼀⼈25時間、100時間連続でライブを⾏う「100時間リレー」で話題を呼んだGEZAN。⻘葉市⼦、ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正⽂、スチャダラパー・Bose、踊ってばかりの国・下津光史、ドラマーの中村達也といった30名以上のゲストが参加し100時間ぶっ通しでライブを⽣配信。何が起こるかわからないリアリティショーのような刺激を観る者に与えつつ、ラストはどこかロードムービーや⻘春映画のような、熱さと煌めきを放つ、唯⼀無⼆の100時間を作り上げた。 そんなGEAZANの新アルバム『I KNOW HOW NOW』は“予感”と“新呼吸”をテーマに制作された。いつになく優しくポップなメロディーと質感が随所にちりばめられた中で繰り返される、今の世界に別れを告げて新しく始めようという物語。本作を携えて3⽉14⽇に初めて単独武道館公演「独炎」を⾏うGEZANのフロントマンであり、作家や映画監督としても活躍するマヒトゥ・ザ・ピーポーさんにインタビューを決⾏。anan本誌では紹介しきれなかった⾔葉も含む、ロングバージョンでお届けします。

Index

    47都道府県ツアーで⾒えた、⾃分が⽣きている場所の輪郭

    ── 昨年4⽉から始まった47都道府県を周った「集炎」ツアーは「⽇本を肯定するため、もう⼀度関係を結び直すためのツアー」という位置づけでしたが、実際どういうツアーになりましたか?

    学校で47 都道府県について習ったりして、頭の中の情報としては知っていましたが、いざ⾏ってみると、⾃分が⽣きてる場所の輪郭が⾒えるようになりましたね。東京に出てきてから4年ぐらい、全然東京の⼟地勘がなかったんですけど、「渋⾕と新宿ってこういう感じなんだな」とかなんとなく掴めてくるとぎゅっと街が近づいてくる感覚があって。その感覚と近かったというか。⾃分の⾜で周ってみると⼀つひとつの街が⾎⾁に近づいた感じがあって、その実感が⼀番の贈り物として残ってます。

    ── ⽇本を肯定するためのマインドにはなれていったんですか?

    「⽇本を肯定する」っていうとすごく⼤きい⾔葉だけど、⾃分が住んでる場所や⾃分の好きな⼈たちがいる場所の関係が繋がっていって、そこに熱が落ちて、その余熱みたいなものがまた違った形で返ってくるような交換があったことで、⽇本を好きになれていきましたね。

    ── それはアルバム制作にどんな影響を与えたと思いますか?

    海外に⾏く機会も増えたことで⾃分がいた場所のことでわかったこともあったし、⾃分がいる場所から⾒えることもあって、旅の痕跡みたいなものが⾃然と⼊っていったと思います。別の場所にいる時もメンバーと曲を録っていましたし。

    ── 「Memoria」はウガンダ滞在中に作られたアフリカにインスパイアされたグルーヴが元になっているそうですね。

    そうですね。ウガンダでのライブのリハーサルがあまりうまくいかなくて、ホテルの部屋で⾳楽を聴いて気分を変えようと思ってたら、⾃分のアルバムが流れてきました。⾃分が過去に書いた⾔葉や⼀緒にいた仲間の⾳楽とかが、当時からしたら未来の⾃分にアクセスしてくる感覚があって、残ったものが時間をまたいで影響を与え合うことがあるんだなと思ったんですよね。

    ⾳楽は亡くなってしまった⼈の曲が⾃分の気持ちに影響するという要素を当然持っていますが、⼀番⾝近な⾃分という存在に対してそういう出来事があったことが⾯⽩かった。過去をどんどん掘っていくとまだまだ奥⾏きがあって、未来と同じぐらい新しいことが含まれているんだなって感じました。

    ずっと「何かが変わるはず。きっと良くなくなるはず」と思っている

    ── 『I KNOW HOW NOW』は「予感に辿りつくまでのプレイリスト」というコンセプトがあるそうですが、そのコンセプトはどのように⽣まれていったんでしょう?

    その答えに辿りつくまでの過程が想像できないんだけど、漠然とこんな夜明けが来て、空気が⼊れ替わって気持ちが晴れたりするっていう、理由が追いついてない“予感”みたいなものってみんな持ってると思うんです。でも、辿りつくプロセスが想像できないと、存在しないものの引き出しに⼊れて鍵をかけて開かないようにして、ただ現実の中で起きてることで⾃分の⽇常を埋めていくということが⾃分にもあるけれど、そもそもはたくさんの気配や予感をみんなまとっている。

    ⼦どもの頃はその予感だけで旅に出たくなったり、最短ルートではなく迂回をして家に帰ったり、公園に⽴ち寄ってブランコに乗ってみたり、⼩さな旅から⼤きな旅までたくさんの旅があったんですが、理由がないと動けなくなってくことがだんだん増えているんです。予感に誘われて動いてみた時に出会ってきたことがたくさんあったなと思って。

    今の時代は数字や⽣産性とかいろんなものがルールの下地にありますが、そうやって⼀度⾃分の中に⽣まれたものって本来消えないので、そこに近づいていくための勇気が加熱されていくようなアルバムになればいいなと思いました。

    ── ⼀貫して、閉塞していたりすべてをシャットダウンしている状態から、今の世界に別れを告げて新しい物語が始まるようなストーリーが描かれていると感じました。

    映画『i ai』を作った時もそういうテーマがあったんですが、物語が始まって終わってをずっと繰り返してて、ひとつの映画のエンディングのカタルシスみたいなことにたどり着く。⾬が上がって晴れても2〜3⽇したらまた⾬が降ったり、その繰り返しで。

    今回のアルバムはどの曲でも始まってて、どの曲でも終わっていて、そういう⽇常がずっと続いていくループの感覚がありました。いつでも⽇常にすって溶けては始まって、知らない間に終わってて、それが続く。どうせまた落ち込むことがあるけれど、夜明けは来るっていう。だから、⾃分たちとしては珍しいぐらい平熱から始まってるんですよね。

    ── ということは、アルバム全体の流れを考えるというよりは、1曲ごとに向き合っていったんでしょうか?

    アルバム全体のことも考えてはいるんですが、それ以上に⼤きなずっとループしている流れみたいなことをずっと考えていました。⾃分はすごく閉塞感があって⽴ち⽌まっているのに、ふと公園に⾏くと⼦どもたちがサッカーとかして元気に遊んでて。世界が硬直して凍結している状態だと思っていたのに、外に出てみたら全く無関係に世界が動いているようなことに励まされることがよくあります。

    季節が巡るのもそういうものですが、⾃分の1⽇1⽇の起承転結とは別にもっと⼤きなループがあることは結構な救いだと思っています。逆に⾔うと、どこで始まってもいいし、どこで終わってもいい。始まりから終わりに向かっていくだけじゃないものを思って作ったアルバムでもあります。

    ── ラストに収められた「予感」の「あらゆる最初 It' ll be arlight(⼤丈夫)」というフレーズでアルバムを終えた意図はどういうものなのでしょう?

    ⾃分がそう⾔ってほしかったっていうことですかね。前作(『あのち』)でも⾔ってるけど、⼤丈夫じゃなくても「⼤丈夫なんだ」と⾔うことって、今の⾃分にとってあらゆる局⾯においてお守りみたいになっているんです。

    どれだけ揺さぶりをかけられても、⾃分の中にある気配や予感だけは⼿放さずに、⼩さな窓でもいいから開けておきたい。それがクローズしてしまうと、持ってるものや今⽬の前にある現実に存在しているものだけの組み合わせで⽇常を作っていくことになるけれど、芸術は本来そうではなくて⽬に⾒えないものです。予感っていう⾔葉にはそういった世界への抗いも込められているのかな。

    いまは未来と過去の中継地点。武道館はGEZANの何かが変わるライブ

    ── サウンドとしては、メロディと⾔葉が際⽴ったポップな印象がありましたが、それは意図したのでしょうか?

    今⼀番聞きたい⾳楽だったんでしょうね。

    ── 先⾏シングル曲の「数字」は前半はファニーなポップさがありますが、後半はかなりラウドなロックに展開し、その後BPMがものすごく早くなっていきますよね。

    あの展開はもう⾃分の頭の中です。ドライブしていて忙しいっていう(笑)。みんなよく⼀瞬⼀瞬でキャラクターを切り分けてやってるなと思うんですよ。例えば、電⾞に乗ると⾃分というアイデンティティを全くオフにしてただ乗られているような状態になる。横にいる⼈とすごく密接な距離にいるのに、お互いに感情を交わさないことを⾃然とやれるじゃないですか。

    場所ごとに役割を変えていくんですよね。会社にいる時とオフの時は全然違う役割だし、キャラクターまで変えているかはそれぞれだと思うんですが、そういうふうに分裂したり切り替えたりするということが昔より細かく区切られている気がしています。

    今の世界は、感受性をビンビンに外に出したとしたらずっと号泣しながら歩かなきゃいけないようなものだと思うので、そういう切り替えの速さによって⾃分を守ってるんだと思うんですよね。そういうものが「数字」という曲名や曲の中には含まれています。

    ── 「BEST DAY EVER(feat. Ichiko Aoba)」には⻘葉市⼦さんが参加されています。⻘葉さんとの付き合いは⻑くなってきましたが、GEZANにとってどんな存在なのでしょう?

    基本的にはずっと⼀⼈で戦っているのでいろんな時において「すごいな」と思います。お互いのことを話すより前に歌の話で仲良くなれた関係だったので信頼がありますね。距離感としては、広がったり縮まったり遠のいたりとどんどん変わってはいるんですが、⾳楽が真ん中にある時は何回でも会える。ある種の戦友みたいな感覚でお互い過ごしているんじゃないかと思ってます。

    ── 「BEST DAY EVER」も「さよなら」と告げて曲が始まり、最後に「おはよう」と新しい物語が始まります。

    とにかく終わらせたいんでしょうね(笑)。⾮常に疲れてるんだと思います。でも同時に、いつも期待をしていて、何かが変わるはずだし、きっと良くなるはずだと本当に思っている。虚無感や諦めみたいなものの割合がどれだけ⼤きくても、いつも予感の話をしていたいという気持ちはこのアルバムには⼀貫してありますね。

    ⾃分のある種の暴⼒的な衝動や狂気はいっぱい含まれていると思うんだけど、そういうものを⽣んでいるものの⼿先や奴隷にならずに、⾃分が歌っていたいものを最後まで⼿放さずにいようと思っています。そう思うぐらい今は洗濯機の中に放り込まれて回されているような気持ちがあるのかな。

    だから、このアルバムのメロディーとかから聞きやすさや優しさを感じれば感じるほど、⾃分の中ではこの世界の混乱の反動が反映されているという気持ちが強くなります。その混乱をそのまま描写しようという気分には全くならなかったんですよね。

    ── メロディーやサウンドはせめて明るく優しいものであってほしいということですね。

    そうですね。

    ── マヒトゥさんを「終わらせたい」という気持ちにさせているのも⼈間ですし、諦めずに新しく何かを始めるのも⼈間なわけですよね。

    そうですね。名前に「⼈」が⼊っちゃってますから。しかもマヒトゥ・ザ・ピーポーって2個も⼊ってる(笑)(マヒトゥさんの本名は「真⼈」)。そういう因果なんでしょうね。逃げられないんでしょう。

    ── 3⽉14⽇には初の武道館単独公演「独炎」が⾏われます。どんなライブになりそうですか?

    集⼤成みたいなものにはなると思うんだけど、さっきからずっと⾔ってる、何かが終わって何かが始まるという予感がすごくするんですよね。⾃分たちのこれまでが終わって、これからが始まる。

    新しいビジョンが⾒えるということじゃなくて、「宣誓」(2025年3⽉に⽇⽐⾕公園⼤⾳楽堂で⾏われたライブ内での47都道府県ツアーと武道館公演を発表したMCのこと)の時も「ちょうど未来と過去の中継地点」という⾔い⽅をしたんですが、本当にちょうどその間にあるような感じがしているんです。両⼿で持てるものは限られているので、握っていたものをちゃんと離さないと次のものは掴めない。GEZANの何かが変わるライブになるんじゃないかなって思っています。

    Profile

    マヒトゥ・ザ・ピーポー

    2009年、⼤阪で結成されたGEZANのフロントマン。2023年、フジロックフェスティバルのメインステージに出演。海外でも度々ライブを⾏う。3⽉14⽇に初の⽇本武道館単独公演「独炎」開催。個⼈としては2019年に⼩説『銀河で⼀番静かな⾰命』を発表。2024年には映画『i ai』を監督するなど、幅広いジャンルで注⽬される。

    information

    『I KNOW HOW NOW』

    GEZANの7thアルバム。盟友・⻘葉市⼦をフィーチャーした「BEST DAY EVER」 やウガンダ滞在中に作られた「Memoria」他、全9曲収録。 ¥3,300。(⼗三⽉)

    取材、⽂・⼩松⾹⾥

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