
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「大阪・関西万博」です。
世界の文化に触れられる好機。成果検証もぜひ。

4月に大阪・関西万博が開幕しました。開幕前の内覧会での印象は、日本の突出したオリジナルの技術が、今後の世界貿易や安全保障の交渉において鍵を握ると感じさせる、様々な企業の力が集約されている博覧会でした。
賛否のあった大屋根リングは世界に類を見ない高い木造技術によるものです。リングの外には日本館と大阪ヘルスケアパビリオンがあります。長寿国の日本だからこそ健康に生きるための技術が求められ、開発が進みました。大阪ヘルスケアパビリオンでは、アプリを入れると25年後の自分のアバターが見られるコーナーがあったり、iPS細胞を培養して作られた心筋シートも展示されていました。シート状になった拍動するその膜を弱った心臓に貼り付け、動きを助けることができます。この技術はまもなく実装されるそうです。食料自給率の低さを解消するための、未来の食べ物の開発についての展示ブースもありました。
これまでの日本の投資先は製造業や情報インフラがメインでした。しかし、サイエンスの分野にもっと資金が投入されれば、それに応えられる科学者たちが日本にはいることを実感しました。思えばホンダやソニーが開発したヒューマノイドや四足歩行のロボット技術やAIも、日本は世界に先駆けて開発していました。それなのになぜ、海外との競争に負けてしまったのか。原因は政治の停滞です。政治家たちが既得権益を守るあまり、新技術や新規参入者を後押ししなかったからということを改めて考えさせられました。
今回の万博には158の国と地域が参加しています。紛争や内戦で苦しんでいるスーダンやパレスチナも出展しています。「コモンズ」という場所では自国だけではパビリオンを出せない経済的に規模の小さい国々の展示が並んでいました。その国の大使やスタッフが案内してくれるので、海外旅行のハードルが高くなっている今、世界に出向かなくても、日本で現地の方と交流し、文化を知ることができます。
万博は経済活動の一環です。「開催できてよかった」ではなく、どの程度成果があったのか、具体的にきちんと検証することを求めたいと思います。
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
anan2447号(2025年5月21日発売)より