――おふたりは結成15年目ですが、最初の接点は?
芝大輔:相方探しにライブを見学しに行って、主催の人がお互いに相方を探してるんだったらってことで、飲む場を作ってくれて。その時のともしげを見て「これはツッコむ回数が増えて、忙しくなりそうだな」と思ったのが最初です。
ともしげ:それが14年も前の話。僕は、とにかく優しくて、僕の話を聞いてくれる人を探してたんですけど、“告白”してはフラれ…。当時の芝くんはリーゼントでもなかったし、穏やかな青年で、年も近いしいいかなと。
芝:モグライダー以前に、3人とコンビを組んで上手くいかなかったのは、自分が言いすぎてた部分があったという反省が僕にはあって。今回は、自分の要求とか何も言わないでおこうと思っていたから、優しく見えたんでしょうね。
ともしげ:結成から2年くらいは、僕がやりたかったからツッコミで。
芝:僕は、自分がそれまでやってたボケよりツッコミのほうが向いてると思って、伸びしろじゃないですけど“ツッコミしろ”のあるやつを見つけた! と思ったら、ともしげがまさかの「ツッコミをやりたい」と(笑)。あの状況自体がボケでしかなかった。でも、いったん0年目に戻って、初めて標準語でネタをやるとか、何でもやってみようという感じでした。
――長らくテレビの露出はほとんどなかったことで、卑屈になったりはしませんでしたか?
ともしげ:芝くんは真っ当な人だからなかったと思うけど、僕は、売れない時代が長すぎて拗らせて、妬み嫉みがありましたね。悪口言ったり、人の失敗を見て笑ったり…。ウエストランドの井口くんの悪口が面白くて、一緒にいてうつっちゃったのもあるんですけど。
芝:僕の場合、ライブにしか出てなくて、どんどん感覚が麻痺していったというか。ライブでウケるかウケないかだけの世界の中で、ウケてるってことは、合ってるんだろうと。でも、続けていくと物足りなくなって、個性を尖らせていかないとって感じでしたね。
ともしげ:コンビ名は、僕がなんとなくつけちゃったんですけど、“モグラ=地下”を爆走するみたいな意味になっちゃって…。
――なんとなくつけたんですか?
ともしげ:芝くんが動物の名前を何個か持ってきて、この中から選んでくれって言われて選んだのがモグラ。僕が造語にしたかったのと、戦隊ものが好きなんで、モグライダー。エゴサーチしやすい名前でよかったです。錦鯉とかだと、エゴサが難しいから。
芝:エゴサーチ前提って!
ともしげ:結果的に、だよ!
――(笑)。“地下爆走”の状態から脱出できたきっかけは?
芝:コロナがデカかったです。
ともしげ:それまでライブやって、打ち上げで飲んで、バイト先でもかわいがってもらい楽しくやってたんです。それがコロナで、ライブも飲み会も、バイト先もカラオケ屋だったから、本当に全部止まっちゃった。なんのために東京にいるのか、存在意義すら危うくなった時に、芝くんと相談して、より一層頑張るようになりました。
芝:売れないままお笑いライブばかりやってきて、これから一般の生活をしてくださいと言われても、30代後半にもなって何もできなかった。いま社会に出ても生きていけないと初めて認識したことで、改めて、ちゃんと漫才師を目指そうと思ったんです。
ともしげ:このままヘラヘラ、傷の舐め合いを続けてる場合じゃないってなりましたね。
――’21年の『M‐1グランプリ』で決勝進出し、いわゆる売れるまでに辞めようと思ったことは? 特に芝さんは奥さんに「辞めてくれ」と言われていたんですよね。
芝:そう言われる周期に、ちょうど単独ライブがあったりするんです。お金になってたわけじゃないけど、こんだけ人が笑ってるってことは、需要があるんだと思ってくれたみたいで。でもまあ、よう捨てられずにこられましたね。
――芝さんは、『ラヴィット!』で13万円のペルシャ絨毯と4万5000円のクッションを購入しましたが、奥さんの反応は…?
芝:めちゃくちゃ怒られました。「信じられない」から始まって、「あんな大きな絨毯うちには入らない、どこに置くつもりなんだ、子供がこぼして汚したらどうするんだ、誰が掃除すると思ってんだ」…ありとあらゆる怒りの球種が飛んできました(笑)。
――ともしげさんが昨年結婚した時、既婚者の芝さんからアドバイスなどはなさったんですか?
芝:結婚の時はしなかったけど、さっき話したコロナの自粛期間の時に、人として当たり前のことを一個ずつやったほうがいいみたいな話をしたんです。そしたら翌日「結婚することにした」って。そういうつもりじゃなかったんですけど(笑)、聞けばまだ同棲してないって言うんで「結婚前に一緒に住んでみれば」とは言いました。俺らみたいな生き物がすぐ隣にいるって、相当ストレスだろうから。
ともしげ:すごく心配してくれましたね。芝くんは、この地球上で一番長く一緒にいる人。僕が不意に人を傷つけてしまうことがあることをよく知っててくれるんです。
芝:こいつの言葉をある程度流せる人じゃないとキツいと思ったけど、なんだかんだ上手くいって。
ともしげ:動物園は好きですか?
――…え!? あ、好きです。
ともしげ:動物園が楽しいのって、たまに行くからじゃないですか。毎日となると匂いも気になるし、噛まれる危険もあるし、飼育員さんくらいの心構えでいてくれないと、僕と暮らすのは無理だろうと自分でも思ったんです。でも、すごく優しい人なんです。この間も、部屋の掃除を頑張ったら、間違えて奥さんのパソコン捨てちゃったんですけど、ちょっと怒っただけで、笑って許してくれました。
――得意の料理は作るんですか?
ともしげ:奥さんは料理が苦手なんで、僕が作ってます。お弁当箱をプレゼントして、家を出る前にお弁当を作っておくので、奥さんはチンするだけ! 作れなくてロケ弁を持ち帰らせてもらい、一緒に食べる日もあるんですけど。
左・芝 大輔(しば・だいすけ)/1983年7月25日生まれ、愛媛県出身。右・ともしげ/1982年5月31日生まれ、埼玉県出身。2009年、結成。’21年『M‐1グランプリ』で決勝進出し、不利とされるトップバッターとしては最高得点を記録。『月ともぐら』(テレビ東京)が毎週木曜27:05~放送中。YouTube「モグライダーのモグChan」も好評配信中。
衣装協力・Losguapos For Stylist TEL:03・6427・8654
※『anan』2023年3月15日号より。写真・川原崎宣喜 スタイリスト・高橋めぐみ インタビュー、文・小泉咲子
(by anan編集部)