――女優になったのはどんな経緯だったのでしょう。
中学生の時に、原宿を歩いていてスカウトされたのがきっかけです。当時私は芸能の仕事に疎くて「あなた何やりたいの? 女優? タレント? 歌手?」って聞かれてもさっぱりわからなくて。そんな中、たまたま受けたドラマ『六番目の小夜子』のオーディションに合格して、そのまま撮影に入ったんですが、ある日お芝居をしている時に、雷に打たれたような感覚を初めて味わって。それで女優さんになりたい! と思うようになりました。15歳の時でした。
――雷に打たれたというのは、どんな感覚なんでしょう。
カラダや心が勝手に動いてお芝居をしているというか、自分の意思ではない何かに動かされているような感覚。たぶん自分と役が一体化した瞬間だと思うんですが、いつもじゃないけれど、ドラマ『ホリデイラブ』で井筒里奈を演じている最中にもあったり、今でも、その瞬間がごくたまに訪れるんです。
――いわゆる“ゾーンに入った”ような…。それは快感なんですか?
快感でもあるけど、魂が揺さぶられて本能で生きているってことが確認できる感じかな。以来、たまにくるその感覚を追い求めてしまう自分がいて…。気がつけばデビューから20年経っていました。
――一昨年、放送された『ホリデイラブ』をきっかけに“あざと可愛い”キャラで注目されるようになった松本さんですが、それまでの期間はご自身にとっての下積み期間と捉えていますか?
下積みといえばそうですね。デビュー後に周りの若い俳優女優はどんどん売れていきました。そして、私にもその波が多少なりともあったんです。でも、私は売れなかった。そこで波に乗れなかったのは自分の能力不足であり、それは自分の責任でしかありませんでした。次に波が来たら絶対に乗れるだけの人間力を身につけなくちゃって必死でした。ところが、一昨年出演した『ホリデイラブ』で大きな波が来たのに、乗りきれなかった。だから、下積み20年と言ってもいいぐらい。人から「何の仕事してるの?」って聞かれても、堂々と「女優です」と、ずっと言えなかったですから。
――そうだったんですね。『ホリデイラブ』のあとは、てっきり順調だと思っていました。
一度は注目していただいたものの、実は思うようにお仕事がもらえなかったんです。でも、それもこの20年で学んだこと。いいことがあったら必ず悪いこともあって、それが何度も繰り返されるものだとわかっているので、次にまたチャンスが来た時こそ食らいついていかないと、って必死でした。
――決して、順風満帆ではなかったんですね。でも、それでもめげずに、アグレッシブにチャンスを掴みにいくあたり、とても芯の強い人に見えます。
それが私、じつはめちゃくちゃ落ち込むタイプなんです。ドーンと落ち込んでは這い上がることを繰り返してきたから、どん底に落ちた後は新しい光が見える、ということを身に染みてわかるようになっていて。だから、手ぶらでは這い上がりたくないと思っているんです。このどん底の時期に、きっと何かを課せられているはずだからそれは何かを考えて、学びを得ながら這い上がろうってやってきました。甘く見られがちなこの容姿と声を、ものすごいコンプレックスに思いながら。
――え! 意外です。特徴的な声は武器だと思っていました。
いやいや、一時期はこの声を本気で潰そうと考えていたこともあるぐらい。というのも、私の中の女優のイメージって、かっこよくてクールな感じだったから、「可愛いね」って言われることはものすごくバカにされてる感じがしてしまうんです。とはいっても、じゃあ中身で勝負できるかというと10代、20代はあまりにも未熟で。
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――若さゆえの悩みに苦しんだわけですね。
はい。でも、あの時打たれた雷は私しか知らない間違いのないものだし、本能的に生きていることを感じられる手段。それに、そもそも女優という生き物はすごく好きだから、もし表に立てるチャンスが来たら恥ずかしくないような自分でいようと思って、時間がかかっても自分と向き合って自分を知って、人間力を積もうと思ってやってきました。それが今では“あざと可愛い”だなんて(笑)。そうみなさんから言われて驚いています。この顔と声がそういうふうに面白がってくれたりもするんだ、って。
まつもと・まりか 1984年9月12日生まれ、東京都出身。ドラマ『ホリデイラブ』をきっかけに、悪女や癖のある女の役がハマると話題になり、『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)や『奪い愛、夏』(AbemaTV)などのヒット作に出演して人気女優となる。放送中のドラマ『捨ててよ、安達さん。』(テレビ東京系)に出演中。
『竜の道 二つの顔の復讐者』 毎週火曜21時~カンテレ・フジテレビ系で今春放送。養父母を死に追いやった会社社長・霧島源平(遠藤憲一)への復讐を誓った双子の兄弟・竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)の物語。松本さんは、竜二が復讐のために近づく源平の娘・霧島まゆみを演じる。出演/玉木宏、高橋一生、松本穂香、松本まりか、遠藤憲一ほか
トップス¥19,000 ワンピース¥30,000(共にエムエルエム レーベル) ピアス¥15,500(テンプル オブ ザ サン)以上ジャック・オブ・オール・トレーズ プレスルーム TEL:03・3401・5001
※『anan』2020年5月20日号より。写真・倉本ゴリ(Pygmy company) スタイリスト・安藤真由美(Super Continental) ヘア&メイク・斉藤 誠 インタビュー、文・若山あや
(by anan編集部)