イシデ電さんによる、マンガ『ポッケの旅支度』をご紹介します。
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以前からツイッターで飼い猫のマンガを公開していたイシデ電さん。猫の介護や看取りについて描くのは、その延長で自然なことだった。

「猫との暮らしで、楽しいことはたくさんありますけど、それと同じか、もしくはそれ以上に悲しいことや苦しいことにも価値があると思っていて。私が一緒に猫の病と闘ったのも、かけがえのない体験だったので、伏せる必要がなかったんです」

野良猫のきょうだい、オスのポッケとメスのピップがイシデさんの家に居ついて15年経った頃、ポッケに深刻な病が見つかる。本作は2匹との出会いから始まり、猫の死を覚悟しながら残された時間を共に過ごした日々、見送ってからのことも綴っている。愛するペットとの別れという重いテーマではあるが、イシデさんのユーモアやポッケの元気な頃の姿、ポッケの病に気づいていないかのような無邪気なピップに救われる軽やかさもちりばめられている。

「このマンガに関しては、独りよがりで、ひたすら正直に描こうと思っていました。人間の葬式でも、泣いて悲しむだけでなく、談笑したり、お寿司がおいしかったりする時間もあるじゃないですか。ずっと悲しみ続けることも、冷静でい続けることもできないので、その部分をたしかに描き取りたかったんです」

介護や看取りに対する迷いを通して描かれるのが、後悔の多い別れ方をした前の飼い猫・こぜや、同じようにペットを看取ってきた人たち。

「子どもの頃から飼っていたこぜは絶対的な存在だったので、思い出を気安く共有したくない気持ちと、いつかマンガにしなければという気持ちが葛藤していました。またターミナルケアがテーマでもあったので、周りの人たちのいろんなケースを意識的に入れてみました」

本作の反応として、イシデさんが多くて驚いたというのが、ペットを看取った読者自身の体験談。

「苦痛を一気に吐き出すような感想をたくさんいただき、その光景に圧倒され、自分はこの人たちに代わってマンガを描いたのかもしれない、と最近思うようになりました」

そして「覚悟があれば死がつらくなくなるわけではない」と続ける。

「私がどうにか看取れたのは、愉快な暮らしの積み重ねがあったから。ペットが元気なうちは火葬する場所をググる程度にしておき、いっぱい大笑いして楽しく暮らせばいいと思います。その体験は介護が始まったとき、大きな馬力になるはずです」

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『ポッケの旅支度』 ポケーッとした佇まいからポッケと名付けられた猫が、不治の病に。日ごと弱っていく猫と共に続く日常を、前の猫や友人の体験を交えて綴ったエッセイ。KADOKAWA 1320円 ©イシデ電/KADOKAWA

いしで・でん マンガ家。2005年デビュー。商業誌で作品を発表する傍ら、自主制作で本やグッズを多数販売。主な著作に『私という猫』『猫恋人』など。

※『anan』2022年11月9日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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