新しいムーブメントの発信源はTikTok。
トレンドが目まぐるしく変わっていく今の時代。Z世代でリアルに盛り上がっている言葉を、識者のお二人に伺いました。
今瀧健登(以下、今瀧):9太郎さんから見て、今Z世代の間でブームを巻き起こしている流行ワードは何ですか?
末吉9太郎(以下、9太郎):もうこれは絶対的に「ひき肉です」! 周りの人がみんな真似して使ってますから!
今瀧:同感です。異常に流行っていて、ここまでの大ブームは久々。今年は夏にかけて、中学生YouTuber「ちょんまげ小僧」の勢いがすごかったです。
9太郎:ひき肉くんは、「ちょんまげ小僧」のメンバーのひとりなんですよね。毎度お馴染みのあいさつ「ひき肉です」は、言い方や間が絶妙で。両手を広げるポーズや、カメラ目線じゃない感じも、なんだかクセになるんですよ。
今瀧:彼のモノマネをしながら、アレンジを重ねて楽しむ流れができましたね。芸能人や、有名なTikTokerも「ひき肉です」の関連動画をたくさんアップしていましたし。
9太郎:僕自身は、TikTokでトレンドを知ることが多いのですが、今は新たなムーブメントが起こる場所といえばTikTok…なのでしょうか?
今瀧:そうですね。TikTok上に流れてくるものは、基本的にいま世間を賑わせているものばかり。アルゴリズム的に、年齢や属性に関係なく面白いものが見られる傾向にあるので、時代の新潮流が生まれやすいといえるでしょう。
9太郎:毎週、何かしら新しいことが流行ってる気がします(笑)。
今瀧:毎日膨大な量の動画が投稿されていますからね。例えば昭和・平成のコンテンツもTikTokのおすすめ欄に流れてきたりするので、昔流行っていた言葉のリバイバルブームも生まれやすくなっています。
9太郎:なるほど。最近の個人的お気に入りは、わーちゃんという男の子が何気なく言い放った「バナナきた!」。すっごくかわいくて何度も真似しちゃいます。「かわちい」もそうですけど、耳馴染みが良く、言いたくなるフレーズが流行りやすいのかな。
今瀧:それはありそうです。あとは「単純接触効果」といって、繰り返し接すると、好意度や印象が高まるという心理的現象があるんです。SNS自体がこの効果を狙いやすいので、トレンドワードが生まれやすい土壌といえます。
9太郎:確かに! 何気なく見ているうちに、言葉が頭の中で無限ループされて、マイブームになっていることもよくあります(笑)。
今瀧:あとはSNSの場合、コメント欄でのやりとりが活発なので、そこから火がつくことも。
9太郎:どういうことでしょう?
今瀧:例えば「蛙化現象」について話している動画に対して、「このエピソードは蛙化現象なのか」「いや、そうとは言えない」と意見が分かれ、コメント欄で議論が交わされる。その結果、炎上状態になり、さらに言及する人が増えたり…。そうなればリプライなどで、より大勢の人の目に留まりやすくなり、最終的に言葉だけが一人歩きしてしまうなんてことも、よくあるのではないかなと。
9太郎:言われてみればそうですね。僕が思うのは、「知らんけど」「はいー」のように、自分のエピソードを語った時、最後にオチ的に言えるフレーズが使いやすいなって。SNSでも、実際の会話でも、つい言っちゃいます。
今瀧:そうですね。真似しやすいだけではなく、自分らしくアレンジしやすい言葉も今のトレンドといえそうです。
ひき肉です
中学生YouTuberの自己紹介が一気に浸透!
今ノリに乗っているのが、今年の夏に登録者数100万人を超えた6人組の中学生YouTuberグループ・ちょんまげ小僧。「メンバーのひき肉さんが自己紹介で行う独特なあいさつを真似する人が続出。音源のリミックスを作る人も登場し、大バズり中です」(9太郎さん)
手遊びすんな
替え歌のフレーズがクラブシーンを席巻。
TikTokで人気の盆踊りネキさんが踊る動画に対して、レゲトンシンガーのS.I.さんが「手遊びすんな」とツッコむ替え歌からのパンチライン。「今夏に大ヒット。ネキさんの盆踊りっぽい動きを真似してクラブで踊る人や、SNSに動画を上げる人が続出中」(今瀧さん)
知らんけど
関西弁が全国区に。オチに使うことで会話が盛り上がる。
昨年の「新語・流行語大賞」にノミネートされ、もはや全国区に。確証が持てない話のオチに使用することで、ネタっぽくなる魔法の言葉。「ちょこっと責任を回避したい時に便利なフレーズ。不特定多数の人が見るSNSとの相性も良いのかも」(9太郎さん)
かわちい・うちゅくちい
ASMRの要素を取り入れたコーデ紹介動画が発祥!
ジッパーを上げる音や衣擦れの音を生かしながら着替えていく“ASMRコーデ紹介”動画で使われる、定番ワード。「発祥は諸説ありますが、僕は7歳のゆずちゃん&5歳のみつくんが登場するYouTubeチャンネル『ゆずみつといっしょ』で知りました」(今瀧さん)
てぇてぇ
推しへの感情が高まった時に用いられるオタク言葉。
「尊い」を意味するネットスラング。「好き」や「萌え」には収まりきらない、強い感情を表現。「バーチャルライバーグループ『にじさんじ』のVTuber同士の仲の良さに対して、ファンの方が用いた言葉がじわじわと定着しました」(今瀧さん)。省略して「TT」と表記することもあり。
蛙化現象
自分が思い描いていた理想とのギャップに幻滅。
好きな相手から、自分に好意を持たれた途端に嫌悪感を抱いてしまう心理を指す言葉。「最近は、もう少しライトな意味合いで使われるようになり、好意を持っている相手のささいな行動を目撃して、気持ちが冷めてしまった時などに使われたりも」(9太郎さん)
キャパだわ
“キャパオーバー”がよりタイトなフレーズに。
キャパシティを超えた状態を表現する「キャパオーバー」が、さらに短く簡潔化。意味は変わらず、テンパっていたり、いっぱいいっぱいな状態を表す。「お酒を飲みすぎて限界が来た時や、仕事でいっぱいいっぱいになっている時など、マルチに使えます」(今瀧さん)
ギャルピ
平成のギャルブーム再燃で、ポーズが大流行。
’90年代にギャルの間で流行した、ピースを逆さにして、前へ突き出すポーズ「ギャルピース」が韓国に渡り、K‐POP アイドルの間でブームに。昨年、ファンを通じて日本の若者に逆輸入。「今や、若者たちが写真を撮る時の新定番ポーズといえます」(今瀧さん)
おぢ/おじ
「ジジイ」はもう古い? 「おじさん」表現も進化。
「おじさん」の略語。親しみを込めて「おぢ」とキュートに表現する時もあれば、ややネガティブなニュアンスが込められる時も。「おじさんぽい言動をしてしまった時に『今のおじだったわ』と自虐的に言ったり、形容詞的に『おじみ』と使うことも」(今瀧さん)
草
「臭っ」と言ってるわけではないんです!
ネットスラングで「笑」を表現する「www」が、草が生えているように見えることから。「以前はネット上の書き言葉でしたが、普通の会話の中でも使われるように。『草!』『草すぎん?』とか言います。逆に、笑えない状況の時に言うのも今っぽい用法です」(9太郎さん)
タイパ
エンタメもサービスも、時間の効率化を最重視。
タイムパフォーマンスの略語で、自分が費やした時間に対して、得られた効果や満足感を意味する。「Z世代は、YouTubeやドラマなどの動画を倍速で視聴したり、ショート動画を好んだりと、時間を効率的に使うことをますます重視する傾向です」(今瀧さん)
限界○○
「やばい」のさらに先を突き詰める究極ワード。
極限まで行ってしまった…! そんな状態を一言で言い表す便利ワード。限界までお金や時間をかけない「限界コスメ」や「限界レシピ」など多様に使用可。「感情などが限界を超え、余裕がなくなった状態の人を『限界オタク』『限界OL』と表現することも」(9太郎さん)
はいー
お笑い芸人・やす子さんのキュートな口グセが流行中。
元自衛官であることを生かしたネタを武器に、テレビやSNSで大ブレイク中のお笑い芸人・やす子さんが発する口グセ。「どんなシチュエーションでも使えて、ここ最近真似する人が急増。真面目な場面でも『はいー』と言うだけで場が和む」(9太郎さん)
なぁぜなぁぜ?
かわいく毒づける最強フレーズ。
「○○なのに△△なの、なぁぜなぁぜ?」と、疑問や不満などに対してキュートにツッコむ、かなり高度な皮肉フレーズがTikTokを中心に大流行中。「ちなみに、元ネタは、FRUITS ZIPPERの楽曲『ハピチョコ』の『なになに?』というフレーズです」(9太郎さん)
DNA
9太郎さんのユニークな動きがじわじわと人気に。
9太郎さんの「#オタクあるある」シリーズから。「頭の上で両手をくねくねと交差させて、ライブで推しから反応を貰おうとする人のネタなんですが、見た方が『二重らせんじゃん、DNAじゃん』とコメントしてくれて、動きに名前がつきました(笑)」(9太郎さん)
今瀧健登さん SNSネイティブ世代への企画・デジタルマーケティングを得意とするZ世代のヒットメーカー。個人としても多数メディアに出演する。著書に『エモ消費』『Z世代マーケティング』など。
末吉9太郎さん “友情・努力・音楽!”をキャッチフレーズに活動するボーイズユニット「CUBERS」のリーダー。「アイドルオタクあるある動画」がSNSで反響を呼び、アイドルオタクアイドルとして注目を集める。
※『anan』2023年10月11日号より。イラスト・ばびぶべん 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)