SHINeeのKEYが約1年5か⽉ぶりとなるソロコンサート「2025 KEYLAND:Uncanny Valley in TOKYO」を、11⽉29⽇・30⽇に東京・国⽴代々⽊競技場第⼀体育館で開催した。本公演は、9⽉の韓国・ソウル公演を⽪切りに、これまで台北、シンガポール、マカオをまわり、⽇本公演の後には、ソロとしては初めて北⽶6都市をまわるツアーへと続く。
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KEYは2018年に初のソロ・コンサートを開催して以来、そのタイトルを“KEYLAND”で統⼀している。そのステージは、毎回、明確なコンセプトを抜群のセンスでビジュアライズし、ショーとして練り上げられた緻密なプログラムと1秒たりとも損をさせない完璧なホスピタリティで、K-POP界においても他の追随を許さない圧倒的なポップネスと完成度で届けられてきた。
2025年のKEYLANDもとびきりエンターテインメントでありながら、今回のそれは彼のアーティストとしての⽣々しい感情と⾁体性にもフィーチャーされた奥⾏きのある公演だったように思う。本稿では初⽇の11⽉29⽇の模様をレポートします!
⼀瞬で会場を呑み込む圧倒的な世界観
メインステージを覆う紗幕に、80年代ホラー映画のポスタータッチで描かれた⾬が降る不穏な夜が映し出される中、オープニングVCRがスタート。階段をのぼってどこかへ向かうKEYの姿に続いて紗幕が落ちると、ステージの⾼い所に浮かぶ⼩さなUFOのようなステージに⽴つKEYのシルエットに⼤歓声があがり、全編英詞の「Strange」からスタート。

©⽥中聖太郎写真事務所
VCRと同じく、シルバーの肩当てと腰にはコルセットを巻いた中世ヨーロッパの甲冑を模したような⾐装に、悪魔のような⻑い⽖をした⿊のグローブ、襟⾜の⻑いブロンドヘアに真っ⻘な瞳で登場したKEY。メインステージ中腹に陣取る⽣バンドのダイナミックなプレイに乗せ、⼈間らしさを排除したムーブと、⻤気迫る鋭い眼光で会場を⼀瞬にしてその世界観に引きずり込む。
その⼀⽅で、スペシャルアレンジで展開する中盤の⼒強いボーカル、終盤のヘドバンやホイッスルボイスなど、スキルとフィジカルが問われる激しいパフォーマンスで圧倒する展開はまるでヒューマノイドと⼈間とを⾏き来するようで、まさに本公演タイトル「Uncanny Valley(不気味の⾕:⼈間に⾮常に似ているが⼈間でないものに対して抱く不快な感情のこと)」をプレゼンテーションするような幕開けだ。
続いてメインステージに降り⽴ちダンサーを従えて繰り出したのは「Helium」。メインステージにランダムにちりばめられた14枚のLEDがモノトーンに変わったりピンク⾊に変わったりする中、半⾳を彷徨うメロディとファルセットのサビで浮遊する楽曲世界へと誘い、右⼿を⾼く掲げてフィニッシュすると、間髪⼊れずに「CoolAs」へ。
ムーディなベースラインに低体温のボーカルを淡々と乗せながら、ハイウェイを駆け抜けるような夜の⾵を吹かせると、ドスドスと強烈なビートとともに「Want Another」をドロップ。アグレッシブなラップからスタートすると、センターステージならではの、次々と正⾯を変えながらのパフォーマンスで客席を沸かせる。
⽬まぐるしく展開するハードなダンスもフルパワーでパフォーマンスすると、ステージから炎が燃え上がり会場のボルテージもみるみる上昇! メインステージに戻るや否やKEYが姿を消すと、⾼揚感はそのままに怒涛のバンドブレイクへと続くのだった。

©⽥中聖太郎写真事務所
メドレーも圧巻のフルパワーパフォーマンス
バンド演奏が会場の温度をさらに上昇させたところで、⾵の⾳に紛れて遠くから聞きなじみのあるシンセリフが聞こえてくると、ネオングリーンのハンドマイクを⽚⼿にふたたび登場したKEYが、「東京楽しんでますか! 『Killer』⼀緒に歌ってくれる?」とテンション⾼く投げかける。
会場と“Killer”のコール&レスポンスで呼吸を合わせると、バンドの分厚いアンサンブルに負けないパワフルで伸びのあるボーカルで「Killer」を繰り出す。ステージにはKEY⼀⼈だけ、ダンスなしのボーカルだけで届ける「Killer」は新鮮だ。疾⾛するビートに乗り遅れることなく、詞の世界観を表現するように何かを探し求めるように会場の奥のほうにまで視線を投げかけながら歌って会場を熱狂させると、ワンコーラス終えたところで「My guilty!」のシャウトで花道をランウェイさながら闊歩しながら「Guilty Pleasure」へとなだれ込む。

©⽥中聖太郎写真事務所
センターステージ中央の1段⾼い位置から会場全体を掌握するかのようにパフォーマンスすると、ドラムのビートからシームレスに「HUNTER」へ。幾重にも重なる荘厳なシンセサイザーに性急なビートとアグレッシブなダンスとが絡み合いながら圧倒的な世界観を作り出すこの楽曲。エンディングは会場からの⼀⽷乱れぬ“HUNTER!”の掛け声に後押しされながら、⻤気迫るダンスブレイクを踊りきり、花⽕とともにフィニッシュ。
メドレー形式で⽴て続けに3曲を全⼒のパフォーマンスで披露したその覇気に会場も負けじと歓声で応えると、この⽇最初のクライマックスを迎えた。
「みなさんこんばんは、SHINeeのKEYでーす!」「みなさん元気でしたか?」と問いかけて客席から返ってきた元気な返事に、「…うん、めちゃ元気そう(笑)」といたって冷静にKEYらしく反応すると、会場からは笑いが起こる。今年8⽉に発売された3rd Album『HUNTER』でテーマにした“ホラー”を⼀捻りしたという今回のツアータイトル「Uncanny Valley」に込めた思いと、それを表現するうえでの⼯夫をステージデザインや曲の展開に取り⼊れていることを語りながら、「昔のフランスの⼈たちはどうやってこれで⽣活してたんだろう?」とコルセットのキツさをぼやいたり、KEY⾃らが指定したドレスコードの“⾚”で決めた会場を⾒渡しながら「今⽇めっちゃ⾚いですね?」と反応したりと会場とまるで世間話をするようなMCを挟む。
「みなさんと⼀緒にやりたいことがあります」とKEYがステップ&クラップをレクチャー。やってみる客席の様⼦に「そうそうそう」と笑みを浮かべると、⾻太ロックナンバー「Heartless」へ。「⼀緒に歌ってくれますか?」と呼びかけると、曲中のフレーズを会場全体でステップを踏みながらコール&レスポンス。曲中はステージ上⼿、下⼿へと移動して客席とコミュニケーションしながら、サビ前の、KEYらしからぬ治安悪めの挑発的なパフォーマンスに会場は⼤興奮!
オルゴールのアウトロの余韻を感じる間もなく「1,2,3 Letʼs go!」の掛け声と華やかなシンセサイザーから華やかなナンバー「Good & Great」がスタートすると、客席からはより⼀層⼤きな掛け声があがる。ステージ背後のLEDはカラフルなネオンをかたどり、SNSのライブ配信画⾯を模したデザインへと変わったステージ左右の⼤きなLEDの中でKEYが笑顔を向けながら歌い踊ると、続いて裏打ちが痛快なハウスナンバー「Pleasure Shop」へ。⽣バンドの⼈⼒ハウスビートが楽曲をより⽴体的に鳴らすライブならではの⼼地よいグルーヴで会場を虜にしていった。
⽇本初お披露⽬の⾐装で魅せる⾊彩豊かなKEYワールド

©⽥中聖太郎写真事務所
バンドの⽣演奏とともに「GLAM」のスペシャル映像が流れ、会場の温度は⾼いままにKEYの再登場を待つと、ピンク⾊のライトに照らされ、メインステージ中央にシルエット姿で登場したKEY。⽩いマイクスタンドの前に⽴つ彼は、迷彩柄のパーカに⽇本公演で初お披露⽬になったパステルピンクのユニフォームシャツ(背番号は⽣まれ年の91!)を重ね着し、右⼿はロンググローブ、左⼿はフィンガーレスグローブというアシメコーデに、ラインストーンがちりばめられた迷彩柄パンツと⿊のロングブーツという出で⽴ち。
「Picture Frame」の幻想的なトラックにファルセットと地声を⾃在に乗せ、マイクスタンドを効果的に使いながら体をしなやかに使ってパフォーマンスすると、シンセビートが繋いだ「Another Life」は、⻩⾊いライトの中でダンサーを従えながら、ほぼ表情を変えない無機質な質感で表現する。

©⽥中聖太郎写真事務所
バックのLEDに⻘い炎が勢いよく燃え上がると、空間をつんざくようなヘヴィなイントロでポーズを決めて「BAD LOVE」へ。ステージにはKEYとバンドのみという中、マイク⽚⼿にステージ両サイドギリギリのところまで移動しながら歌い、サビでは右⼿を⾼く突き上げながら、アンセム的なスケール感のあるこの曲を客席と⼀緒に⾼らかに歌い上げる。終盤、ステージ中央で⼒なく跪いて、苦悶と懇願の表情で歌うKEYの姿からは、この楽曲の中を⽣きるキャラクターとしてだけではない、いち歌⼿としての彼⾃⾝の⽣⾝の表現が溢れ出ていたように思う。
間髪⼊れずに「Gasoline」へとなだれ込むと、会場はKEYとフレーズを合唱しながら、天井を突き破らんばかりのボルテージへと駆け上がる! 先ほどとは対照的にLEDが真っ⾚な炎に染まると、ステージからも炎が噴き上がり灼熱の熱狂を描き出す。センターステージへ移動し、せり上がり舞台の上でマイクを会場に向けて合唱を求めるKEYの姿は、まさに⼀国を治める王者の圧倒的な⾵格と威厳に満ちていた。
思いがけないエンディングで世界観を描き切る
「みなさん、今⽇、喉元気ですね」とここまでの会場の盛り上がりに驚きを隠せないKEY。2回⽬のMCでは、先ほどよりもさらにフランクに、⽇本のコンビニ商品について客席と会話のキャッチボール。そんな中、今⽉からスタートする北⽶ツアーに触れながら、「こんなに活動してきても、まだまだやったことのないことが残っていることがすごく嬉しい」と、グループとしてデビューしてから17年以上のキャリアを積み上げてもなお、新たなチャレンジへ貪欲かつ素直に向き合うそのスタンスに、彼の表現に対する誠実さがうかがえる。
本編もあとわずかというところで、“今回のKEYLANDに似合う曲”と紹介してスタ―トしたのは「Novacaine」。メロディのリフレインが感傷を増幅しながら愛の痛みからの解放を願うこの曲を、スポットライトが当たらないステージでシルエットだけを映しながら、胸に⼿を当てて情感たっぷりに歌う。
宙を⾒上げながら歌を虚空に放ったその視線をゆっくりと下ろすと、「Trap」へ。何かに憑依されたかのようにシリアスに歌うKEYは再び冒頭のUFOへと乗り込み、歌いながら上昇。最後は仰向けに倒れ込み、左⼿を突き上げて姿を消したのだった。
ここまでの⽬くるめく展開を呑み込んでしまうようなダークなナンバーでの幕引きは、まさに不気味の⾕に突き落とされたような感覚に陥り、圧倒されるばかりだった。

©⽥中聖太郎写真事務所
本編を完璧に描き切ったKEYの再登場を願う会場がアンコールを待っていると、“Itʼs the magic.”というロボットボイスから「Imagine」をドロップ! グッズのフリースパーカにオリジナルキャラクター・ボクシリのバッジをたくさんつけて、カラフルなペイントが施された太デニム、頭には毎回スタイリストが替えてくれるというニット帽(この⽇は絆創膏をたくさん貼った猫型ニット帽)という姿でオンステージ。
エレクトロなアッパーチューンに会場もふたたび熱く盛り上がると、それに応えるようにKEYもセンターステージのお⽴ち台で帽⼦を⾶ばしながらキレッキレにパフォーマンス。と、ここで、2026年3⽉から、ソロ初ホールツアー「KEYLAND JAPAN HALL TOUR 2026 (仮)」の開催が発表されると、会場は歓喜の声に包まれる。これまでのKEYLANDとは異なる、⽇本オリジナルツアーになることも伝えられると会場は期待に胸を膨らませたのだった。
「僕だけじゃなくて、SHINeeのメンバーみんなそうだと思いますけど、ソロとしてもSHINeeとしても、みんな頑張ってくれてありがとう、ってメンバーがいない時に⾔いたいです」と⾯と向かってだと⾔いづらいメンバーへの感謝を語りながら、「来年も⾊々あると思うので、楽しみにしていてください」と会場の期待を煽ると、「今回のライブはそんなに笑顔で歌える曲が多くなかったと思うけど、この曲でみなさんの⽬を⾒るために⾛ってきたと思っています。本の最後のページは、笑顔でみなさんと⼀緒に歌いたいです」と、「Lavender Love」へ。
客席に丁寧に⼿を振りながら歌いかけていくKEYの姿に、ライブコンセプトによって⼼なしか終始緊張を湛えていた会場がようやくやわらかな笑顔に包まれると、KEY もやさしく微笑みながら客席全体を⾒渡し、左右に⼿を振るように促せばペンライトの海が穏やかに左右に揺れて美しい光景を作り出す。幕が下りても今この瞬間を覚えていてと歌うこの曲がKEYと会場とを繋ぎ、ひとつにした。紙吹雪が舞う中、両⼿を広げて深く⼀礼するKEYは、SHINeeお決まりのサムアップポーズを会場と決めて、投げキスでふわりとステージを後にしたのだった。
今回のKEYLAND は、ハンドマイクで歌を届ける時間の多さでこれまでのKEYLAND と⼀線を画していた。ハンドマイクを選ぶことで華やかなパフォーマンスが削ぎ落とされるのは事実だ。だかそれをよしとし、より筋⾁質な響きで楽曲を届けると決めたところに、彼⾃⾝がKEYとしてのアイコニックなポップネスと、表現者キム・キボムとしての⽣々しい感情との狭間であらたな表現を⾒つけようとしているのではないかと感じた。次のKEYLANDで彼が⾒せるKEYはどんな姿なのか、期待して待ちたい。

©⽥中聖太郎写真事務所
Profile
KEY
キー 2008年5⽉にSHINeeのメンバーとして韓国でデビュー。2015年には⽇本デビューを果たす。ソロとしては、2018年に活動をスタート。⾼い表現⼒とファッショナブルな姿は唯⼀無⼆の存在感を放つ。2026年3⽉からは、全国9か所・10公演をめぐるソロ初のホールツアー「KEYLAND JAPAN HALL TOUR 2026(仮)」開催予定。


























